2017年2月13日月曜日

触覚と聴覚(2002年3月LF紙)

ルアーフライニュースの第二回です。おそらく旅に出る前にまとめて書いて送ったようで、実際は4月ごろ掲載されているみたいです。これは短いからいいですが、この時一般紙面の連載数がゴースト含めて明らかに当時日本一多かったはずなので、月単位の長期の釣り旅の前後で苦労しています。なんかタウン誌系と車関係が、時事ネタを予測できない分、辛かったです。すぐになんでも書けるため、誰かが落とした原稿のピンチヒッターとしても重宝されていたため、タイかどこかの細い回線で原稿書いて送り、チャットで打ち合わせした記憶もあります。今何にも書いてない上に、イラスト描いて生計立ててるなんて、当時の自分には予想もできない未来に生きてます。


◇第二回・触覚&聴覚編
 前回、軽く紹介した魚の『感覚』。この部分について、今回と次回に分けて詳しく解説していきます。今回は魚がルアーを発見する上で、もっとも遠い距離から判別できる感覚についてのご紹介。その感覚とは耳です。魚にとっては触覚も聴覚も似た感覚であることは前回もお伝えしました。この感覚に付いての詳細、まずは触覚からいってみましょう。

★触覚編
 川でジーッとしている魚を手づかみにしようとした経験がありますか?この経験のある方は魚の触覚という感覚をすぐにご理解いただけると思います。不用意に手を近付けると必ず気付かれてしまいますよね。目が見える状態なら人間がうろうろしている時点で逃げているとおもうのですが、夜間の休息中の魚などは手が触れそうになる時点まで平然と休息(人間でいう睡眠)しています。しかし手が近づいたら触ってないのに逃げてしまう。このメカニズムが魚の触覚です。
 まず、水の中では波があります。もちろん流れや風によって生じる波もあるが、物体が動けばそのぶん押しのけられた水が動き、ゆるやかな波となります。じつはこれらの波を感じとることが、魚の世界では『触覚』に相当することになります。つまり、ある程度離れたものを感知することが、人間でいう「触った」感覚になる、ということがいえるのです。これがあるからこそ魚は、水の中で物にぶつからずに泳げ、外敵が目の死角から迫っても逃げることができる、というわけですね。ちなみにこの感覚のメインの受容器官は「側線」。スズキ、アジなどの一般的な魚の側面に必ず存在する、点線状に繋がれた、あの線であります。

★聴覚編
 つぎに聴覚。水の中では音も『波』になります。非常に周波の細かい『波』が音になるわけですね。このため魚は『触覚(波の感知)』に相当する部分を感じとる器官が、同時に『聴覚』の受容器官のはたらきをもつことになってきます。その器官が「側線」です。側線はあの点線の一つ一つが袋状になっていて、袋の底に細かい感覚毛が生えているます。この袋の中に入り込んできた波(音)が感覚毛をユラユラ揺らし、神経に伝えるのです。
 そしてもうひとつ、なぜかあまりルアー業界で語られることが少ないのですが、聴覚に重要な器官があります。それが『ウキブクロ(鰾)』です。これは通常水圧に応じて中の気体を調節して浮力(釣りでいうと「レンジ」「タナ」)を保つ器官ですが、じつは音を反響させて脳に伝えるアンプの役目を果たしています。これは当然大きい魚ほど大きくなるわけで、老化を抜いて考えれば音を捉えやすくなっていくはずです。個人的には大きい個体ほど低い音をよく捉えられるようになっていくのではないかと推測し、この考えを利用して55オーバーからのバスを選んで釣る釣り方に活用したこともあります。これには驚くほどの結果が何度も出たため確信はしているのですが、いまだウキブクロとの結びつきまでの確証に至っていません。気になる人は会ったときにでも個人的に聞いてください。
 魚がよく聞こえる角度は真横(側面)とされています。これは、与えた音源に対して常に真横の姿勢を取ろうとすることからも推測されますが、様々な魚で実験したところ、どうやら真横の音に脳波が一番よい反応を示すことから、側線部分に対して垂直方向に入射する音がよく聴こえているとされているようです。


  プロフィール
小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行、色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながらひっそり生かされている。SIN-ZOベイト他を開発。

2017年2月10日金曜日

連載の自己紹介と魚の感覚/(2002年3月LF紙)

この原稿はルアーフライニュースで2002年3月執筆、とありました。
1クール目が魚の感覚に近づくための講座として週刊で全5回。人気だったようで帰国後2クール目も二回分あり、計7回は連載内の自筆分となります。それ以外は実釣や商品紹介がメインなので省略しようと思います。御多分に洩れず、写真はフィルム時代のため省略です。



オガケンの不思議なルアーBOX

リード
 釣りをするうえで、どうしても気になってしまう魚の世界。ルアーは魚にどのように見えているのだろうか、なぜルアーで魚が釣れるのかをテーマに小川健太郎がお送りしていきます。

◇第一回・基本編
 はじめまして。SIN-ZOベイトの小川健太郎です。僕は現在カンボジアにいます。このあたりはルアーフィッシング未開の地でもあり、面白いゲームフィッシュがいないトコロかもしれません。僕がなぜこの地を選んだかというと、あたらしい魚との出会い、未知の水域へ竿を出すときのワクワク感を取り戻すためです。同時に、他人との競争場と化した日本の釣り場、釣り業界から、なにも魅力を感じなくなった自分を癒すためでもあります。僕個人の『釣り』という趣味は、『魚の感覚に近づく』ことを楽しむ遊び。魚はルアーをどう見ているのか、温度をどう感じているのか、おいしくゴハンを食べるのか、命の危険にどうおびえているのか。この魚の感覚が理解できる瞬間があるとするなら、それは釣りを通してしか味わうことができないと思うのです。無事帰国できれば、これから連載でこの『魚の感覚』に少しづつ迫ってみたいと考えていますのでヨロシクお願いします。

●バイオテレメトリー
 僕が魚の研究をするときに、バイオテレメトリーという言葉が出てきます。これは「生物遠隔測定」と言って、いわゆる発信機や測器を魚の体内や体外に取り付けて、心拍数や遊泳速度、水深、水温、加速度などいろんなことを測ってしまう手法です。テレビ番組ではよく、鯨やクマに取り付けて、衛星を使って追跡調査なんかしてますよね。僕らが行っているのはアレの一種で、ペンギンに取り付けるような小さいタイプの発信機(または測器)を使っているんです。
 近年、テクノロジーの発達でいろんなことがわかるようになってきました。この中にはもちろん釣りに使える情報満載です。例えばマダイの活動時間はこの時期何時ごろなのか、とか、スモールマウスバスは回遊しているのか(いづれお伝えします)、とか…。考えれば考えるほど楽しい話題が満載です。実験方法次第では、魚がルアーを追う時とエサを追う時の心拍数の違いなんかも、簡単にわかってしまいますよね(これがSIN-ZOベイトのコンセプトのひとつに)。
 このような実験を交えながらお伝えしていきたいと思っているので、この『バイオテレメトリー』という言葉、おぼえておいて下さいネ。

●五感
 今回は基本の部分ということで、人間と魚の違いについて述べてみたいと思います。魚は人間とどこまで違うのか、またどこを同じように考えることができるのか。これがわかれば、とりあえず魚の世界に一歩近づくことができるに違いないわけです。
 まず、人間との五感の違いを考えてみましょう。われわれ人間は触覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚という5つの感覚をもっています。釣りの時、この人間の感覚のまま魚に置き換えて推測するとやはり勝手が違ってきます。魚は「水の中にいるから」です。では、水という物質がこれらの感覚をどのように変えてしまうのでしょうか。
 例えばニオイと味は化学物質の伝達という点で共通しています。人間の場合、『空気を伝わる化学物質=ニオイ』、『唾液などの水分を介して伝わる化学物質=味』となってきます。しかしこれら化学物質は、水の中では同じように溶けてしまい、ニオイも味も、その違いはほとんどなくなってしまうと考えられます。これによって味覚と嗅覚はほぼ同じような器官で判別されてしまうことになるでしょう。
 また、触覚と聴覚にも同じような共通点が見出せます。それはどちらの感覚も水の中では『波』だということです。これによってこの『波』を感じる器官に関しては音も触る感覚も共通の器官で感じることができそうですね。そんな器官が「側線(魚の側面に付いている点線状の器官)」というわけです。この器官は一つ一つが小さな袋になっていて、その中に生えた毛で波を感じとることができます。

●ヒトの五感は魚の三感?
 これまで述べたことを考えてみると、魚は水の存在によって五感に相当するものが3つほどに少なくまとめられているように思えませんか。そのかわり水による音の伝達速度、ニオイの伝達能力などが高いため、人間の思うよりも高感度になっているようです。
 以下に3つの感覚を示しますので、人間の感覚と置き換えてイメージしていただきたい。
音、動き(聴覚・触覚)
形、色(視覚)
味、匂い(嗅覚・味覚)
 水の中というだけでヒトの五感は魚の三感。人間と魚はここまで大きく感覚が変わってしまうのです。




  プロフィール
小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行、色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながらひっそり生かされている。SIN-ZOベイト他を開発。

2017年2月8日水曜日

管理釣り場(2001年11月/新聞LF紙)

さて、バスワールド誌編が終わったので、別のを見てみます。契約形式上、転載できるのは書いたものすべて可能みたいですが、とりあえず休刊したものメインに進めてみます。
本当は同じエイ出版のトップ堂連載に行こうと思ってましたが、笑い要素が強いため、ルアー&フライニュース紙を。
 シーバスとバスがメインの新聞です。新聞なので、誌ではなく『紙』表記にしました。関東をメインにコンビニに販売網があり、ここに大きく紹介されることで売り上げが凄まじいことになったのを記憶しています。SIN-ZOベイトが初年度からとんでもないフィーバーを起こしたのも、その印税で会社を立ち上げられたのも、かなりこの紙面のおかげです。
以前も書きましたが、当時、管理釣り場のイメージが向上してきた過渡期でしたが、プロのトラウトアングラーは出入りしたがらず、なかなか目を引く記事がありませんでした。その頃管理釣り場のクランキングを紹介して好調だったワタクシに、執筆協力していたシーバス記事のついでに声がかかったみたいです。内容は大胆にしてフランク過ぎで、冗談と思って試した人たちが衝撃を受けまくったらしく、ある意味話題(笑)になりました。この時から管理釣り場でのルアーサイズのルールが厳しくなっていきます。また、ここから小さなコマ連載も始まりました。




管理釣り場で楽しもう
2001年11月記事

プロフィール:
小川健太郎
 SIN-ZOベイトのデザイン、365日連続釣行×2回(うちトラウトは100日)、池原のヤーガラ、バドなどでごく一部のマニアにだけ大いに知られる。大学では漁場学を専攻。通称オガケン。2月9日のバッシングバッシングショー東京で、SIN-ZOイベント予定。詳しくはhttp://●●●(当時のURL)にて。

リード
 冬至を迎え、日増しに気温が下がってくると管理釣り場の人気がヒートアップする。しかし、管理釣り場といっても河川型、ポンド(池)型など、さまざまな釣り場のタイプがあったり、魚種が多様化していたりと、ひとくちに攻略できないのが現状だ。そこで、今回は釣り場別、魚種別に管理釣り場の攻略法を紹介しよう。

◇管理釣り場のタイプ
 今回紹介するのは、トラウトの管理釣り場で2タイプ。一つは河川型で、流れのある川を利用したものだ。河川型の中にも渓流や本流、さらには細かく堰堤で区切ったものまであるが、基本的に流れがある釣り場は共通点が多いので一つにまとめてみる。もう一つは止水型で、池のような水の出入りが少ない釣り場である。このなかにはポンド(池)、レイクと呼ばれるものや、コンクリートで四方をかためたものなどがあるが、水が動かない釣り場としてひとくくりで考えてみよう。

●河川型の狙いメ
 流れのある釣り場は、慣れない方には取っ付きにくいかもしれないが、基本的にスレにくいので一日中楽しめる。はじめての人のためのコツは『深くなっているエリアをきっちりさぐる』ことである。速い流れの中や表層にも魚はいるが、これらは人間のほうが流れに慣れてから狙っても遅くない。流れが緩ければ3.5gまでの肉厚スプーン、流れが速くてスプーンが浮く場合、4cmクラスの『きっちり泳ぐ』ダイビングシャッドを用いる。いずれのルアーも、とりあえず底を狙う。朝、まだ暗いウチから釣りができる場合、白系の4〜5cmのミノーが有効だ。パニッシュ、チェイスミノー、ハンプバックミノーを使用しているが、リップが短いものなら、とりあえず深さがわからなくても根掛かりを恐れず投げられる。明るくなりはじめたら金色にルアーチェンジ、気温が上がりだしたらスプーンに切り替えていく。
・アタリ
 流れの中の魚は、わりとアタリがダイレクトに出るのでフックアップはしやすい。しっかりロッドでハリをかけて、巻きアワセで追いアワセするとよい。流れの速い場所では、流れに飲まれることを想定して、あらかじめ取込み位置を考えておいたほうが周りに迷惑をかけない。
・濁り
 濁りに関しては、工事などであまり強いニゴリがでると、pHが急変して魚が食わなくなり、お手上げになる。雨で濁った程度であればかなり期待したい。温度の急変さえなければ一日中釣れ続く可能性がある。

●止水型
 関東に多いのが、この止水型の釣り場である。基本的に、放流直後などは誰でも釣れるが、ピークを過ぎれば誰も釣れなくなってしまうという恐ろしいタイプの釣り場が多い。これは群れの習性がモロに出てしまうためで、好奇心旺盛なやつがハリに掛かってバレたりするだけでその場の他の魚に丸見えとなり、スレてしまうことが多いのだ。
 数を狙いたい人はプレッシャーが少ない放流直後の魚を、得意ルアーで乱獲してしまえばよいのだが、食わなくなったときが問題だ。通常こういった釣り場は水が動かないため、さまざまな温度が層をなしている。これによって一定のレンジを狙う重要性が出てくるのだ。持つべきルアーは表層、宙層、底層という、日や時間帯によって違うそれぞれの層を、『スローに、かつきっちり探ることのできるルアー』である。市販のルアーのほとんどが宙層、底層をキープできるので、このあたりはなんとでもなるが、表層をスローにキチンと狙えるものが以外と少ない。表層はミノーばかりで攻められ、すでにスレているので、こういうときには凧スプーン、ハスルアー1.8gなど、ヒラヒラさせられるルアーが効果的だ。
・アタリ
 渋くなると、アタリも取りづらくなる場合が多い。とにかくロッドを立て気味にしてラインを注意深く見ておくのがコツ。ラインが走ったらアワせてみたほうがよい。
・濁り
 雨の濁りなど、こういうエリアでの濁りは群れの魚が互いに見えなくなるため、プレッシャーが減り、釣れ続く要因になってくれる。ただ、温度の急変による濁りだけは水質も悪化している可能性があり、釣れない原因になるので注意。

◇魚種の釣り分け
 ニジマスがメインとなることが多い管理釣り場だが、最近は色々な魚種を放流する釣り場が増えてきた。これに伴い、魚の習性が違うため、釣り分けなどができるものがあるので紹介したいと思う。

●ブラウントラウト
 基本的に居着きタイプの魚で、魚の目線より上の白い色、目線より下の黒い色への偏食傾向が見られる。活動時間帯も暗いウチが活発で、日の出の時間にピークを迎える個体が多い。白くて丸いシャロークランクなどが効果的で、スーパーの袋などの切れ端でもよく釣れるくらい、とにかく白系が好きなように見える。

●イワナ
 日本で養殖されるものは数種類いるが、管理釣り場で放流されるイワナの品種は、高温でも多少耐久性があるようだ。特に温度の上昇時には一点でビシビシ高速トウィッチすると、耐え切れなくなって食ってくる。また、平らなクランクやウォブリング系のルアーなど、移動距離に対してよく腰を振るものを好む。習性が居着きであるために緑〜チャート、白のルアーを好む。

◇困ったときのウラワザ ベスト5
●釣れないときはデッドスロー
 どうしても釣れないときは、ミニミニクランクやブルブルとウォブリングするミノーを、いったん最大深度まで潜らせたあと、あえてブルブルするかしないかの限界の速度で巻いてみよう。もしくはスプーンを底にかするかかすらないかのスピードで、巻いてくる。どちらもアンテナのようにロッドを立てて巻くのがコツ。アタリはラインが走るので、ロッドが引き込まれる時にアワセて乗せるとよい。

●デカイのがイイ!
 20cm前後ばかりしか釣れなくて困ったときは、クランクベイトの出番だ。クランクは最近各社から出ているものでオッケイ。カラーがシビアに釣果に出るので色々用意すると楽しめると思う。押さえておきたいのは白、金、赤で、チャートや黒、マットグリーン、オレンジ、リアル系なども爆発する可能性がある。

●魚が見向きもしなくなったら
 朝10時を過ぎると、急に見向きもしなくなることがある。こういうときは7cm以上のクリアレッドの赤ミノーを試してもらいたい。大きいミノーに関しては、アクションの問題とカラーの問題が大きく出てくる。アクションは頭を支点にフラフラと泳ぐもの、カラーはゴーストレッドがスレたニジマスにはダントツである。この条件さえクリアすれば、なんと12.5cmのアイマコモモでも釣れる。オススメはチェックベイト7Sの赤。サンドペーパーを荒くかけるとホロが滲んで、水を吸ったアワビ貼りのように光る。注意したいのは、こういうルアーを投げると着水音が大きくなってしまうことである。他の人の視線もあるので、気になる人はコッソリ使ってみよう。(※現代では怒られる釣り場の方がほとんどです)

●エキスパートはゴマンといるが
 個人的な話だが、僕は『発見を楽しむ釣り』がメインなので、先述のような大型のルアーを投げることが多い。これではどうしても着水音が大きく、魚のサイズも大きくなってしまい、周囲に迷惑をかけてしまう。こういうときはシロウト丸出しのスタイルでもって堂々と投げるのがオススメ。基本は右投げ右巻き、竿尻を持ってリールを巻く場合もある。こういう方法だと多少騒々しくしてしまっても諦めてくれるし、親切に写真をとってくれたり、情報など教えてくれる場合まであるのでお得だ。さらに、常に身も心も初心者でいると、釣れた一匹の味わいもひとしお、なのである。

●根掛かりに困ったら
 管理釣り場は、水中にあるラインなどのゴミに引っかかることが多い。通常ルアーリトリーバーが活躍するが、届かない場合も多い。僕はショートジギングロッド、PE10号&メタルジグなどを利用して、根掛かった自分のルアー以外の見えているルアーも勝手に回収している。これは怒られる場所、時間帯などもあるので、とにかく慎重にやらなければならないが、ラインを回収して釣りをしやすくしたりできるうえに、拾ったルアーを使うので、無料で新しい発見ができたり、経済的にもおトクなウラワザなのである。

オガケン タックル
<河川型の釣り場>
ロッド:UFMウエダストリームトウィッチャーボロンTS-56UL
リール:リョービ ゼスターMX1000
ライン:クレハ リバージトラウト4Lb
ルアー:スカジットデザインズ ダイビングビートル
    スミス ピュア GOOカラー

<ポンド(池)型の釣り場>
ロッド:UFMウエダストリームスピンボロンSS-56EXL
リール:リョービ ゼスターMX1000
ライン:クレハ リバージエクスクール4Lb
ルアー:ラッキークラフト ベビークランク
    自作 SIN-ZOプラグ
    スカジットデザインズ 凧スプーン
    スミス ルナ

<7cm以上のミノー用>
ロッド:UFMウエダ スプリットショットスペシャルSSS-610S
リール:リョービ ゼスターMX2000
ライン:クレハ リバージソルト6Lb
ルアー:アイマ サスケ オヌマレッド
    スカジットデザインズ チェックベイト7S ゴーストレッド(サンドペーパー掛けバージョンとノーマルを必ず持っていく。)

※赤いルアーはフックは鉄製に換えて錆びさせてニオイをFe系にする。緑系のルアーはフックをブロンズ製にして研ぎなおし、錆を作ってニオイをCu系にする。スルメなどを同梱すると錆びが生じやすく、人間やタバコのニオイも隠せてお得。錆び始めが食いもよい。掛かりがわるい時だけ研ぐ。

2017年2月6日月曜日

五感→三感の話と総集編(2003年3月BW誌別冊バスギア2003)

バスワールドの連載終了時に同時進行で書いていたのがバスギア用の、少し踏み込んだ総合編です。一部連載と重複しますが、当時は一年以上前の、しかも月刊誌の原稿ですので、記憶に残る幅としては、ちょうどいいくらいだと思います。

以下原稿


バスギア2003
アカデミックレイク特別編集
魚に近づきたいだけのアングラー、小川健太郎が送る、バスの生態から考えるルアーフィッシング

◆バスの五感を知る
 ルアーフィッシングでバスや様々な魚を狙っていく上で、どうしても知りたい部分が生まれてくる。それは「魚は、このルアーをどう捉えているんだろう」という疑問である。魚の感覚と人間の感覚の違いはどういう部分にあるのだろうか。

●魚の五感?
 人間の五感というものがある。これは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という感覚で、この5つをそれぞれの器官で感知することによって身を守ったり、物を食べたり、と生活できるというわけだ。
 我々人間の五感は次の感覚から成り立っている。
・視覚:光を見る
・聴覚:音を聞く
・触覚:皮膚で触る
・味覚:味を味わう
・嗅覚:匂いを嗅ぐ
 この五感が魚だとどうであろうか。人間と同じように考えるわけにはいかないので、水の中での感覚を想像しながらこれら五感を魚に置き換えて考えていこう。
 魚は人間と違って水の中という、密度が833倍も高い空間の中にいる。この水という存在が感覚器官の大きな違いに関わっているのだ。おおまかにわければ、魚はこの『水』の存在のために、これらの感覚が3つに分けられる。というより、聴覚と触覚という『波(音から衝撃まで)の感知』、味覚と嗅覚という『化学物質の判別』をそれぞれ同じような器官で、あるいはそれぞれを同様の信号として感じ取っていると考えられるのだ。

●感覚器官
 それぞれの感覚受容器官だが、まず、視覚は目で捉える。様々な説はあるものの、バスの場合我々が識別している色の中でも、おおまかな色はだいたい見えていると考えられている。実験では、水槽の背景にカラーを配置して、どの色に依存するかを調べたりしている他、心拍数を測定する実験も行なわれており、特に赤には大きな反応を示すことが知られている。
 聴覚は側線といわれる器官やウキブクロで受容し、耳に相当する器官へと伝える。側線は魚の体の横に点線のように伸びているのを見ることができる、あの線のことである(図参照)。側線は一個一個を調べると袋状の穴になっており、袋の底に感覚毛が生えている。この穴の中に水の波が入ることによってこの毛が揺れ、水流や音を感知する。この他にも鼻の働きをするクボミや目の周りにも側線器官を持っている。また、水中を伝わる音はウキブクロ(鰾)の中で共振させ、内耳、そして脳へと伝えられる。こう行った仕組みを総合すると、バスは水平方向の真横からの音に対して特に敏感で、また、音源をハッキリつかみやすいのは前方である、と考えられる。つまりは人間と同じような感覚なのではないだろうか。これについての実験も行なわれており、バスは音源を理解できているのではないかと見られている。また、触覚は側線による波の察知の他、魚の種類によっては皮膚の神経で感知するものもいる。
 味覚と嗅覚だが、基本的には口回りで感知するものが一般的である。味覚も嗅覚も化学物質の判別なので、感覚に差異はないと思うが、口の上部に水を通す仕組みの鼻孔があり、遠くのニオイとなるわずかな化学物質を嗅ぎ分けているといわれる。もちろん口内の神経でも味もニオイも感じられる仕組みになっているので人間に近いのかもしれない。ただ、水という溶媒の中に生活しているため、判断スピードは人間の比ではないと思う。

●ルアーを発見する順番
 魚がルアーを発見する順番は、まず音、波(最近よく波動と呼ばれている水圧変化のこと)を感知することが第一となる。色、姿の識別、味/匂いの判別はその次、となる場合がほとんどと考えられる。しかし、捕食の瞬間においては視覚がもっとも重要であることが分かっているし、遠く離れたエサを匂いによって察知することもある。

●反射という言葉
 よく「反射食いってホントにあるの?」と聞かれることがある。私は「ほとんどが反射です」と答えている。その理由はこうだ。魚がルアーにバイトするまでの順番を考えてみよう。まずバスの場合、本来捕食には聴覚で発見→アプローチ→視覚で認識→嗅覚で確認→攻撃またはバイト→味覚で最終確認→飲み込む、という行程がとられるべきである。べき、という言葉を用いたのは、この行程が大いに省略されている場合がほとんどだからだ。たとえば発見→認知→攻撃など、ルアーによく見られるような『確認抜き』の動作である。これを反射と呼んでいる。われわれ人間が夏、暑さのあまり冷蔵庫を開けて麦茶をとりだして飲み込んだらソウメンの汁だった、というのと同じものだ。つまり、いちいち確認していたらエサが逃げてしまう状況のときや、怒ったときに相手を確認なんてしてられるか?ということなのだ。もちろんニオイによる発見→捕食という場合もあるので確認という作業は「すべての感覚で感知した上での捕食決定を下す動作」と考えていただきたい。

◎視覚
バスが見る色や形について、ルアーとの関係を探ってみよう。

●色の基礎知識
まず、簡単に釣りの「色」についての知識の説明をしよう

★バスに色は、見えている。
 我々が見ているとおりかどうかは別として、バスには色が見えているようだ。例えばバスを入れた水槽の背景を赤、緑、なにもしない、の3パターンに交換して、バイオテレメトリーの手法を用いて魚の心拍数を測定すると、なにもしない状態に対して、赤では急激に拍数が上昇し、緑の背景では拍数が落ち着く。こういった実験などから白黒のコントラストはもちろん色彩などもかなり細かく違いがわかることがいえる。

★色選びは目線から。
 店頭に並ぶルアーの色を見てそのまま、アピールカラー、こっちは地味、と決めつける最近の傾向は、あまりよくないと感じる。なぜなら底をズル引きする場合やルアーを泳層にあわせる場合を除いて、バスは下から食いあげる場合が多い。このとき見えている色というのは、我々の見る店頭での目線の色と大きく異なるものがほとんどだからだ。

●白はナチュラルでもある
 魚の色を考えてみよう。背中は暗色、お腹は白というのが一般的な魚だ。これは実は理想的な保護色である。なぜなら鳥から狙われる背中には水(または底)の色、フィッシュイータ−から狙われる腹側には水面に同化するべく白がほどこされているのだ。つまり、下からバスを食わせるルアーなら白はナチュラルカラーに相当する、ということがいえる。我々が派手だと感じるのは、人間が目線より下でルアーを判断するからなのである。

●ベイトフィッシュも透かして見よう
 マッチザベイトを考えるのであれば、やはりベイトを魚の視点から見てみることも重要である。機会があれば水中に潜って上を通過する魚を見てみよう。案外白が目立たないことや、赤という色が消失する水深が目線次第で変わっていることがわかる。これは人間の目線でしか見ていなかった方には大きな衝撃につながるかもしれない。

★4つの視覚軸を理解する。
 ルアーの色を考える場合、「屈折と反射/白と黒/赤と緑/金と銀」というこの4つの軸を頭に入れておくとよいと思う。

●屈折と反射
 屈折は透過という言葉に置き換えることもできるが、生命感を「光の屈折、反射」で演出するならその具合をみる、ということ。たとえば「モエビは透けて見えるのでクリアカラーをチョイス」といったようなことから、「真っ暗闇などではメッキカラーを使うと反射光が強すぎ、恐怖信号になる場合があり、ホログラムやパールなどに換える必要がある」といったような場合まで、その応用範囲は多岐に渡る。

●白と黒
 先ほど述べたように白と黒は目線によってアピール度がまったく変わってくる。「ソリッドブラックでヒット」などの情報があった場合、ルアーの種類やリグからそのルアーのレンジと魚のレンジを予測しておくとよい。例えばもしそれが、水面での黒で釣れていたなら、これはアピールカラー、つまり高活性であった場合が想定されるのだ。
 また、周囲の環境光の変化によってもアピールが変わってくる。魚の目が順応するのは人間より遅く、いつまでも明るさ、暗さに慣れないことが多い。こういうとき、夕方は白、朝方は黒系にアタリが集中する。人間の目でこれを例えるなら、『暗い部屋と明るい部屋に出入りする白と黒の蝶を追いかけてみた』と想定して考えてみるとよいだろう。

●赤と緑
 赤と緑による釣果の差は、じつは魚の習性に大きく関わっている。簡単にいうならば、「赤に食性を示すのは回遊型」、「緑は居着き型」である。例えば日本でフロリダバスが混在する湖では、フロリダバスが回遊、ノーザンが居着くことで棲み分けている場合がある。こういった条件では、メインディッシュとなるエサが回遊=脊椎動物食、居着き=無脊椎動物食となるため、それぞれの視覚的な嗜好色が偏ってくるのだ。これは魚の実験でもよく知られている。ウォーターメロンがノーザンに効くといわれている理由も案外こういうことかもしれない。また、濁りや塩分濃度の急激な変化などによって視覚に制限が起きた時、赤ヘの嗜好はピンクへ、緑への嗜好はチャートへと変化するという検証も数度行なっている。

●金と銀
 反射のクロムカラーなかでも特にルアーカラーによく用いられるのが金と銀だ。使い分けについてはいろいろ言われているが、日光の照射量との関係が大きい。朝晩など日光が横から射すときや曇りの時は金が自然に光る。また、晴天の直射日光が当たる条件下では銀が自然に光る。銀は鏡ではないので、これは光の性質であり、この照射量によって自然にアピールするカラーが変わるのだ。ちなみにわたしは淡水の釣り全般を通して朝晩は金、昼間は銀を多用する(外洋はすべて銀)。すっかり暗くなると、この反射は恐怖信号に変わる可能性があるので、キラキラ光るクロムカラー自体の使用をやめる。この時暗くなればなるほどホログラムからアワビ張りへとチョイスを変化させると効果的であることが多い。これは反射光を一様に滲ませる効果を持っているからだと考えられる。

◎聴覚
バスが捉える音について、ルアーとの関係を探ってみよう。

●『波』が細かくなると『音』になる
 『音=波』これを詳しく説明すると、よくルアーが「水を押す」といわれるようなウマイ表現があるが、この「水押し」は『波』である。この『波』を魚はかなり離れたところから感知することができる。また、手で魚をつかもうと近付けると、目隠しした魚でさえ簡単に逃げてしまう。これも『波』を側線といわれる器官で感知したものだ。人間でいえばどちらの場合も触覚に相当する感覚のはたらきだ。逆に『音』は人間でいう聴覚という感覚になるが、これも水中を伝わる『密度(周波数)の非常に高い波』であり、これを側線で感知したり、ウキブクロで集音して内耳へ伝達するのは先に述べたとおりである。
 
●バスに聞こえる音
 通常、バスフィッシングでは、音を人間の耳で判断する場合が多い。工場での製作の段階でも同じで、せいぜい水槽の中で魚が反応するかどうかの実験しか行えないのが実情で、店頭で一般の人が「これは何Hzくらいの音だ。もうちょっと低いのがいいなあ」などと言っているとハッキリいって周りに人がいなくなるくらいアブナイヤツ扱いされてしまう(実話)。しかしながら、魚は音と波でルアーを発見するのだ。最低限の知識くらいは、こだわらないわけにはいくまい。
 バスに聞こえやすい音というのは個体差があるものの、通常3〜400Hzあたりを中心に、50Hz〜1500Hzあたりまでの周波数帯である。人間が20kHzまで聴こえることを考えるとかなり狭い範囲ということになるが、空気中と違い、水中ではこのくらいの音を感知することで十分生活できるのであろう。これ以上や以下の周波数の音は感じ取ることはできるが、判別などは難しいようで、脳波や心拍数に明確な影響はあらわれない。そのうえ、高周波が連続して発されると不快感を感じる個体も多い。
 ルアーの発する音は先述の魚の可聴周波数帯よりやや高めに作られていることが多い。しかし、やや高いシャラシャラした音が、連続して発されるルアーでは、魚はスレやすい。これは、あまり食性と関係ない音、痛い目にあった記憶、または群れのウチの最初に釣られるリーダー的存在(チャレンジャー)が危険信号を発したことなどへ結び付けられ、『学習』されてしまうのだ。これに対して低いゴトゴト系の音のするルアーだと常に生活に必要な音であるため、痛い記憶と結び付けられにくい(もちろん結び付けて学習される可能性は餌よりも大きい)。だいたいゴトゴト系のルアーで200〜600Hz、シャラシャラしたものは800〜2kHzとなる。

●水中の音
 水中では音は非常に伝わりやすく、秒速約1500mと、なんと空気中(344m/s)の4.5倍の速さである。しかも、陸上では考えられないほど遠くまで伝わり、音も小さくなりにくい。このため、水中では流れ込みの音など、絶えず離れた場所の音が入り乱れていることになる。湖ならまだしも、川などは雑音のまっただ中となる。ただ、こういった石や水の音は低いのでだいたい100Hz以内におさまっている。この雑音を『環境雑音』と呼び、この雑音の中で同様の周波数の音を発しても魚にはマスクされていて聴き取れない。これを『マスキング』と呼んでいる。つまり川など環境雑音の多い場所での使用ルアーはある程度高い音のほうがアピールが強い、ということが言えるわけである。
 また、ブルーギルやニジマスなどの実験で、魚の大小に関わらず、遊泳時にだいたい25〜100Hz前後の周波数帯の音を発している。湖を回遊して小魚を探すタイプの魚はこういう音をたよりに餌を探すことも多いようだ。
 このほかには肉食の魚が水中で餌を吸い込むときには2〜4kHzの「ジッ」「チャッ」という音が見られる。これらの音は、魚にとっては判別はできない範疇だと考えられるが、非常に短いパルス音であるため不快感は与えられない。このためこういう音が信号になって捕食が始まる、ということも考えられる。非常に高いシャラシャラ系の音のするルアーを、ほんのチョコッと鋭くトウィッチさせるような音だ。

●でかいバスに効く音
 これまで自分なりに研究して苦労したことがある。それは個体差だ。人間にも当然見られるのだが、バスのような大型の肉食魚の場合は、大きくなればなるほど個体差が強く出てくるようで、一概にこの音がどう、という内容を断言できなくなってしまうのだ。自分が総合的に感じているのはその場で釣れているルアーより若干低い周波数をもつルアーが「そこにいる、でかいバスが食う音」を発しているように思える。このことについての詳しい話はまたの機会にしてみたい。とにかくバイブレーションやノイジーで中型が爆釣した時に、これらのサイズにかまうのが時間の無駄である、と感じられる方だけ試していただきたい。数はダントツ落ちるがバスのサイズがかなり上がるはずである。同じルアーで少し低い音のするルアーがあれば…。


★★★★キャプション★★★★
側線器官の略図。袋状になっていて、感覚毛が周波による水圧の変化を感知し、この信号が神経に伝達される。
★★★★★★★★★★★★★★

◆バスの習性を考える
◎群れの法則(バスワールド2002年4月号掲載分)

 スクールバス。われわれアングラーがよく耳にする言葉だが、これは群れているバスのことを指している。しかし、魚の群れをすべてスクールと言うわけではない。ましてやその群れの形成に関して、由来が全く異なるものであれば釣果に響くことにもなってしまう。
 前回まででもちょっと恐ろしい内容であったが、さして苦情が出なかったので、今回も挑戦。いままでタブーのように語られることのなかったバスの集団社会へのアプローチを試みた。『群れ』に関する基本的な知識や、群れを利用した釣法までを紹介していきたいと思う。


◇群れの形成

●群れの形態
 魚の群れはその密度、方向性から4段階に分けられる(C.M.Jr.Breder/1965)。
★solitary:単体でいる魚、佇む魚。
★aggregation:漠然とした魚群。
★school:整然とした魚群、同サイズによる一定間隔で形成、同方向を同速度で進行など、統一された指向性を持つ。
★pod:密集。体が触れるほどに近接したものを指す場合が多い。
 バスの場合、上記のタイプのなかでもpod以外のすべてがあり得る。スクールバスといえるのはほとんどの場合幼魚期〜若魚期の同サイズで群れている状態だ。

●群れの定義
 動物の群れとは生物学的に『社会性のある集まり』と定義されている。こんなことを書いても面白く読んではもらえないとわかってはいるが、あえて読んでいただきたい。実は釣り、ことルアーに関しては、この定義こそがとても重要な情報なのである。事実、これを知っている人にしか釣れない魚がいるのだ。
 バスの群れは様々な要因で形成される。ひとつは一生、あるいはある時期だけ集団で生活する習性や親が子を守る期間内の集団などの必然性に由来する魚群。もひとつは一定のエリアに産卵巣を形成するために集まる造巣性、水温やウイード、シェードなどの適合環境への誘引による集団、走流性などの性質による集団、小魚を捕食するための不連続に形成される集団などの偶発的要因による魚群。
 A.E.Parr(1927年)の古い文献によれば、前者のような生来の魚群を『恒常的魚群』と呼び、いかなる環境条件の中でも安定していると定義付けている。また後者の魚群を『偶発的魚群』とし、環境要因の変化によって集合、離散が容易に起きうるとしている。これはもちろん水質悪化や日照条件の変化などもふくまれるが、釣り人という存在に起因するストレスも考えられる。つまり後者の場合、ひょっとすればアングラーの腕次第で群れを離散させてしまうことも考えられるのだ。
 恐ろしいことに、これらの集団は魚のことを知らない人から見ればどれも同じような群れに見えるかもしれない。しかしながら群れの原因をひも解いてみれば釣れる魚、釣れない魚もあっさり判明し、群れの習性を利用すれば、釣れない魚を釣るというオイシイことも可能になってくると考えられる。

●社会の形成
 群れには社会性があると述べたが、この話をバスの集団索餌という行動に絞って考えてみよう。バスのような生きたエサを追う魚は、この「社会性」によって群れの存続を制御していると考えられる。例えば、エビというエサがメインだった群れが季節変化や水質変化、水温変化などにより激減したとすれば、おのずとその群れは絶滅の危機に瀕してしまう。エビを食う群れはエビ以外の餌に簡単にはシフトできないのである。なぜか。現代の日本人に『食用イモ虫を食え』と言っていることと同じなのだ。これこそが群れの社会性である。
 「食べて無害のイモ虫を人間という動物が食べる」この行為は非常に簡単なはずだ。しかし、その文化も過去の事例もなければ、このイモ虫に手出しをする人はごく少数に限られてしまう。この「手出しする人」を私は『チャレンジャー』という名称で呼んでいる。チャレンジャーは、死ぬかも知れないというリスクを負いつつも、初めに食する好奇心を持っているために常に他人の支持を得ることになる。いわゆる『ファッションリーダー』と呼ばれる存在だ。
 話をバスに戻すと、バスは新しいエサを食べてみなければ生きていけない。このために、群れの中には自然に『チャレンジャー』があらわれる。初めて食う餌を、メインのベイトに据えることができるのか、やはり大衆は引っ込み思案気味に付いていくことになる。こうして数カ月のあいだに、チャレンジャーは、自然と群れを率いるリーダー格という存在になっている。こうしてバスの社会が形成されていくのだ。

●チャレンジャーの引き起こす現象
 ルアーフィッシングにおいて、チャレンジャーがバスの群れに引き起こす現象を述べてみよう。
★リリースしたら釣れなくなった
 見えバスがたくさんいて、一匹釣るときは大勢が反応したのに、その魚をリリースしたら全員が消えた、もしくは釣れなくなることが多い。この場合釣った魚がチャレンジャーであった可能性が高い。人一倍(魚一倍!?)注目を浴びる魚なので、傷付いて帰ったり、遠くへ逃げたりしたことで、他の魚も警戒しはじめるのだ。また、傷付いた個体は群れへの信号として、警戒音や恐怖物質となるアミノ酸を出すことが非常に多い。これも群れの存続に関わる機能で、淡水魚の場合、傷付いた魚には近寄らなくなったりする。
★大きい魚から釣れる
 連発するときに、大きい魚から釣れてくることがある。これは好奇心の強い個体から順に釣れていることが考えられる。2尾めあたりから気付けば、ライブウェルなどを利用してリリースを止めることで連発を持続しやすくできる。
★釣った魚に付いてくる
 スモールマウスバスやフロリダバスなどの回遊色の強い魚に見られる現象だが、釣れている魚にべったりと付いてくる魚がいる。付いてくる個体が極端に大きい場合はエサとして見ているようだが、同サイズの場合はチャレンジャーに抜け駆けされた準チャレンジャーである場合(または逆)が多い。一般大衆はチャレンジャーがリリースで帰って来なければ次のキャストで釣れる。また、話は変わるがこれらの種類は「成群性が強い=回遊性が強い」という法則にあてはまっているのでこちらにも注目したい。



◇池原のフロリダバスの例
 じつは私がトップで釣っている秋の池原のフロリダバスというのも、この社会性を利用した釣り方が絡んでいる。過去にさんざん各誌に書いたことだが、今回こそ理解してもらえそうなので、少し紹介したい。

●集団回遊を行う
 フロリダバスは、これまでのテレメトリーによる追跡研究からノーザンラージマウスバスよりも一日当たりの移動距離が長いことがわかった。私は、この点に注目してフロリダバスが小魚をメインに追っているのではないかと推測した。胃内容物の調査から、小魚の割合がエビに勝るのはその年の9月末〜11月であることをつきとめ、心拍数が著しく上昇する時間が早朝であること、その索餌形態が『不連続な統制の緩い群れ』であることに注目した。
 この『群れ』は普段の昼間はさらに理解不能な回遊(あまり捕食なし)を見せるが、早朝だけは岸に沿って小ブナなどのコイ科の稚魚を捕食して水面直下を回遊していた。驚くことに、その群れを形成する個体のサイズがそろっていなかった。はじめに40cm程のバスの群れ、次に65〜70オーバーの群れ、続いて50cmクラス、ふたたび40cmクラス…ダラダラ続いて最後に20〜35cm程の小さいバスが岬、ワンドなどの要所要所に残って、食べたりないのか索餌を続ける、という形に見えた。1997〜1999年と観察を続けていたので、どうやらそれが群れの社会性というパターンなのではないかと仮説を立てた。

●わざと左に配置された後輩
 この不連続でダラダラと続く群れにもやはりチャレンジャーがいる。通常の考え方だと最も大きなサイズの70オーバーあたりのバスがチャレンジャーとなるが、この場合サイズがケタ違いに大きい。どうやら用心深いことは間違いなかったので、初めに来る40cmクラスに疑いを持った。1997〜98年と、このバスが先に食って来たため、他の魚が釣れなかったのだ。そこで、小型のライブウェルを持ち込み、最初の魚をキープしたり、初めにバスが回ってくる岸の左側に後輩を立たせ、先に40cmで遊んでもらうことにした。これらの努力(すべて他人の努力)の甲斐あって、数々のビッグバスを手にさせてもらったのだ。あのとき左側に立たされた覚えのある後輩様、ごめんなさい。私の道楽のための犠牲でした。

2017年2月3日金曜日

テクニック他(2003年3月BW誌)

この原稿でアカデミックレイクとしては終了の模様。ラストだけお堅いイメージ捨てて『ですます調』になってますね。微笑ましい。偶然にも実釣記事で結果が伴ってて人気出てきたらしくこのあとバスワールド誌には実釣記事メインになったりしました。

話が変わりますが、明日からフィッシングショー大阪ですね。TULALAは例年通りUOYAブース内に間借りさせていただいて出展予定です。横浜で人気爆発だったリスも再び登場予定。
※中の人は未成年じゃないです。そしてこちらの代打メンバーの提案を断られ、単独でリスに志願してきてますので、あくまで本人の意思です。こき使ってませんので誤解しないでください(笑)。









Academic LAKE Vol.13

◆最終回
 ついに当連載も最終回を迎えることになった。これまでの話なども含めて、一部バスギア2003に掲載されているので是非ご覧いただきたいと思う。今回は最後ということで、私が釣りに対する考察の中で『最も重要視していること』について書いていきたいと思う。これはテクニックでもなんでもなく、ただただ魚になって考えてみたかった、という私なりの努力の成果なのかもしれない。

◎普遍性と相違性
●共通したパターン、わずかな違い
 釣りに限らず、世の中の全てのものは『共通点』と『相違点』の連続で構成されている、と思う。例えば『昨日と今日、近所のある池にバス釣りに行ってテキサスリグで一尾づつ釣れた』とするならば、何がこの2日の釣果に共通しているのか、なにが違うのか。これを瞬時に見つけだして組み立てていくのが私のやり方である。この連載において、もっとも面白いと感じていただいた部分はそこにあるのではないだろうか。「こういうことって、あるある」とか「これは僕の体験とはちょっと違うかなあ」とか、様々な感想を持っていただいたが、やはりこの誌面で、これまでの雑誌記事では言葉にできなかったことを言葉にしたことによって、皆さんが経験した、莫大な数のデータとの照合が行なわれたのだと思う。このデータの照合作業こそが、知らず知らずのうちに「魚の視点で考える」の本質に近付くカギを握っているのだ。
 例えば先ほどの例でいうと、昨日釣れた一尾と今日釣れた一尾の共通点は、パッと見てもルアーが共通していることのほかに「一尾」であること、「バス」であることがわかる。その他にも季節、場所、口で食ってきたこと、アングラーが同一人物ということで共通していることも挙げられる。これだけでも相当なヒントとなりうるのだ。こうしてどんどん『共通点』を見つけると、たった2尾のバスからシーズナルパターンの片鱗やその釣り場の有効な釣り方が見えてきたりする。また、『相違点』はピンスポットから時間帯、フックの刺さる位置に至るまで、うなるほどある。微妙なものはおおまかな共通点の前では無力なので、より大きな違いが重要になってくる。
 例えば先ほどの例で、時間帯が前日と5分の違いであれば、これは「だいたいこの時間に食うのでは?」という共通点の中に含まれるようになるし、1時間違いであれば朝、昼というように時間帯の共通点でくくることができる。しかしこれが8時間も離れていればどうだろう。時間はパターンを組み立てる考え方から外すことができるきっかけになるのではないだろうか。こうなれば残りの「場所」の共通点や「天気」「サイズ」「ルアーの色」「リトリーブスピード」は?といったような共通しそうな部分を探すようになる。
 もちろんこれでルアーの色とサイズが共通したなら、それだけでも大きなヒントだ。二日間にわたって再現性のあるパターンが存在したかもしれない、というところまでわかってしまうのだから。
 これらの抽出をものすごいスピードで様々な視点から組み立てれば、釣り理論の材料などはたくさん用意できてしまう。これを最後に裏付けるために、最大の相違点である「他人」を利用するのだ。例えばその時期、エリアの特徴、時間帯、ルアーが決まっていて、自分以外の人が同じように投げても釣れたなら、そのパターンはより確実性が高くなる。私はこの最後の作業を、読者の皆さんにおまかせしていたという、とんでもない卑劣なヤツだったのだ(笑)。

◎魚に近づいて考える
 「魚になったつもりで考えよう」よく、バス釣りの教書にでている言葉だ。これこそ釣りの理想ではないだろうか。遊ぶ対象となるその生物になりきることによって、魚の置かれている環境に目を向けて自然を守ろう、と思うようになったり、どれほどの力で生命は壊れてしまうのか、というようなことがわかるようになってくる。
 魚の視点から見る、魚の感覚で音や温度、味を感じる。こういう様々なアプローチをするためには、魚と人間の間にどれほどの感覚の共通点や相違点が存在するか考えなくてはならない。まず重要な点は水の中と外の生物という違い。重力に従い、地面に這いつくばって生きる我々と体が浮いている魚との感覚の違いは一見して相違点だらけだ。ひとつひとつ立場を変えて魚の感覚に近づかなくてはならない。
 水の存在によって生じる違いはまず、視点だ。以前も書いたとおり、多くのフィッシュイーターは我々と違って目線より上のものを食べて生きている。しかも一日中その食べ物のことを考えて生きているのだ。これを一日一時間も魚のことを考えない我々が、いくら考えても魚のレベルに到達することは非常に難しいといえる。
 音に対しても水中というのはダイレクトだ。どれほどかといえば密度が833倍も高い空間の中にいるために、伝達速度が空気中(344m/s)の約4.5倍もあるのだ。当然この水の中で暮らしているのだから人間との感覚の違いは大きい。
 これら全ての相違性という困難を乗り越えて魚に近づいて物事を考えられるのだろうか。それがこの連載の課題であり、釣りのもう一つのオモシロさである「自然に近づくこと」なのだと思う。
 次に変温動物と恒温動物の違いという点。陸上の恒温動物である我々の考え方だと、急な温度変化もいつものことなので、たいしたダメージではない。しかし、変温動物は違う感覚で温度を捉えているに違いない。さらに水の中である。例えばお風呂の湯沸かしで4度も温度が違う水が出てきたら、すぐにその微妙な差異に気付くだろう。空気中で同じ温度差の温風が吹き出してきたならどうだろうか。温度に対して置かれている状況がまったく変わってくると思う。余談だが、これは釣った魚を手で触るということについても同じで、もしかすると我々が思う以上にダメージを負っているのかもしれない。もちろん変に暴れないことから、魚自体に手の温度が拷問のように熱いわけではないだろうが、その皮膚はかつてない高温を経験していることになる。これがヤケドとなり感染症につながっていくことも考えられるのだ。

◎唯一のテクニック!?
 私は釣り自体まったく上手くないのでテクニックについて触れることなど滅多にない。ただ、私ができるワザの中でただ一つだけ他人に隠していたテクニックがある。ヘタクソな私が、ヘタクソなクセに魚を釣り続けられるのは、要所要所でこの部分に注意しているからに違いないと思っている。今回は最後ということで、これを書いてみたい。
 そのテクニックとは、「糸抜き」である。激しいトウィッチでもジャークでも、おとなしいシェイクやただ巻きでも、私は水中でラインが振れる幅をとらないようにしている。常にロッドティップのしなりを利用して水中から糸を抜くようにしてルアーをアクションさせる。こうすることによってラインは動かない物体という理想の存在に近づき、運動しているルアーという存在だけが、より浮き出ると思うのだ。糸は抜かれて縦に動いてもそのシルエットは変わらないが、ルアーは抜かれた分移動したことになる。さらにルアーのアクションも目立っている、という仕組みだ。ただただ竿を立ててルアーとラインの角度を一定にしながらラインと竿先でアタリを見るのがコツだ。
 このテクニックの詳細は、誰かがどこかの誌面で知らず知らずのうちにやっているだろうし、勿体つけたり、練習が要るほどのたいした技でもなんでもない。ただ、それが言葉にできるかどうかであって、竿の角度さえ気をつければ誰でもいきなり実践できる簡単なテクニックだ。というか私はピンスポットへのキャストも、アタリに対する鋭敏なアワセもできないダメ釣り師で、これしかできない。だからこそ、このテクニックをこの連載の最後に送りたいと思う。これが私の、いや僕の読者の皆さんへの感謝の気持ちです。長い間ありがとうございました。



小川健太郎/26才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。ホームページはhttp://ogaken.org

2017年2月1日水曜日

ルアーチョイス2(2003年2月BW誌)

ルアーチョイス1は見れません。この原稿の前の月である1月、なぜか書いた元原稿を無事出稿後、飛ばしてしまいました。理由は全くわかりませんが、いくつかの原稿がバックアップできておらずに消えています。なのでルアーチョイス1は2003年1月号、2月号、3月号のどれかに掲載されていて、どれかがカラーページの実釣出演記事(web転載不可記事)になるはずです。


Academic LAKE Vol.12

◎小川流(?)、釣れるルアーチョイスその2
 前回述べた『コンスタントに釣れるルアー』には、ある程度の法則があると思う。そこで、今回はその釣れるルアーについての法則性を示していきたい。

◆釣れているルアーの法則
 簡単にこんなことを言い切りのカタチで書くと絶対に怒られるのはわかっているので、「あくまで僕の目から見た釣れるルアーの共通点なので非常に偏っているかもしれない」ということをつけ加えておきたいと思う。

●違いがあるのでは?
 まず大切なのは『釣れやすいルアー』と『釣れ続くルアー』の違いを見抜くということ。『釣れやすいルアー』はスレやすいことが多い、という欠点を持っているが、集魚効果においては絶大な威力を持つ。『釣れ続くルアー』はスレにくいが、遠くの魚を寄せてくる効果が少ないものが多い。これはルアーのアクションによって単純に分けたりもできるし、その日その場の状況に応じて変化する場合もある。ルアーカラーの法則にしてもそうだ。ちなみにおおまかにミノープラグなどの動きを分けたときにはウォブリング寄りのアクションを見せるルアーが『釣れやすいルアー』であることが多く、ローリング寄りのアクションをするルアーが『釣れ続くルアー』であることが多い。もう一つわけるなら、泳ぐルアーは頭と尻を振っているのだが、この支点となる位置が前寄りのルアーのほうがスレにくい気がする。これは頭を振っている幅が原因なのではなく、おそらく尻側の水を押す力が大きくなるためだと思う。モチロン魚とルアーのレンジの差、ベイトフィッシュのアクションの違いで起きる例外もあるが、私の場合ほとんどそういうイメージで捉えている。
 『釣れ続くルアー』は魚がいるエリアのわかる人には非常に効果的なウェポンとなる。私個人はとても釣りの技術が下手なのもあってピンスポットへのキャストなどに微塵の魅力も感じない。適当に投げたなら、そこに魚のほうから飛びついてくれば、そっちのほうがオモシロイと感じているのだ。このため一尾で非常に満足することになり、釣れ続く必要もないので集魚効果のほうに重点をおいた『釣れやすいルアー』のほうを作ることになる。その分信じられないほど魚が寄りやすいルアーを作らなければならないのだが、こういう視点からキャスティークやSIN-ZOベイトが生まれたように、これにもいくつかの法則性があると考える。

●釣れやすいルアー
 ミノーで最も代表的なのはやはりラパラ・CD5だろう。誰が使っても大差なく安定した釣果を供給できるのはおそらくしっかりしたウォブリングのアクションがキーとなっていると思う。またクランクベイトにもこのタイプの名作が多く、私はビルノーマン・DD-22とダイワ・ピーナッツを特に愛用している。またここ数年で最も驚いた、このジャンルのルアーはプラドコ・スウィミンイメージというショートビルクランク(シャッド?)だ。このルアーは春先に恐ろしい釣果を誰でも出せるパワーを持っている。余談だが、クランクは潜らせてレンジに到達したら、スピードを落とし、一定のスローな速度で巻いてくるような使い方が多い。多くのクランクベイトはロッドをかなり立てて使用しているが、スウィミンイメージ使用時はショートビルのためレンジの都合もあって竿を寝かせている。ロッドの角度が釣果や釣れる魚の種類を変えてしまうこともあるので何かのご参考に。
 キャスティーク・トラウトベイトもこのジャンルに入れることができる。こんな大きいルアーに魚が寄ってくることで驚いたものだが、ルアー本体の弾力で自発的に左右に波を起こす仕組みになっているので、考えようによっては生物のような動きである。集魚効果があるのは当然なのかもしれない。

●自発的な波動
 じつは、私の思う集魚効果のひとつに、この『側方(斜め後方)への自発的(に見える)波動』というものがある。ミノーなどのプラグは、水中で曳くとリップで受けた抵抗を利用して体を左右に振りながら泳いでいるように見せる。しかし、きれいに泳いでいる一般のミノープラグはほとんど後方の水を掻き回しているだけに過ぎず、側方へはそれほど振動を伝えない。これでは水を掻き回すただの物体で、水を掻き分ける部分をリップ任せにしてしまっているので、水を押すわけではない。したがって視覚的な効果以外は望めないのだと思う。キャストが魚のいるところに正確にできる人間ならこれでも十分かもしれないが、はじめてのエリアで見当もつかないや、私のようにモノグサな人間の場合は、魚に出会うまで相当な苦労を強いられてしまうだろう。
 そこで、魚の方から寄ってくるプラグを探す(または作る)必要があるのだ。魚がついてくるルアーを総合して考えてみると、ニオイや色、反射など、他のルアーにはないなんらかの信号を発しているものだが、ミノープラグの『泳ぎ』という部分は、見えないこともあってなかなかその信号について触れられなかったのだと思う。しかし、泳ぐ魚は左右に水を掻くようにキックしている。これはただ動かされている棒と大きく異なる点だと思う。これを曲がらないミノーで再現するには無理があるというものだ。動きが多少変になるか、ラパラのように振り幅の中心軸をリア側に持っていかなくてはならないだろう。そこで懸命に私がない頭を絞って考えたルアーがザ・ナイフ7cmカウントダウンというルアーだ。このルアーはボディ形状が偏平になっているのだが、ウェイトの位置が変わっている。振り幅の中心軸はそれほど後ろではない状態で、リア下部にウェイトを配置しているのだ。これによってウォブリングで動いたテール側が、ボディが扁平なため下部がスライドするようなカタチで倒れ、慣性でボディが余分にブレたカタチで水を押してしまう…という大変わかりにくい構造を考えだしたことによって、ただ投げて巻くだけで集魚効果のある波をつくり出すことができた。この効果があったのか、公開テスト初っ端初キャストから大勢の見ている前で64cmのバスを釣ってしまったのだ。自分では予想もしていなかった結果で、しかも本当に出来過ぎた話になったので、これはマグレだと見て全然いいと思う。しかしSIN-ZOベイトも水面ジャンプテスト中に60アップに恵まれたので、何かの縁を感じずにはいられない。とりあえずその後の釣果も最初ほどのインパクトはない(笑)ものの絶好調で、魚のほうから襲ってくるため、この波動に関する読みはほぼ間違いないと考えている。

●釣れ続くルアー
 ミノーの世界ではローリング主体のものがそれに相当するのだが、リップがあるとどうしても頭と尻の振り幅の支点となる中心軸が後側へ行ってしまいがちになるので、できる限りリップレスのミノーを使い慣れたほうがスレにくく、有利であると考えている。シーバスルアーになってしまうが、アイマコモモSF125、K-TENリップレスのようなリップレスタイプのミノーは頭を支点にしているので魚の遊泳時の中心軸に近くなる。この2つのルアーに限ればラインアイも水受け面の前方へ来ているため中心軸がより前方へと来ることになる。このためスレに強く、釣れ続くことが多いルアーなのだ。バスが釣りやすいルアーにもかかわらず、『ソルト用』と書いてあるだけでシーバスにしか使わないのはもったいなさ過ぎるのではないだろうか。
 ちなみにSIN-ZOベイトの心臓リグは水面直下をスローのただ巻きで使うとこのタイプの釣れ続くルアーに早変わりする。この場合、不意なダートなどもさせてはならず、丁寧に一定層を巻くと、よい結果が出ている。




小川健太郎/25才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。ホームページはhttp://ogaken.org

2017年1月30日月曜日

釣り場の見分け方2(2002年10月BW誌)


(写真はデジカメ時代に入ってからのものです。テラピアの養殖餌袋製バッグ。)
この原稿の少し前に編集部と話し合って、ページ数を減らしてもらったと思います。今考えてみれば普通の内容ですが、この頃はおそらくこんな初歩的なことも紙面では伝わってなかった時代だったのでしょう。なんか他の原稿見ても懸命に各紙で啓蒙してます(笑)。本当に伝えたかったことはこんなことじゃないのに、前提が違うと話が伝わらない、ということで。

話は変わりますが、今週から大阪ショー週間が始まりますね。問屋さんの売り出しと同時進行でショーの設営、ショーの業者日、と釣り業界が一番忙しくなる一週間です。この原稿を書いていた頃のショーはシーバスバブル期で、ソルトで無意味に活躍していたワタクシには、体力的に非常にツラい期間のはずでした。ところが、引退して仕事量が1/100にもなったであろう今の方がツライ。これが若さの違いなのですね…。



Academic LAKE Vol.10

◎釣れる釣り場の見分け方・その2(流れ/波立ち編)
 自分をはじめ、陸っぱりでバス釣りを楽しんでいる読者の皆様のために、『釣り場でどこを選ぶのか』の切り口を、前回からいくつか紹介している。これらの切り口はどれもが互いに相関関係を持っていることもあり、一つイイ条件を見つければ、あとの条件が附随してくることもよくある。ウイードのように好環境を見つける指標となる要素もあるので、どの要素を探して行けば魚が釣りやすくなるのかを考えてみたいと思う。


◆流れ
 水の流れは魚を探す上で重要なキーになる。流れを読み取る方法としては、地形や環境からの判断、水の色、波立ちなどさまざまな方法が存在するが、やはり危険のない範囲で泳いでみる、またはウェーディングなど、自分の身体で確かめることも重要であろう。基本的に川の流れのように一本の真直ぐな流れでも、底層、宙層、表層という順番で速くなっていくように思う。これらが水中の石などのストラクチャーや地形、高低差などによりねじ曲げられて、巻き、ヨレ、タルミなど複雑な流れを形成するのだ。流れの中でベイトを捕食する際、フィッシュイーターはこれらの流れより生まれた溝のような流れの緩むゾーンに潜むことが多い。通常岩陰などがこのゾーンに相当することが多いが、中には何の変哲もない宙層で常に変動するゾーンであることもある。こういった場合は波立ち方を注意しながら見て探すほかはなく、トラウトの本流釣りや川のシーバス釣りなど多くの経験が必要になる。この手の波の水面への変化の出方はまた機会があれば説明したい。
 流れのある釣り場では、魚が流れのどの位置についているかが重要になることが多い。流心を中心にその脇の流れの中、淵などの深場、流れのないわんどと、様々な場所に着く可能性がある。一般的には温度が高い夏の昼は流心、寒い冬は深場が狙い目で、春秋はベイトの条件がエビなのか小魚なのかで変わってくるようだ。ちなみに小魚がベイトの時は流心の脇の流れに着いていることが多く、ミノーやノーシンカーワームなどを横切らせて釣ることになる。このとき、流れに対してどう投げるか、どう横切らせるかで釣れる魚のサイズが変わってくる。キーは糸のタルミかただと考えているのだが、これは長くなりそうなので先ほどの波の変化とあわせてまた今度ご紹介したいと思う。

◆波立ち
 波の立ち方は流れや底質の変化の他に、水質や水温の変化、風を乱すような障害物によっても大きな変化が現れやすい。障害物は風が当たらない部分を作るので、水面にはポッカリと波立ちのない部分が形成される。ラインを風に乱されないようにしたい場合や、水面をすすむラインであたりをとる際に利用しやすい。水質や水温で起きる波立ちの変化は釣れるというより釣れにくくなる可能性をもっている。
 例えばターンオーバーが起きはじめたとき、起きていないエリアと起きているエリアで波の立ち方に違いが生じたら、起きていないエリアへと移動して難を逃れることができる。また、風が岸から吹くことによって水面の水が沖へ押し出され(吹送流)、押し出された分の補流として岸側の低層の水が湧昇してくる現象のときも釣れにくいことが多い。このように通常底から来た水は低温なので急にこれが起きるとそのエリアは活性が下がる可能性が高いのだ。この場合は、風が吹いているのも関わらず、岸側の水面の一部がぺったりとしていたりするので見つけやすい。陸っぱりなら風上側になるときに生じることが多いので要注意。
 この他、河口域での塩分濃度の違いから起きるものや、流れ込みの温度変化などから起きるものもあり、場合によってはこの境目に沿って魚が回遊することも考えられる。スモールマウスバスやフロリダバス(秋のバックウォーターなど)では、こういう波の差異が起きる境目を、小魚を意識したルアーで通してくるパターンも存在し、どう猛なバスの姿を見ることが多い。

◆方角
 海の場合大きなキーとなりうる「方角」だが、淡水ではあまり気にされることが少ない。季節が冬から春の季節であれば、暖かい南風の影響によって、方角の要素は格段に影響が大きくなる。(←秘密にしていたことがあり、掲載時に省略)日本という国での太陽は南側中心に出ているので北の方角に向かって『温度』と『シェード』ができやすい。夏と冬はときどきこのようにして方角を考えることがある。また、バスプロの方には風向きと方角による釣果への影響に詳しい人が多いようなので、ガイドサービスなどを受ける際に学ぶことで、現場と直結して考えることができると思う。

◆植物、植生
 植物は水上水中に関わらず、魚やエサの着く場所である以外に、生えている植物によってそのエリアの水温傾向を教えてくれたり、水質の安定を約束してくれたりとメリットが大きい。また、植物は、生えているということだけでそのエリアが好条件を満たしている可能性を示唆しており、植物を知れば釣りには大きく役立つことは間違いない。しかし、以前の連載でご紹介した通り水中の植物となるウィードの資料が少ないため、プロの釣り人でもこのジャンルに詳しい人は少ない(機会があればまた紹介したいと思うので編集部までリクエストして下さい)。


読者の皆様の質問お待ちしております!!
住所、氏名、年令、電話番号、ペンネームを明記の上バスワールド編集部アカデミックレイク係または●●@●●.jpまでお願いします。採用者にはオリジナルルアーや、場合によっては質問解答の内容に準じた商品セットなどをお送りします。


小川健太郎/25才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。ホームページはhttp://ogaken.org

2017年1月27日金曜日

釣り場の見分け方1ほか(2002年7月BW誌)

10月号との記録でしたが、他の連載が押してたので7月に書いたようです。この次の号は特別版ということで、取材で編集部記事が入ってました。さすがに権利関係で掲載できません(笑)


Academic LAKE Vol.9

◎釣れる釣り場の見分け方・その1(水の色編)
 自分をはじめ、陸っぱりでバス釣りを楽しんでいる読者の皆様のために、『釣り場でどこを選ぶのか』の切り口を、今回からいくつか紹介したいと思う。これらの切り口はどれもが互いに相関関係を持っていることもあり、一つイイ条件を見つければ、あとの条件が附随してくることもよくある。特にウィードなどは、元気よく生えていること自体でそのエリアが非常に生物にマッチしていることがわかる指標となりうる。しかし、リザーバーなどウイードの育ちにくい環境もあるので、どの要素を探して行けば魚が釣りやすくなるのかを考えてみたいと思う。

◆水の色
 私が釣り場を確定するとき、最も簡単な探し方がコレだ。水の色は言葉にできないほどたくさんパターンがあるが、経験で釣れる色を見分けることができれば、かなり見切りが速くなる。水の色はエリアによって青、緑、黄土〜茶色、赤〜こげ茶色と4つほどのパターンに、濁りによって無色、白濁り、ササ濁り、土砂濁りとさらに4つほどにおおまかに分けることができる。

まずはエリアの『普段の水の色』を見てみよう。

●青:
 緑の抜けるような、クリアなエメラルドグリーン。通常、水温が低いエリアの場合この色が多く、山上湖や源流に近いダム、ダムのバックウォーターなどがこういう色になる。砂が白ければ青さがより際立つ。成分がアルカリ性の場合は、魚に水質が合っていないことが多いので最初から釣りにならない場所となりやすいが、この場合はたいてい水の色が真っ青である。弱酸性で青い緑の場合は他の水域と比べても水生植物や植物プランクトンが少ないため、流れ込み付近以外は酸素量が少ないと考えられる。
 こういうエリアは、水温が低いため夏がベストシーズンとなることが多い。雨によるニゴリが起きたときと朝夕が狙い目で、トップやミノーによる非常にエキサイティングなゲームを展開できるが、それ以外はスレやすい見えバスが中心となる。ミノーに反応しなければノーシンカーのワーム以外に打つ手は少なくなってしまう。水温が低いからか、バスのサイズも小型が多く、小魚が溜まっていなければ、せいぜい45cmまでが釣れる上限になってしまいがちである。

●緑:
 琵琶湖の北湖に代表される、もっとも一般的なバス釣り場の色。薄い緑と濃い緑があり、どちらも比較的釣りやすいエリアである。水深のあるエリアの黒っぽい透明な緑は生命感に溢れ、元気な魚を育んでいる可能性が高い。薄い緑の場合、水深が浅いだけなら問題ないが、水深が深くて薄い緑の水域というのは酸素が不足していたり水質があまりよくなかったりする。このような色であれば水面のアオコのチェック、泡立ちのキレ具合を確かめてみよう。泡が消えなかったり、アオコが出ていれば、難しい釣りになる可能性が高い。また、ダムでなければウイードの絡む条件が多い水色でもある。また、視界がワイドにとれるため、群れで回遊するタイプの魚も多くなるように思う。バスの体色はハッキリする。

●黄土〜茶色:
 霞ヶ浦や、多くのため池に代表されるマッディ・カラー。土から由来する有機物を多く含み、ニゴリが出やすいため光が届きにくく、ウイードの生育を妨げる。主に平野部に多く、水深も浅い場所がほとんど。底質は泥や砂が多いため、ちょっとした障害物にバスが居着くようになる。視覚が利かないからか、エサはハゼやヨシノボリのような底性の小魚、エビ、ザリガニがメインで、あまり動き回って追い掛けて捕食することも少ない。そのかわり聴覚が発達し、音や水流の絡むルアーへのヒットが多くなる。バスの体の模様は薄い、または消失しているものが多い。

●赤〜こげ茶色:
 鉄分を多く含むエリアの水の色。クリアな場所が多いので基本的には緑の水色と同じように考えている。ダムの場合濁りやすく、濁ると難しくなるが、池の場合はなぜか濁りにくい場所が多い気がする。スモークや金黒、黒系のルアーになぜか実績が集中するのもこういう釣り場。理由はよくわからないが、小魚をメインベイトにしているときが多いので、ノーシンカースティックベイトなどの水平の動きの効果が相当高い。

次に『濁り』をみてみよう。

●無色:
 濁りがない状態を指す。何日も晴れていて濁りが出ていない場合、水質がトロリとしているように見える場合がある。さらには澄んでいるのにアオコが浮いたりすることも多い。これは閉鎖水域で夏によくある現象だが、透明度がやや落ちている状態のようだ。水温の上昇が続き、プランクトンの適水温を上回ってしまうとそれまで優位にいた植物プランクトンが活動を弱める。このことで、水温上昇による溶存酸素量の低下にくわえて生産される酸素量も減少し水質が悪化するのだ。このような条件以外の透明な水は、概して良好な状態といえるだろう。

●白濁り
 白い濁りは工事濁り、慢性的な濁りの2つで、大概が雨に起因する濁りだ。
 工事濁りというのは上流部で工事の際、コンクリートの使用が原因で発生すると見られる。特に水が微妙にヌルヌルとする場合は石灰などのアルカリ質を含む場合もあり、これは魚にpHショックを引き起こすことも考えられ、魚をはじめとする水中生物にとっては決してよくはないと思う。この場合全く釣れないに等しい釣果となる。琵琶湖の悪名高い浚渫による濁りや平野の農薬による濁りも同様で比較的釣りが困難な状態になることが多い。
 慢性的な濁りに関しては、長雨、大雨のあとなど、何日も経っているのになかなか退かない濁り。色は普段の水の色と白を混濁したような水色でササ濁りよりもハッキリ白い。視界が普段の透明時よりもわるいためか、釣りづらい場合が多い。釣れるエリアを知らない場合は透明な水の流れ込むインレットを探すか、アウトレットまで行って水を見比べ、落ち着いているエリアを重点的に叩く場合が多い。また、アシなどの植物が生えていればその付近もチェックする。

●ササ濁り
 次にササ濁りだが、こちらは雨で濁りはじめたときなどに見られる薄い濁り方だ。白い濁りを普段の水の色で包んだような柔らかい濁りの時で、比較的釣りやすい。流れがあるエリアで朝夕の活性が著しく上がるのも、この濁りの時が多い気がする。魚の警戒心も削がれるので陽が昇ってからも長時間安定した釣果が得られることも多い。

●土砂濁り
 雨の次の日などに行くと、釣り場全体がマッディに変わっている場合がある。この場合、魚がどこへいったのか検討すらつかなくなることが多い。稀に大当たりすることもあるが、気圧の変化など原因がまちまちで不明瞭であることが多い。私の場合、ウイードの中など、比較的魚が潜みやすいエリアを知らないときは、釣り場ごと切り捨てて違うエリアに行くことが多い。



◆質問コーナー
久しぶりに色の質問が来たのでさっそく答えてみたいと思います。
Q:ワームでもプラグでもいいのですが、大きいバスが釣れるカラーは存在しますか?(岐阜市・高橋さん)

A:難しい質問ですね。ラメなど微妙な差を考えず、原色の信号でデカイ魚を釣りやすい色というのはあると思います。赤、緑、白、黒、黄(チャートではない)の5色です。ただ、そういう色はぜんぜん売れてないことが多いですよね。これは数をそろえなくてはならない『トーナメント文化』の弊害だと思います。自分で考えてデカバスを狙う人は、数釣りを一切排除して考えるので、自然とある信号に気付くことになると思います。しかしながら「数が釣れなくては幸せに思えない」という暗示にかかっている多くのアングラーの考え方では、60オーバーへの道はどんどん遠くなっていくように感じています。まず、マッチ・ザ・ベイト信仰とナチュラルカラー信仰を魚の視点から考え直してみて、簡単に整理することが大事だと思います。
 指標となるデカバスカラーはSIN-ZOベイトの小川セレクションカラーとして、少ないながらも発売されているので他のルアーの購入時にでも参考にしていただければ幸いです。ちなみにこのカラーのSIN-ZOを使うなら、4インチの使用をオススメします。
●カシスレッド:赤。フロリダバスや回遊タイプなどの小魚狙いのバスに。
●シーグリーン:緑。ウォーターメロンではなくアボカド。先述の『緑の水色』にマッチング。居着きバス狙いに。
●マンゴープリン:黄。理由はよくわからないですが、とにかくデカいバスが釣れやすい色です。45〜60cm狙いに。
●チョークホワイト:白。ちょうど一年前の本誌の掲載をきっかけに今シーズンから販売。夏〜秋のデカバス狙いの純白。魚の目線より上での使用や、ノーシンカーでリリーパッドなどの上を通すときに大きいサイズが出やすい色です。
●ソリッドブラック:普通の黒。以前本連載にあったように、スライド、ダートなど、動くとバスに視認されるカラーで、動きの緩急で誘うカラー。初めにこのルアーで65cmの実績を出したことからSIN-ZOベイトを発売することにした、思い出カラー。

読者の皆様の質問お待ちしております!!
住所、氏名、年令、電話番号、ペンネームを明記の上バスワールド編集部アカデミックレイク係または●●@●●●.jpまでお願いします。採用者には小川氏オリジナルルアーや、場合によっては質問解答の内容に準じた商品セットなどをお送りします。


小川健太郎/25才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。

2017年1月25日水曜日

質問3バド、アプローチ等(2002年4月BW誌)

9月号ですが、原稿は4月作成になってました。色々修正されたりしたような記憶がうっすらありますが、元の原稿はこんな感じだったようです。


Academic LAKE Vol.8




質問コーナー(第三回)
 今回の質問はなぜかイキナリ個人的な質問…。なんとスカジットデザインズの皆川さんからも戴きました。

Q:どうしてあのヘンな帽子をかぶっているの?(東京都・皆川哲さん)

A:アレがないと人としゃべれないからです(笑)。じつはあの帽子以外にも十数着といろいろなタイプを持っています。しかしながら、自分に似合うように頼んだ特注品ということでこのプロフィール写真の白いやつが一番好きなのです。ちなみにイタリアからの輸入モノでじつは2代目。僕しか持っていないはずです。現在は毛皮の輸入規制により、入手不能になりました。これがあれば寒い日の釣りも平気です。っていうか、釣りに全然関係ない内容ですね。スミマセン。



Q:小川的解釈では、なぜビッグバドで釣れるのか。(奈良県・秘密ばかりのアッコちゃんさん)

A:ペンネームに異次元の香りがします(笑)。バドについては、以前トップ堂誌面でも述べたのですが、やはりボディ、リップ、そしてフラップと呼ばれるブレードの関係が絶妙だからではないでしょうか。僕個人のバドについての感想を簡単にまとめると、以下のようになります。

●ボディ:浮力と抵抗の大きい形状で水を掻く。太鼓の胴のようにサウンドを響かせる。
●リップ:移動距離あたりの首を振る回数が多い。
●サウンド:『キンよりカン、カンよりコンという低音』と『規則的な中に混じる、突然の不規則な音』という条件で、大型(55アップ)の選択的釣獲が可能になる。

 次に、僕らの仲間内でのサイズ選択で使われる音の例を紹介します。これは「このサイズにはこの音がよく釣れる」といった主観的な目安で選ばれており、絶対ではありません。サンプルも千尾を超えているわけではないので、参考程度に流し読みして下さい。
●関東差し(よくあるヒートンを中心より上に打つチューン):35cm〜50cmクラスの数釣り
●ボーンバド(改造なし):40cm〜55cmクラスの数釣り
●関西差し(ヒートンを中心より下に打つ):55cm〜65cmクラスの一発狙い
●旧型バド(ヒートン2回転半緩め):45cm〜60cmクラス
キモはブレードの水没部分になりますが、そのへんは確証が得られればまたご報告します。この内容は国内で釣れるサイズの平均的な傾向を述べています。写真にある、旧型バドでの62cmのように、実際の釣果がこの範囲内のサイズを超えることはよくありますが、それらのデータは再現性に乏しいため、ここでは省略しました。
 おそらく雑誌などで近年流行ったように関東差しがトーナメントに向いているのは数が釣りやすくなるからだと考えられます。しかしながら、55cm以上の大型個体を狙いたい人間にとっては時間をとられたり、場が荒れたりとロクなことがありません。このため、こういう人たちは関西差しや旧型バドを使用する傾向が強くなっています。というより仲間内を見ていると、隣でデカイのばかり釣られてしまうので自然とこれらのバドへ移行するようです。何度も述べますがこれらの内容、データは揃っていますが、確証はないので、皆さんの腕でぜひ試してみて体験して下さい!!



Q:釣り場で、魚に気付かれないようなアプローチはありますか?(山梨県:ゴーリキーさん)
A:魚に気付かれる瞬間、というのは結構こちらもわかっちゃうもんで、なんだか悲しくなりますよね。基本的に魚に気付かれないようにするには、釣り場に立たなければいい(笑)のです。つまり究極自分の存在を釣り場から消すということです。そこにいることに気付かれなければ魚は警戒心を緩めます。次のようなことを心がけるとよいかもしれません。

◇姿を消すための3箇条
1.自分の姿を点、または鉛直方向の線にする。
2.つま先歩きで足音を消す
3.横に動かない

 1はアプローチの上での基本です。魚から見える角度での面積を広げると、どんどん不利になります。魚は動かないものは視界には飛び込んでこないようにできていますが、動くものは必ず見えてしまいます。岩や木になったつもりで縦の線になったり、ほふく前進で顔だけ出して釣りするほうが魚は警戒しません。ただし、住宅地などでのこのような行動は、人間に警戒されてしまう可能性があるので、釣果と社会的立場を天秤にかけた上で実践して下さい。
 2は振動です。足音や石の動く音は話し声と違って水中へ伝わってしまいます。ハッキリ言って、かかとで歩く現代人は狩猟全般に向いていないと思います(笑)。水際の魚が突然こちらに対して横(側面)を向けるようになったらもう警戒されています。この行動は側線に対して垂直に入ってくる振動を100%感知しようとしている音源定位的な行動です。
 3はスミス社の平本さんという方から教えていただいたのですが、魚は陸上の生物の縦方向の動きより水平方向の動きに鋭敏に反応するようです。水際を歩いたりする時や、竿を横に構えたりする時は気にしたほうがよいかも知れません。
 これらのことを踏まえると、「水際から離れて動き、ピンスポットで水際へゆっくり近づくのが理想的なアプローチ」ということになるのではないでしょうか。


Q:魚にやさしいリリースってできますか?(大阪市:北部さん)

A:う、難しい話ですね。基本的にフックに因る傷は、目などにかからない限り気にしなくてイイと思います。そんなことよりも重要なのは『魚に触らないこと』。魚の身体、とくにエラまわりなどに触るのは避けたほうがいいですよ。魚は温度変化や粘膜を傷つけられることに非常に弱いので、例えば乾いた手で触ることや、乾いたコンクリートに置いたりすることによってヤケドのような症状をおこします。エラのように生命維持に関わる器官はとくに弱く、すこし触れただけでも生命の危機に関わることになりかねません。これはフックを飲まれた時も同じことで、むりやりベタベタ触って外すよりもワームを外してラインの結び目で切って放流(もしくはプラグならフックを折ったり外して放流)したほうが、なんと生存率がゼンゼン高いのです。自力でフックが取れる個体もいますし、フックがぶら下がったままなほうが天寿をまっとうできる可能性が高いなんて、考えてもおかしい話ですよね。しかし、これが水の中の生物と陸上生物の違いなのかもしれません。
 以上のことをふまえて考えると、やさしいリリースについては極論「魚に触れないように、ルアーの結び目付近を持ってペンチでフックをつかんで水の中に静かに振り落とす」ということになります。これが魚に一番ダメージがなく、現実的ではないでしょうか。バスはまだ触っても丈夫なほうですが、渓流魚のように冷水の魚に関してはもはや「手で触った時点でアウト」の可能性が本当に高くなります。写真撮影など、こういった魚を手に持ちたい場合はしっかり水で濡らして冷えきった状態で、水中で持った形で撮るのが理想的です。
 また、話が大きく逸れますが、フックの傷を負った魚がかわいそうなので釣りをやめよう、という方もいらっしゃいます。しかし、子供たちが生物の本物の命で遊び、傷つけ、時には殺すことではじめて命が理解できるのではないでしょうか。だから、僕は魚を触ってしまって、結果弱らせてしまっても、人間としてなにかを得ることができるのではないかと思うのです。自然というものが失われるなか、例え管理釣り場であっても、命をリアルなものとして感じとらなければ、他人を守ろう、自然を守ろうという気になるわけもありません。事実僕はブラウン管の向こうの自然を守る気にはなりません。カメラはゴミを除けた姿しか写さないのです。こんな現状現場を把握もできずに、何を守ろう、倫理とはなにか、といったすべての事象が「大人の人間」として理解できるとは思えません(僕はまだ子供ですが…笑)。サーファーは波を守るために地形を守り、林業は水を守り、本当の漁師は魚を守ることを考えます。釣りという遊びを通してこういった環境を知ることができる我々釣り人は、テレビ画面でしか魚を見たことがない人よりも魚のことを知って、守る手段を身につけることができる、幸せな存在だと思います。バスは害魚だという論争も、魚のことを知ることができた人間がはじめてわかる話で、その先の判断はそれぞれ考えることです。われわれバスアングラーは、魚を触ったこともない人間に、バスが害魚だと決めつけられる今の社会に疑問を持つべきではないでしょうか。話が脱線してスイマセン…。バス問題については僕の企画した、『バス問題を考える(萱間修 著)株式会社フィッシュマン刊』を是非ご一読下さい。以上、暴走・終わり(笑)。



まだまだものたりないぜ!(笑 嘘です)
ひきつづき読者の皆様の質問お待ちしております!!
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小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。この号が出る頃にはラオスにいるかもしれない。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり生かされている。SIN-ZOベイトなどを開発。

2017年1月23日月曜日

質問2ラインの色、リリースの影響(2002年4月BW誌)

引き続き質問コーナーです。かなり真面目に答えてます。この原稿が掲載されたかどうか、ちょっと覚えていないのですが、これと次の原稿(内容一部重複)の間が海外で二ヶ月お休みしてました。ひょっとしたら旅に出るネタの話にすげ替えたのかもしれません。※この時の旅の内容はロッド&リール誌に掲載されてました。
当時はこの時期まで海外に行く釣り人も、ホームページもなくて、情報はありませんでした。なので、全く結果が気にもならないで旅を楽しめる、いい時代でしたね。そしてそもそも調べようともしなかったのですが、そのあてのない旅一つひとつがTULALAの原点になってます。地図もコンパスもない『釣り旅』の源流です。当時の海外記事を読んでいた方が、今でもその頃の私の記事に影響を受けてくださってたりして、非常に嬉しい限りです。


(以下↓原文、一部アドレス伏字等補正)

Academic LAKE Vol.7

質問コーナー(第二回)

 個人的な事情で、前回からはじめてみた質問コーナー。さっそくイイ感じの質問が舞い込んできたのでご紹介したい。今回はライン、そしてリトリーブと活性についての質問だ。

※小川健太郎に解いてもらいたい謎、疑問などを送って下さい。採用分に個人的にオリジナルルアーのプレゼントを差し上げたいと思います。住所氏名年令、ペンネームバス歴などを明記の上、バスワールド編集部「アカデミックレイク」係、もしくはメールhowl@fish.co.jpマデ(メールのレス強要はご容赦下さい)。



Q:ラインの色は魚には見えているの?(東京都 見えネコさん 他)

A:以前お伝えしたことがあるかもしれませんが、魚をはじめ、動物には盲点があります。これは、もちろん人間にもいえることなのですが、透明なものは動いている間は見えにくくなり、不透明なものは(どらえもんでいう「石コロ帽」の原理で)動いていない時に見えにくいのです。逆に動いていない透明なもの、そして動いている不透明なものは視界に飛び込んでくるように、魚の眼ができているのです。具体的に考えてみましょう。
 ガラスのようなものを通すと向こうの世界が屈折して、多かれ少なかれ歪む。ガラス体が曲面で形成されているならなおさらだ。これは眼鏡のレンズやコップなどを想像してもらうとわかると思います。これらを例えば頭上でパパッと動かすと、ガラスと自分の距離はつかみにくくなります。逆に黒いものや不透明なものを同じスピードで動かすとハッキリ眼で追えます。しかしこれら不透明なものは位置を固定してしまうと、「見えていても見えていない」状況になります。これが盲点です。
 他の例でいえば、例えば道で寝ていたり、ジーッとしている人間は、動き出すまでその存在に気付かないこともありますよね。しかしながらジーッとしていても、眼の玉のような光るもの、屈折のあるものにはこちらも気付きやすく、眼が大きく開いている人間や透明なものを持った人間にはすぐに気がつきます。
 光の屈折、反射は水の中では特に目立つもので、こちらが少しでも動けば向こうの光も動きます。逆にマットなものは動くまで全く気付かれません。日本の釣りではイカ釣りのエギの布巻きという部分にこの原理が応用されていました(今は忘れられてますが)。エギは静と動の緩急で食わせるルアーなのですが、この布がマットであることを利用して、動の部分で見せて寄せ、急激な静の部分でイカの盲点に消えてしまいます。イカはこのあとのスローなカーブフォールなどわずかなきっかけを意地で見つけだし、ハリがあるとも知らず抱きにかかるのですが、こういった戦略が可能になるほど盲点がはっきりした生き物なのです。
 魚の場合もうすこし眼が発達していて、動かないマットなものも見えることは見えます(人間に近いです)し、探しているものと同じ形状のものを選択できる能力も持っています。しかし極端にいえばイカのように見える見えないがはっきりしてしまうときもあります。それが「ものが小さい、または細いとき」なのです。
 糸の話だけに前フリが長〜く(笑)なりましたが、ラインは不透明なPEと透明なナイロンが代表的です。これらのラインが魚に見える瞬間、見えない瞬間はつまり、「運動しているかしていないか」にかかっているのです。不透明なラインは横方向など、下手に動かすと見え、純粋な縦方向の運動や、まったく動かさないときは視界から消えます。透明なラインは動かさない間は見えてしまい、動くとほとんど見えなくなります。
 市販ラインについた色を気にするのもいいですが、この盲点という切り口もラインを選ぶ上で参考にしていただいたらよいのではないかと思います。




Q:以前ホームページで小川さんが、「フックが魚に飲まれ、手こずるくらいなら、糸だけきれいに切って、フックのついたままリリースしたほうがまだマシ」と書いていましたが、生存率は本当に高いのでしょうか。(三重県 鵜野さん他)

A:今、手元に資料がないうえにウロ覚えなのでデータが出せません(スミマセン)が、いくつかの機関で行われた実験で、フック(当然シングル)を飲んだ場合は、『素手で触りまくるくらいなら』ラインを切ってそのままリリースするほうが生存率が異常に高い、という話ですね。これらの実験で重要な部分は『魚体に素手で触る』ということの魚体への影響のわるさで、「フック外し」という行為に固執して、エラを触ったりするだけで致死率がグングン上がってしまうという部分です。研究機関によってフックのサイズや実験に使用した魚種、サイズも違うため結果もバラつきがありますが、どの実験でも致死率の順位は同じような結果でした。魚体に触れていない魚の中には、自力でフックを外す個体も信じられないくらいの数いたのを記憶しています。
 リリース目的なら、釣りは遊びになってしまうので、フックは可能な限り除去するのが当然です。しかし、喉の奥など、取りにくくなってしまった場合は、実験結果を見ていくと、ラインを切ったほうがよいようですよ。私は飲まれるようなルアーをあまり使わないので最近活躍してないですが、ロングノーズペンチなど、ロングタイプのものを持って行くと魚体に触れずにリリースできます。
 毎日思う存分釣りする人であれば、欲もなくなるので、究極は『いつもサイズの魚は全部足下でバレてくれると最高!』になります。(食べない魚は)手に持つほどに、毎日の、そして未来の釣果が減少していくのですね。←触るなというわけではありません(笑)。
 触ったり、いい写真を撮ることで、確かに生命は脅かしますが、きっとその生命は何か環境を守る術を我々に伝えてくれると思います。どの道も、選ぶのは今は人間一人ひとり、なのです。



Q:よく、遅く巻けといわれるわりに、テレビやビデオのプロは結構速く巻いて釣ってたりするのですが、釣れるリトリーブスピードってありますか?活性の問題だけですか?(大阪府・Sさん)

A:質問いただいたのは4月からの海外生活に同行するたった一人の人間なので、帰国の頃には来月号。終盤で一人危険地帯に行くらしいので、この号を見ることがないまま一生を終えるかもしれませんが、質問内容が面白いので掲載してみました。
 答えからいうと、プロがそのスピードで巻くのは「活性よりもルアーのオイシイスピード」がまずあるのだと思います。プロでも誰でも、基本軸は速い釣り、遅い釣りというテンポの問題を考えますが、ルアーひとつひとつの動きが違うのに、すべて一様に巻いてよいわけではない、ということです。
 例えば同じレンジ(水深の層)を潜る3m仕様のクランクベイトが2種類あったとします。この日水深2mのラインが大当たりのレンジで、どちらのクランクでも釣果があったとしましょう。しかし、この2種類のルアーは2mというレンジに到達する速さのスピードも違えばレンジ内をキープできるスピードも変わってきます。この違う種類のルアーを使うだけでも、レンジ内をキープできるリーリングスピードは見た目からも違ってきますよね。
 これは微妙な問題にしか見えないかも知れませんが、ルアーのアクションにとっては大きな問題です。以前も本連載『リトリーブの法則』でお伝えしたとおり、ルアーの魅力がMAXになるのは「レギュラーからイレギュラーに変わった瞬間」で、最もバイトが多いのです。ただただルアーがよく泳ぐスピードだけを繰り替えしていたのでは小さい魚しか釣れなくなってしまいます。よく泳ぐスピードで釣るなら潮目や障害物へのコンタクト、トウィッチ、ポーズなど、変化を付けてやることや、それ以外のスピードとしては「泳ぎが崩れるギリギリ遅い、または速いスピード」をダラダラと繰り返してやることが大型魚への近道だと思います。
 先月釣れるとお伝えした、アイマというルアーが他の同タイプのミノーより釣れるのも、最大の理由はよく泳ぐ位置よりラインアイが下方向に付いていることで、タダ巻き中でもバランスを崩しやすくなっているからに他なりません。このため、このルアーは速く巻くのには適していませんが、スロー気味に流れの中を通すと、わずかな水流の違いを捉えて動きが変わり、食うきっかけが自動的に生まれるというわけです。同じようなルアーにチェックベイト7S(99年末以降のロット)、ターゲットミノー68F(ただし、超ウルトラデッドスローもしくはファスト&トウィッチのどちらかしかできない)なども挙げられます。これらはバス、トラウト、シーバスにかかわらず、リトリーブスピードを知っている人間には絶大な人気があります。
 このようにルアーひとつひとつでオイシイスピードが変わってきますからスピードにあったルアー、ルアーにあったスピードを把握しておくのが最善の方法だと思います。テレビのプロの方は、皆さんこういう部分に長けていますので映像のスピードもルアーと合わせて参考にするとよいかもしれません。(ただし、シーバスの有名人はギア比を改造して、微妙な部分を誰にも真似させないようにしている人がいるのでルアー以外は参考にしないほうがいいでしょう。リトリーブスピードに異常にシビアな世界なのでここだけは知られたくない人が多いようです。)



ひきつづき読者の皆様の質問お待ちしております!!
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小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。お金がないのでこの号が出る頃には海外で「地雷か雷魚」というダブルカミナリと普通に闘う毎日。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり生かされている。SIN-ZOベイト、TAN-NORジグ他を開発。

2017年1月20日金曜日

質問1色の話&余談(2002年3月BW誌)

小難しい話を封じられ、とりあえず質問コーナーに逃げることにした我々(担当+執筆者)。意外にこの回が好評というか、質問が読者ハガキやらホームページやらにホントに殺到して、しばらくこれ捌きましょう、ってことに落ち着きました。折しも帰路を決めない海外遠征(20万円使い切るまで滞在予定で、帰国後に起業、まで)を控えていたため、他の連載含めて先に全部書き溜めが必要で、ちょうど助かりました。質問者には以前のSFNEWSの読者さんやソルトの知り合い、大学の後輩なんかの名前がチラホラしてて、すごい胸が熱くなった記憶があります。
今はやりたくないけど、質問コーナーとかをやったら…多分内容は濃いけど人数はショボいでしょうね。やっぱり当時はバスバブル、シーバスバブルだったのでしょう。

(以下↓原文/アドレス等は伏字)

Academic LAKE Vol.6

質問コーナー(色編)

 当連載のプロフィールにホームページURLを掲載してから、面白い質問がメールで私小川宛に寄せられるようになった。メールの返信では、一人だけが読むことを前提に何千字と書くことになり、これも適当に読まれては残念だ(というよりメールの返信が苦手というウワサも)。しかもありがたいことに質問が多すぎて真面目に返していては仕事すらできない。そんなわけで今回から、ちょっと趣向を変えて、これらの質問にマジメに誌面で答えてみたいと思う。

※今回は質問者の了承を得ていないので匿名にさせていただきましたが、次回からはペンネーム以外にも住所氏名なんかもしっかり記入して送ってみてね。採用分に個人的にオリジナルルアーのプレゼントを差し上げたいと思います。とりあえずバスワールド編集部「アカデミックレイク」係、もしくはメール●●@●●●マデ(メールのレス強要だけはご容赦下さい)。

◎色の質問
 シーバス方面でも、カラーについての活動をしているため、色についての質問がやはり圧倒的に多い。どの色が釣れるかという質問は何をどう答えていいのかわからないので、質問が多かった色(黒、赤、アワビ)についての私の考えで答えてみたい。

Q:黒はどうして釣れると思いますか?(兵庫県 A.Tさん 他5名様)

A:質問の内容には様々な条件が書かれてありましたが、その条件に自分が身をおいていないので確実な答えはできません。しかし、おおまかな答えはどこでも共通していると思うので、その部分について考えてみたいと思います。
 みなさんが黒いルアーでイイ思いをされたのは、基本的に夜、濁りなど視覚的にはかなり悪条件の元、というのがひとつ。そして水質がクリアならトップウォーターなど、魚の目線より極端に上でのルアーへのバイト、というシチュエーションが多いと聞きます。一部日中のクリアウォーターという条件の人もいます。はたして魚には、黒ルアーがどう見えているのでしょうか。
 黒は釣り具店でも目立たないので、ナチュラルなカラーと捉える方が非常に多いカラーです。人間は下を見ているからです。しかし目線より上では、夜といえどシルエットがくっきりし、アピールの強いカラーとなります。このため多くの魚に発見されることとなり、しっかりしたフッキングへと持ち込みやすくなると思います。
 次にほとんどの魚の背中がなぜ暗色なのかということも重要になってきます。これは、ボトムの色との保護色である、ということなのです。したがって上から見おろした黒系の色は見えにくい色となり、積極的に動かさなくてはうまく発見できない魚もいます。このため、もし黒で爆釣するならば、目線より上でのアピール条件が必然的に多くなってきます。
 また、逆にスレた条件下では「見つけにくい」色のほうが有効となります。つまり目線より下の黒です。バスはシルエットがはっきりした物の場合、色や不自然さよりも、形や動きに目を奪われやすくなる習性を持っており、静・動のアクションのうまい人ほど、黒のラバージグで良型のサイズを釣っているように思えます。

まとめ
☆黒は魚の目線より上でアピール → 爆発力アリ!
☆黒は魚の目線より下で保護色  → スレ知らず

 じつはあまり言いたくないのですが、これに加えてもうひとつ黒にオイシイ条件があります。それは周囲の光量の変化です。特に朝のように暗い条件から明るくなるにつれ、魚の目は「明順応」という、いわゆる明るさに目を慣らす過程が生じます。ネコの黒目が細くなったりするアレですが、魚の目はネコや人間よりもはるかに時間がかかる仕組みになっています。このとき、じつは一番よく見えているのが黒なのです。逆に暗くなるときは白がよく見えるので、このことを軽く憶えておいてほしいと思います。いつか役に立つかもしれません。



Q:赤いルアーは釣れるのですか?(京都府 ジンジャーさん)

A:釣れたことがない、とのことで信じられないそうです。こういう苦手色は皆さんお持ちと思いますが、赤についてはいろいろな信号を含んでいるので非常に釣りやすいカラーとなります。特にSIN-ZO表層直下リトリーブやアイマコモモなどの赤ルアーに、絡みつくように襲い掛かるバスを狙うシャローの釣りはスリリングで、かなりハマると思います。以下に赤についての要点をあげ、説明してみます。

☆赤は明るい条件に強い
 赤は暗くなると見えにくいので、明るい場所やシャローで使用するのがベストです。2m以浅に特に強いカラーです。

☆赤は脊椎動物の信号
 脊椎動物の血液の色は赤です。これはヘモグロビン、すなわち鉄分の色で、色そのものが「脊椎動物にとって脊椎動物をあらわす色」となるのです。つまり小魚を追っているバスなどに効きやすいカラーとなるわけです。

☆赤は興奮を誘う
 赤の場合、魚は一度反応してしまうと執拗に追い回すことが多くなります。脊椎動物である自分自身を示す色でもあるため、興奮の効果が強くあらわれます。また、ほとんどの脊椎動物は色を見分ける細胞(Corn)の中でも重要な部位で赤を見ているようです。

☆赤は距離感をつかむ
 我々が射撃の的や車のテールランプ、停止信号などに赤を使用しているように、距離感をつかみやすくさせる効果があります。この効果は相当強いようで、個人の実験でも明らかにショートバイトが減少しています。おそらくこの効果から、アメリカのオールドトップウォータープラグにレッドヘッドが定着したのではないかと思います。

☆マゼンタとレッドはビミョーに違うときがある
 マゼンタというのは正確にみると赤紫で、世の中のルアーに「レッド」と銘打たれたルアーには結構存在します。じつはSIN-ZOベイトも「ソリッドレッド」はマゼンタ、「カシスレッド」はレッドです。透過光に対して青みがかかるものがマゼンタですが、これは塗料、染料などの時点でこれをレッドとして扱われているので仕方ないことかもしれません。このマゼンタカラーは、深場で紫が強くなるため実際のレッドより釣る幅が広く、安心して使えるカラーですが、先述の劇的な効果についてはあまり強く出ないことがあります。なお、マゼンタはクリアイエローを重ねることでレッドに近づけることができます。



Q:アワビ貼りで釣果の差は出るの?(神奈川県 K.Yさん)

A:アワビの本当のチカラは『粘膜』というところにあります。つまり、長時間水を吸ってはじめて本体の光がでるので、『コーティングしてはいけない』というのが鉄則です。市販のアワビシートでもかまわないので、貼って継ぎ目だけ補修しておくのが、一番釣れる使い方です。漁師の漁具もバケツにはった水に漬けっぱなしでなければいけないらしく、出して置いておくと怒られることもあるくらい、水分が重要なようです。コーティングしたものもキレイに光るのですが、アワビ本来の効果は減少するので個人的にはおすすめできません。ただ、数投でチェンジする場合など、ローテーションに短時間に組み込む程度の使い方の場合はコーティングしたものの方が、してないものより光が強く出ている場合があるので、水につける時間によって使い分けることも可能です。

☆アワビにはすべての色の効果がある
 昔から言われるのがこの効果。個人的には重視してはいませんが、漁師はこれを重視しているようです。確かに様々な色に光りますが、オールラウンドに対応する、という部分からこの考えが生まれたのではないか、と考えることもできます。

☆光を滲ませるため、暗い条件でも一番強い
 深場や真っ暗な中で釣獲数が多いのはやはり貝貼りです。光をそのまま返すのではなく、全体に滲ませて発光するように柔らかく反射することで常に自然なアピールができていると考えられます。

☆追い食いが多いのでテールフックに注意を払う
 エサに見えるアヤシイものは後方から尻ビレを攻撃して確認する、というクセがある魚が多いので、テールフックにかかる魚が増えてきます。このときテールフックだけでもケプラーのシングルフックなどうまく利用すれば、掛かりやすくなってくるルアーも多いのでぜひ試してみて下さい。


◎余談編
 どうしても気にされている方が多いらしい、ワタシ個人の活動についての質問。心配かけてすいません。

Q:車で生活しているってホントですか?(東京都・M.Oさん)

A:家庭の事情(?)で悲しいことに、かなりの時間を車中で過ごしています。普段は釣りをしています。もちろん実家にも帰りますが、この2月は東京から帰るお金がなくなり、しばらくバスワールドの編集部よりいただいたカップ麺でしのいだりしていました。でも家を借りるより安いのでこれでいいです。4月からはカンボジアでもっと安く切り抜ける予定です。



Q:バイオテレメトリーって何ですか?(フィッシングショーで多かった質問)

A:生物遠隔測定という幅広い分野を指しますが、僕がやっていたのは魚にピンガー、データロガーという乾電池ほどの機械を魚に取り付け、心拍数、遊泳速度、加速度、水圧、水温などを測定して魚の行動性を調べる、という研究でした。もちろん研究より釣りの方が大事なのでそれなりのことしかしていません。他にも回流水槽などいろいろな研究設備があって、全部夜中は僕の遊び道具…いや、研究しやすい環境です。



Q:バスでよく使うプラグはどれですか?(フィッシングショーで多かった質問)

A:ビッグバド、ヤーガラポップ、SIN-ZOベイト以外では?とよく聞かれるので、最近の異常にお気に入りルアーをひとつ。それはアイマサスケSF。理由はなぜかバスばかり釣れるから。シーバスルアーですが、なぜかシーバスのテストでも40upのバス連発で、テストになりませんでした。それを逆手にとってバス釣りの方でパイロットルアー的に、どこでもこのミノーを持っていって投げまくってます。バス雑誌にはあまり見られないと思うのでシークレットウエポンにどうぞ。(シンキングも出ますがこちらは無事シーバスがよく釣れました。)


小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。もうすぐ春かもしれないが、まだまだ寒さの犠牲になるかも知れないので要注目。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり街路樹のように生かされている。SIN-ZOベイト、TAN-NORジグ他を開発。

2017年1月18日水曜日

群れの話(2002年2月BW誌)

群れの話です。2月に書いて2月末に4月号として出てます。ややこしいですが(笑)。
この手の話は何度も書いてますが、イラストは当時の自作です。これをイラストレーターさんに描き直してもらって、本になる、という叩き台。したがって、この先他の記事を投稿する際に何度も見かけると思います。写真はまだフィルムカメラの時代なので、面倒すぎて掲載は控えてます。
話としては、小難しい専門用語を解説するような、突っ込んだ書き方にしてみよう、ということになったため、こうしてみました。すると、どうも読者のテイストに合わないという苦情(笑)が入って、次回以降がスタイルごと書き直しになり、いきなりキャッチーな質問コーナーに急遽切り替わるという黒歴史があります。当時の70オーバーの狙い方のキモが書いてあったのに、当時はトーナメント全盛でビッグベイトも使う人少なかったし、ビッグワンオンリーに興味ある人もあまりいなかったのです。人口的には今と真逆ですね。

(以下↓原文)



Academic LAKE Vol.5

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◎群れの法則

 スクールバス。われわれアングラーがよく耳にする言葉だが、これは群れているバスのことを指している。しかし、魚の群れをすべてスクールと言うわけではない。ましてやその群れの形成に関して、由来が全く異なるものであれば釣果に響くことにもなってしまう。
 前回まででもちょっと恐ろしい内容であったが、さして苦情が出なかったので、今回も挑戦。いままでタブーのように語られることのなかったバスの集団社会へのアプローチを試みた。『群れ』に関する基本的な知識や、群れを利用した釣法までを紹介していきたいと思う。




◇群れの形成

●群れの形態
 魚の群れはその密度、方向性から4段階に分けられる(C.M.Jr.Breder/1965)。


★solitary:単体でいる魚、佇む魚。
★aggregation:漠然とした魚群。
★school:整然とした魚群、同サイズによる一定間隔で形成、同方向を同速度で進行など、統一された指向性を持つ。
★pod:密集。体が触れるほどに近接したものを指す場合が多い。
 バスの場合、上記のタイプのなかでもpod以外のすべてがあり得る。スクールバスといえるのはほとんどの場合幼魚期〜若魚期の同サイズで群れている状態だ。


●群れの定義
 動物の群れとは生物学的に『社会性のある集まり』と定義されている。こんなことを書いても面白く読んではもらえないとわかってはいるが、あえて読んでいただきたい。実は釣り、ことルアーに関しては、この定義こそがとても重要な情報なのである。事実、これを知っている人にしか釣れない魚がいるのだ。
 バスの群れは様々な要因で形成される。ひとつは一生、あるいはある時期だけ集団で生活する習性や親が子を守る期間内の集団などの必然性に由来する魚群。もひとつは一定のエリアに産卵巣を形成するために集まる造巣性、水温やウイード、シェードなどの適合環境への誘引による集団、走流性などの性質による集団、小魚を捕食するための不連続に形成される集団などの偶発的要因による魚群。
 A.E.Parr(1927年)の古い文献によれば、前者のような生来の魚群を『恒常的魚群』と呼び、いかなる環境条件の中でも安定していると定義付けている。また後者の魚群を『偶発的魚群』とし、環境要因の変化によって集合、離散が容易に起きうるとしている。これはもちろん水質悪化や日照条件の変化などもふくまれるが、釣り人という存在に起因するストレスも考えられる。つまり後者の場合、ひょっとすればアングラーの腕次第で群れを離散させてしまうことも考えられるのだ。
 恐ろしいことに、これらの集団は魚のことを知らない人から見ればどれも同じような群れに見えるかもしれない。しかしながら群れの原因をひも解いてみれば釣れる魚、釣れない魚もあっさり判明し、群れの習性を利用すれば、釣れない魚を釣るというオイシイことも可能になってくると考えられる。

●社会の形成
 群れには社会性があると述べたが、この話をバスの集団索餌という行動に絞って考えてみよう。バスのような生きたエサを追う魚は、この「社会性」によって群れの存続を制御していると考えられる。例えば、エビというエサがメインだった群れが季節変化や水質変化、水温変化などにより激減したとすれば、おのずとその群れは絶滅の危機に瀕してしまう。エビを食う群れはエビ以外の餌に簡単にはシフトできないのである。なぜか。現代の日本人に『食用イモ虫を食え』と言っていることと同じなのだ。これこそが群れの社会性である。
 「食べて無害のイモ虫を人間という動物が食べる」この行為は非常に簡単なはずだ。しかし、その文化も過去の事例もなければ、このイモ虫に手出しをする人はごく少数に限られてしまう。この「手出しする人」を私は『チャレンジャー』という名称で呼んでいる。チャレンジャーは、死ぬかも知れないというリスクを負いつつも、初めに食する好奇心を持っているために常に他人の支持を得ることになる。いわゆる『ファッションリーダー』と呼ばれる存在だ。
 話をバスに戻すと、バスは新しいエサを食べてみなければ生きていけない。このために、群れの中には自然に『チャレンジャー』があらわれる。初めて食う餌を、メインのベイトに据えることができるのか、やはり大衆は引っ込み思案気味に付いていくことになる。こうして数カ月のあいだに、チャレンジャーは、自然と群れを率いるリーダー格という存在になっている。こうしてバスの社会が形成されていくのだ。

●チャレンジャーの引き起こす現象
 ルアーフィッシングにおいて、チャレンジャーがバスの群れに引き起こす現象を述べてみよう。
★リリースしたら釣れなくなった
 見えバスがたくさんいて、一匹釣るときは大勢が反応したのに、その魚をリリースしたら全員が消えた、もしくは釣れなくなることが多い。この場合釣った魚がチャレンジャーであった可能性が高い。人一倍(魚一倍!?)注目を浴びる魚なので、傷付いて帰ったり、遠くへ逃げたりしたことで、他の魚も警戒しはじめるのだ。また、傷付いた個体は群れへの信号として、警戒音や恐怖物質となるアミノ酸を出すことが非常に多い。これも群れの存続に関わる機能で、淡水魚の場合、傷付いた魚には近寄らなくなったりする。
★大きい魚から釣れる
 連発するときに、大きい魚から釣れてくることがある。これは好奇心の強い個体から順に釣れていることが考えられる。2尾めあたりから気付けば、ライブウェルなどを利用してリリースを止めることで連発を持続しやすくできる。
★釣った魚に付いてくる
 スモールマウスバスやフロリダバスなどの回遊色の強い魚に見られる現象だが、釣れている魚にべったりと付いてくる魚がいる。付いてくる個体が極端に大きい場合はエサとして見ているようだが、同サイズの場合はチャレンジャーに抜け駆けされた準チャレンジャーである場合(または逆)が多い。一般大衆はチャレンジャーがリリースで帰って来なければ次のキャストで釣れる。また、話は変わるがこれらの種類は「成群性が強い=回遊性が強い」という法則にあてはまっているのでこちらにも注目したい。



◇池原のフロリダバスの例
 じつは私がトップで釣っている秋の池原のフロリダバスというのも、この社会性を利用した釣り方が絡んでいる。過去にさんざん各誌に書いたことだが、今回こそ理解してもらえそうなので、少し紹介したい。

●集団回遊を行う
 フロリダバスは、これまでのテレメトリーによる追跡研究からノーザンラージマウスバスよりも一日当たりの移動距離が長いことがわかった。私は、この点に注目してフロリダバスが小魚をメインに追っているのではないかと推測した。胃内容物の調査から、小魚の割合がエビに勝るのはその年の9月末〜11月であることをつきとめ、心拍数が著しく上昇する時間が早朝であること、その索餌形態が『不連続な統制の緩い群れ』であることに注目した。
 この『群れ』は普段の昼間はさらに理解不能な回遊(あまり捕食なし)を見せるが、早朝だけは岸に沿って小ブナなどのコイ科の稚魚を捕食して水面直下を回遊していた。驚くことに、その群れを形成する個体のサイズがそろっていなかった。はじめに40cm程のバスの群れ、次に65〜70オーバーの群れ、続いて50cmクラス、ふたたび40cmクラス…ダラダラ続いて最後に20〜35cm程の小さいバスが岬、ワンドなどの要所要所に残って、食べたりないのか索餌を続ける、という形に見えた。1997〜1999年と観察を続けていたので、どうやらそれが群れの社会性というパターンなのではないかと仮説を立てた。

●わざと左に配置された後輩
 この不連続でダラダラと続く群れにもやはりチャレンジャーがいる。通常の考え方だと最も大きなサイズの70オーバーあたりのバスがチャレンジャーとなるが、この場合サイズがケタ違いに大きい。どうやら用心深いことは間違いなかったので、初めに来る40~50cmクラスに疑いを持った。1997〜98年と、このバスが先に食って来たため、他の魚が釣れなかったのだ。そこで、小型のライブウェルを持ち込み、最初の魚をキープしたり、初めにバスが回ってくる岸の左側に後輩を立たせ、先に40cm、50cmで遊んでもらうことにした。これらの努力(すべて他人の努力)の甲斐あって、数々のビッグバスを手にさせてもらったのだ。あのとき左側に立たされた覚えのある後輩様、ごめんなさい。私の道楽のための犠牲でした。

小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。現在冬につき、寒さの犠牲になるかも知れないので要注目。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり街路樹のように生かされている。SIN-ZOベイト、TAN-NORジグを開発。

2017年1月16日月曜日

速度、アプローチの法則(2002年1月BW誌)

ラストにすごいプロフィールを発見(笑)。アウト→イン、イン→アウトの話とリトリーブについてが書かれてます。
この記事は95年春ごろに骨子を作ったリトリーブのスピード展開論を、なるべく伝わりやすく考えたものだったと記憶しています。肉付けには当時自分の母校にしかなかった回流水槽の使用許可をいただいて、懸命に測定しました。あの情熱は今どこへ…。結果、恐ろしいことが判明し、THE KNIFEという極めて使いにくい(笑)ルアーが生まれたのです。
 思うに、釣りの研究所とか施設なんてものはどんなにすごいものがあっても、人間の目からものを考えていては一生かかっても魚の視点にはたどり着けないのです。泳いで潜って測って考えて、帰ってからその数字を再現できたことで、答えに少し近づけた、そんな程度です。この原稿の示すところは、偉そうに書いてますが、その時の情熱程度のものなのかもしれませんね。

(以下↓原稿校正前のまま)



Academic LAKE Vol.4

◆総合的な知識編その2
 実際フィールドに立っていろいろ考えることほど、釣りに役に立つことはない。しかし、魚についての基礎的な知識や総合的な知識を身につけておくと、フィールド上で物事を考えるのにも非常に効率がよい。
 今回は前回の流れを受け、ルアーそのものに命を吹き込むときに私が考えていることを紹介したい。

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◎リトリーブと捕食の関係
 ルアーのスピードは、このリトリーブスピードでいいのだろうか、と不安になったことは誰しもあると思う。果たして、ルアーがよく泳ぐ速度が正解なのだろうか。
 また、ルアーを巻いてくるとき、魚はどんなきっかけで、どんなタイミングでルアーを襲うのだろうか。巻いてきたときに追い掛けてきて食う個体と、一瞬の乱れ(ポーズも含む)や着水直後のワンアクションに来る個体。どちらの魚が大きいのだろうか。
 例えば寒い時期にはバスでも盛んなジギング。この単純なルアー、巻いて上昇しているときに食うのか、テンションが緩み、落ちてきたときに食うのか。ルアーマンの多くが勘違いしている部分だ。

 今回はこれらの現象について考えてみる。





◇ルアースピードの法則
 ルアーはそのひとつひとつに、本来泳ぎやすい速度というものを持っている。これは人間が設定したもので、あくまでルアーとして動く範囲のレギュラースピードだ。しかし、このスピードに魚が追ってくることはあっても最終的なバイトに持ち込める瞬間や大型の魚が食う瞬間というのは「レギュラーがイレギュラーに変わる瞬間」が圧倒的に多い。レギュラーの中に潜むイレギュラーは、それをエサとして捉えてしまう魚もいるほどのパワーを秘めているのだ。この予測不能ともいえる部分までも、アクションとして使いこなしてこそ、ひとつのルアーをマスターしたといえるのではないだろうか。

●めっちゃ便利な低速リトリーブ
 バスやトラウトでは最も重要で、マスターしやすいのがこの低速リトリーブだ。どれくらいのスピードかというと、「ルアー本来の動き(腰振り、ブレードのロールなど)がなくなるかなくならないかの速度」だ。そのルアーが持つ浮力や重力が、そのルアーを一定層に留めないように働いてしまう。このギリギリの部分にレギュラーとイレギュラーの境界線が存在する。このスピードだと魚がいつ食ってきてもおかしくない。またこのスピードは「釣れない病」疾病時にも有効で、いつもより極力我慢して遅くルアーを巻いてみることによって、簡単に釣れることへつながる。
 もちろんルアー一つ一つ動きが違うので、目の前でルアーを泳がせて動きを見て、このスピードをマスターしてほしい。

●高速リトリーブ
 例えばミノーを高速に巻いてくると急に横を向いて飛び出したりする。もちろんここまで高速なのはマズイが、ギリギリ飛び出さないような速度を保つと、わずかな動きの乱れがルアーに生じる。この動きは海の青物やメッキなどを釣るうえで非常に有効なものだが、これを着水直後のスピナーベイトで応用するとどうなるだろうか。これがバジングである。分かっていただけたかも知れないが、高速というのは何もメッタヤタラに巻いてくるというのではなく、速すぎてそのルアーがバランスを崩す直前のスピードをキープすることなのである。本当はこれをSIN-ZOベイト/心臓リグのただ巻きで水面直下を泳がせると簡単に魚が釣れるのだが、宣伝になりかねないので今回も触れないでおく。

●レギュラーリトリーブ
 さて、あまりイレギュラーについて書くと、ルアーを作っている人に怒られそうなのでここでレギュラースピードについて触れたいと思う。前回も述べたように、魚にとってほとんどのルアーはルアーでしかないようだ。エサとルアーで心拍データにどのように違いが出るかは(面白すぎるので)調べた者の間で秘密にしておくとして、ルアーを襲うのはほとんど攻撃に近い。このためレギュラーリトリーブでレギュラーサイズのルアーを巻くと25〜50cmのレギュラーサイズのバスが掛かる。群れでいうと一番好奇心の強い個体から食ってくる。目的がトーナメントであればこれでよい話だが、あわよくば60オーバーのバスを釣りたい人間は、このレギュラーの動きの中にさえも、イレギュラーが潜むことを知るべきだと思う。それが「環境」のなせるワザだ。例えばクランクベイトをレギュラースピードでグリグリ巻いていて、ボトムという「環境」に到達してしまったら何が起きるだろうか。これがボトムノッキングとなり、反射的に魚が攻撃してしまうことが多いのは周知の事実だ。また、流れの中でミノーを巻いていて急に岩影のタルミに差しかかったらルアーはどうなるだろうか。一時的に流れがなくなり、イレギュラーな動きが生じる。これもよく食われる瞬間だ。他にも水の温度差、濃度差による水塊の境界線(潮目)を横切ったり、ゴミやウイードが外れたりする瞬間が、レギュラースピードの中にいくらでもある。取材で僕が見てきた人間の中でも、ソルト、トラウト、バスにかかわらず、これを食わせるタイミングとして使いこなせる人たちが、常に大きい魚に近い人間だった。



◇習性が違う魚に対するアプローチ
 エサを追って回遊する魚とストラクチャーに居着く魚では、少し習性が変わってくることや、それに対する信号の違いも前号で述べた。ではこれらの魚に対するアプローチ、リトリーブはどう変わってくるのだろうか。

●アウト→イン釣法(アウト→イン→アウト釣法)
 回遊するタイプの魚や、小魚を捕食している魚は「エサが来たら追って捕食」という動きになる。したがってこのような魚の、食欲に訴えるルアーの動きは、「魚のフィーディングゾーン内に一度ルアーが入ってから逃げる」ようなものを演出するほうが効果が高い。例えばシェードや流れ込みなどポイントとして目に見えているものや、水中のストラクチャーなどから、目に見えないような水のヨレなどにいたるまで、「ここで食う」というような場所がある。もしくは魚一匹一匹が、それぞれ狙いを定めて攻撃しやすいエリアがある。そういった場所の中へ外から泳がせてくる時にヒットを誘う、というのが小魚の動きなのだ。
 キャストはヒットゾーン、またはターゲットとなる魚のやや向こう側を狙うとよい。また、泳いでくる小魚を待ちかまえる魚は下から、回遊の魚は真横から獲物を襲うので頭や腹を目標にしている。従ってこの狙い方では、ほとんど腹側のフックに掛かっているものが多いのも特徴。魚がエサを食べたい時間に効率良く使える釣り方である。

●イン→アウト釣法
 居着くタイプの魚が好む動きは、ラバージグのようにバーチカルなものや、ブルブルとしたウォブリングなど無脊椎動物の信号を発するアクションが多い。ここでの無脊椎動物とは、エビ、カニ、昆虫などを指すが、これらは通常ストラクチャーやカバーそのものに棲み、そこからモソモソ出てきたり、オーバーハングした木から真下に落ちて流れていったりと、「魚のフィーディングゾーンの中から外へ出る」傾向が強い。魚はそういった瞬間に追いかけるように食う場合が多いのだ。チョコマカとピンスポット狙いのものや動きがブルブルと大きく、移動距離が少ないものが多いのは、この逃げる動作を長くとるためと考えるとアクションさせやすい。
 キャストそのものはシェードやストラクチャー付近を直撃、もしくはどこかに乗せてポチャリと落とすなど、着水からダイレクトに誘うことが重要で、アクションさせながらその場を離れていこうとするときにヒットする。また、通常無脊椎動物は魚のように素早く自分の判断で逃げる方法をあまり持たない。獲物が「流れ」や「遊泳」などなにがしかのスピードを持っている時には、そのスピードにあわせてゆっくり追いかけて食う。このためこの釣り方では、リアフックに掛かるものが多いのだ。




◇応用編
 ミノーやバイブレーションなどについてはこれまでの説明で分かっていただけたと思うが、水面や、縦の釣りではどうなのだろうか。ジギングを例に説明したい。

●ジギング
 横の釣りをしてきた人間に、メタルジグのジギングはわかりにくいようにおもわれる。ジグは真下にストンと落ちるものではない。また真上にまっすぐ上げるものでもない。これは急なテンションの変化に反応して、横に移動するルアーなのだ。つまりペンシルベイトの首振り。それが理解できればとりあえず簡単に釣ることができる。ジャークにせよフォールにせよ、『急テンション+重さに応じた余韻』が大きく横へ、またはスパイラルさせる本来のキモだ。
 では魚はいったいどこで食うのか、フックを外したジグを用いて様々なシチュエーションで実験してみた。すると、巨大水槽、水中撮影ともに面白いことが分かってきた。巻いているときに食うのはその場にいる中でも小さい魚。大型はフォールの瞬間に落ちる先(もちろん真下ではない)に、いつのまにか居るのだ。もちろん群れの中の社会性も関係してくるが、この話はいづれ述べるのでご覧いただきたい。ちなみに群れは大型の魚が下の層に、小型の魚が上の層になる場合がほとんどである。
 ともかくこの出来事に関しては2つのパターンが考えられる。ひとつはエネルギー効率の問題。
 小さい個体は追い回すエネルギーが、餌のエネルギーで十分に還元されるため、餌を追い回して捕食できる。このため魚を食うタイプの習性になっており、ジグのアクションでスイッチを入れれば、追い回させる釣りが可能。これに対して大型は動くことによって消費されるエネルギーが莫大であるため、捕食に失敗するリスクのある小さな餌を追い回すことができない。このため最も効率のよい位置に移動するだけで確実に捕食できる方がよいのだと考えられる。このため自動的にアウト→イン釣法になってしまうのだ。
 もう一つはレギュラー/イレギュラーの違い。上昇するルアーは一様で、魚にとってはエサではなく、攻撃の対象になっている可能性が高い。このため元気な小型の魚が攻撃していくことになる。これに対し急激にダートしながら猛スピードで下降するルアーというのは、全く予測不能のイレギュラーな存在となりエサのように捕食の対象となるスイッチが入ってしまうのだ。もちろん小型の魚もこれに反応するが、常に下の層で大型の魚が牽制しているためバイトまで至ることは少ない。海の外洋でもジギングには同じ現象が見られるので、この釣りをマスターしておくと楽しいと思う。



小川健太郎/24才。今月から住所不定・無職・貯金0のグランドスラム達成。水産学科で魚類のバイオテレメトリーを専攻。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなす「釣り場型ひきこもり」。色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり生かされている。SIN-ZOベイトを開発。

2017年1月13日金曜日

日周性、信号(2001年12月BW誌)

2002年2月号に掲載された原稿です。

Academic LAKE Vol.3


◆総合的な知識編
 実際フィールドに立っていろいろ考えることほど、釣りに役に立つことはない。しかし、魚についての基礎的な知識や総合的な知識を身につけておくと、フィールド上で物事を考えるのにも非常に効率がよい。
 今回はルアーフィッシングによるゲームを組み立てる上でも、大切な要素となる様々な事象を考えてみることにしよう。

今月のメニュー

◎マヅメの原理を考える
朝夕に起こる、マヅメとはどういう仕組みになっているのだろうか。

◎日周性を見直す
夜行性、昼行性の常識を撃ち破ることで、シーズンパターンも再考できてしまう。

◎バスから見たルアーとは
ルアーについての常識を再検討する。果たしてバスは、ルアー全てをエサと思って食うのだろうか。

と、後半などほとんど今まで誰も触れたことのない内容で、猛反発を喰らうこと必至かもしれないが、今の業界で信仰されている魚の生態に、あえて一石を投じさせていただきたい。




◎マヅメの原理
 「釣りやすいのは朝マヅメ、夕マヅメ」と、昔からいわれるこのマヅメだが、実はその釣りやすさには簡単な仕組みがある。朝夕に変化するものといえばなんだろうか。まず『温度』、そして『日光の照射量』である。このうち、重要なのは日光のほうなのである。マヅメ、それは日光の照射量の急激な変化にともなう、生命活動の変化なのだ。

●変化はプランクトンから
 光量による生命活動の変化は、まず植物プランクトンに起こる。朝、光量が増すにつれて、植物プランクトンは夜間行っていた呼吸から、酸素を生産する光合成という動作を行うため、その停留層を変化させる。そのシステムはここでは省略するが、日光の当たりやすい上層部へと浮上する。これにともない、植物プランクトンを捕食する動物プランクトンが動くため、それらを捕食するエビや小魚も無防備に捕食行動を開始し、一時的に水中が賑やかになるのだ。夕マヅメも同様に、植物プランクトンの沈降など、停留層の変化にともない、動物プランクトンが動いてしまうため、これらを捕食するエビや小魚が無防備に動くことになる。バスなどの肉食魚を釣る場合、朝夕いづれの場合もキーは動物プランクトンやエビ、小魚が大きく無防備に動くことにあるのだが、植物プランクトンがその行動を誘発する原因になっているということを覚えていただきたい。

●魚の視界も変化する。
 じつは、釣りやすい理由がもう一つある。魚の目は人間に比べて、光の変化に対する順応に非常に時間が掛かる。(明るくなるに条件への適応を明順応、暗くなるにつれて光の感度をあげていくのを暗順応という)この、大きなタイムラグのため、朝は日光の照射量が安定するまで横の光に対してソフトに反射するもの(金、赤、オレンジ)に興味を示しやすい(ピカピカな銀は夜間と同じようにまだ恐怖信号の意味を持っている時間帯だ)。これに対して夕方はこれまで目で糸や仕掛け、ルアーを『見切って』きた魚も、『波(音、動き)』と『化学物質(匂い、味)』でしか周りの世界がわからなくなっている。日没前後の暗い時間帯は、パールホワイト系カラーで動きの強いルアー(大きめのスプーンなど)を魚の目線に持っていくと、捕食しやすいのかよく釣れる。

◎日周性
 簡単にいうと、夜行性、昼行性といったような、魚の一日周期の行動の考え方である。こういうことをハッキリというと一部の学者の方は怒るかもしれないが、『すべての魚が年中夜行性、昼行性のどちらかとは限らない』のだ。スズキの仲間のうち、居着き型のスズキ、そしてラージマウスバスに関しては、特にこういうことがいえる。それは『日照条件の変化にともなう日周行動性の変化』が起きる、ということである。つまり、一年を通じて、夜行性と昼行性がシフトするのである。具体的にいうと、日照時間がイーブンになる春分の日と秋分の日を境に活動性のピークが移り変わっていくということで、春分は朝、夏至は昼、秋分は夕、冬至はなんと夜中という具合に捕食活動のピークがくる、という話である。
 これを例えばこれまでの経験に当てはめていただきたい。ベテランの方ほど夏至の日中などには思い当たるのではないだろうか。よくバス釣りの教本にあるような『冬、バスは寝たようにじっとして…』という表記も、もしかすると本当に休んでいるだけで、(活発ではないにしろ)夜間活動しているかもしれない。
 実際、自然条件下の個人的な実験では、ある程度の群れで育つバスはおおよそ先ほど述べた暴論ともいえるタイムテーブルに近くなるし、単独でいる魚や大型の魚の一部では、全く逆のタイムテーブルになる個体もある。しかしながら、この日照時間の変化が捕食時間の移行へ繋がるということはほぼ間違いないと確信している。
 ※バスの場合、『春の朝』だけははっきりしたデータが出ないのだが、これは産卵活動によるものだと推測している。スズキに関してはおおよそこのタイムテーブル通りであった。

◎バスから見たルアーとは
●ルアーはエサではない
 マッチ・ザ・ベイトという考え方がすべてになってしまう、今のルアー業界はこれまたハッキリ言って迷走していると思う。例えばバスがザリガニを捕食しているときに、「ザリガニのような色」と言われる赤系カラーのクランクベイトを好んで食うだろうか。また食うのならグリーンチャートの同じクランクベイトより、本当にザリガニらしい赤のほうを好んで食うのだろうか。もっといえば、ザリガニそのものを投入すれば必ず食うのだろうか。そのザリガニにまったく似もしないルアーは食わないのだろうか。こう考えてみると、どれも食うし、どれも食わない、という究極の答えになってくる。
 ではカラーも動きもまったく釣果と関係ないのだろうか。それは絶対にない。『関係してくる』と、自信を持って言い切れる。これを言い切るには、姿や動きを似せたルアーで釣るのではなく、すべての肉食魚のなんらかの『反応にある普遍性』を、信号(サインあるいはシグナル)としてとらえることが大前提なのだ。そしてその信号をカラーとして、動きとして、ルアーから発して釣るからこそ、魚がルアーにバイトするのだ。驚くべきことに、じつは、ほとんどのルアーはエサの演出をしてはいない。この『信号』を発しているだけでつれてしまうのである。これは食うときの心拍数を測定すればエサとルアーの違いが簡単にわかるのだが、この話はまたの機会に。

●信号発信機であるルアー
 ルアーというものは、魚の捕食に対する信号を発信している発信機だ。これら信号の中には、『バスが食べているベイトを示す信号』や、『魚種のタイプ(居着き、回遊)によって違う、興奮を誘う信号』、『危険、安心を示す信号』などがある。信号の種類も『波(音、動き)』、『光(シルエット、色彩、反射、透過)』、『化学物質(匂い、味)』という様々な方向から考えることができる。これら信号を重ね合わせて、狙う魚に合った信号、いうなればマッチ・ザ・シグナルを少しでも一般のアングラーにも理解してもらうべきなのである。これが理解できれば他の釣りにもなんなく応用が効き、狙った魚に案外容易に近付けたりするのだ。
 では、信号にはどのようなものがあるのだろうか。これには簡単にチューンしたりできるものと、難しいものがある。簡単なものをあげるならばルアーの音、色、匂いであり、自分でコントロールするのに難しいものはルアーの動き、素材の色(透明度)、味などである。別表に信号の例を挙げてみるので参考にして欲しい。

●反射という言葉
 よく「反射食いってホントにあるの?」と聞かれることがある。僕は「ほとんどが反射です」と答えている。その理由はこうだ。魚がルアーにバイトするまでの順番を考えてみよう。まずバスの場合、本来捕食には聴覚で発見→アプローチ→視覚で認識→嗅覚で確認→攻撃またはバイト→味覚で最終確認→飲み込む、という行程がとられるべきである。べき、という言葉を用いたのは、この行程が大いに省略されている場合がほとんどだからだ。たとえば発見→認知→攻撃など、ルアーによく見られるような『確認抜き』の動作である。これを反射と呼んでいる。われわれ人間が夏、暑さのあまり冷蔵庫を開けて麦茶をとりだして飲み込んだらソウメンの汁だった、というのと同じものだ。つまり、いちいち確認していたらエサが逃げてしまう状況のときや、怒ったときに相手を確認なんてしてられっか、ということなのだ。もちろんニオイによる発見→捕食という場合もあるので確認という作業は「すべての感覚で感知した上での捕食決定を下す動作」と考えていただきたい。そして、これらを総合して考えると、キャスティークやSIN-ZOベイト、大型のベイト(この場合魚)を使ったムーチング(エサ釣り)のように、「食わないがバスがたくさんついてくる」という動作があるものは、すべてエサだと思って確認したがっている、ということが伺える。


図表、イラスト

◆タイムテーブル(●は暗期捕食型◎は明期捕食型、○はその移行時期を示す)

月/ピーク期(本来)の移行。ただしバスの場合、春期は産卵活動によりはっきりしない。
01月●深夜
02月●明け方
03月○日の出(春分)
04月◎早朝
05月◎朝
06月◎正午(夏至)
07月◎昼
08月◎夕方
09月○日没(秋分)
10月●夜
11月●夜中
12月●真夜中(冬至)


◆魚への信号の一例
(バスの場合、回遊はスモールマウスバスやフロリダバスの回遊時などを当てはめてみて下さい。)
・2k〜4kHzのパルス音(音):捕食を示す信号音。バイブレーションに鋭くトウィッチを入れたような音。
・10〜150Hzの持続性低周波(音):魚の遊泳を示す信号音、魚種により異なる。
・ローリング(動き):脊椎動物である魚の動きの信号となっているようだ。回遊系の魚に効く。
・ウォブリング(動き):頭を振るアクションがほとんどで、動きのわりに水を押す力がないため、無脊椎動物である虫の信号となっているようだ。居着きの魚に効く。
・バーチカルアクション(動き):上下運動。無脊椎動物の信号。居着きの魚に効く。
・ダートアクション(動き):水平方向のアクション。脊椎動物の信号。回遊の魚や魚を食べている魚に効く。
・スパイラルジャーク(動き):上昇時は小型の反応、フォール時は比較的大型の反応が得られる。メタルジグでは特に重要。スパイラルは脊椎動物の信号。水平フォールはエビ、魚の両方の信号を兼ねる。
・緑(色):安心色。警戒や緊張を解く信号。無脊椎動物に対して光(透過や反射)として使用すると婚姻の興奮を示す場合もある。
・赤(色):肉食魚自身の信号、および婚姻の信号となり、回遊系でなくとも興奮を示す場合もある。捕食時、自動的に距離をつかむ信号にもなる。
・オレンジ:警戒の信号。ただし小さければ攻撃の対象となる。
・緑の属性(色):虫、エビ、カニ、イカ、タコ、貝など無脊椎動物の信号。淡水と海水の混合、および有機物の混入時には黄緑〜チャート系へシフトする。居着きの魚に効く。
・赤の属性(色):脊椎動物である魚の信号。回遊系の魚に効く。汽水域や有機物混入時など、コーラルピンク(魚肉ソーセージのような色)〜白へシフトする。
・鉄(匂い):脊椎動物の血中成分を示す信号。回遊系の魚に効く。
・銅(匂い):無脊椎動物の血中成分を示す信号。居着きの魚やエビを食う魚に効く。

小川健太郎/24才。大阪府在住、水産学科で漁場学を学ぶ。株式会社フィッシュマン所属。365日連続釣行を2クール、色理論、池原ダムでのヤーガラ、バドなど、ごく一部のマニアの間だけでひっそりと知られる。SIN-ZOベイトを開発。

2017年1月11日水曜日

聴覚・初歩編(2001年11月BW誌)

アカデミックレイクになってからの2回目原稿。心がけたのは、専門用語をいかに減らしてわかりやすくするか、でした。専門用語が好きな人は論文がいいでしょうし、そうした資料はたくさんあります。ここではバスや魚の好きな若い層の人、をターゲットにしていた雑誌ですので、小難しい話のギリギリラインを要求されました。

20021月号掲載(200111月執筆)


魚の耳を知る。

聴覚の話・初歩編


魚がルアーを発見する順番は、まず音、波(最近よく波動と呼ばれている水圧変化のこと)を感知することが第一となる。色、姿の識別、味/匂いの判別はその次、となる場合がほとんどだ。バスはどうやって音を捉えてルアーを発見しているのだろうか。今回はそのメカニズムについて考える。

魚になって感じてみよう
 聴覚の話しをする前に、魚の感覚と人間の感覚の違いを先に説明することにしよう。魚は人間と違って水の中という、密度が833倍も高い空間の中にいる。この水という存在が感覚器官の大きな違いになっているのだ。わかりやすく考えると、人間の五感というものがある。これは触覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚という感覚で、この5つをそれぞれの器官で感知することによって身を守ったり、物を食べたり、と生活できるというわけだ。魚は水の存在のために、これらの感覚が3つしかない。というより、聴覚と触覚という『波(音から衝撃まで)の感知』、味覚と嗅覚という『化学物質の判別』をそれぞれ同じ器官で、あるいはそれぞれを同様の信号として感じ取っているのだ。
 『音=波』これを詳しく説明すると、よくルアーが「水を押す」といわれるようなウマイ表現があるが、この「水押し」は「波」である。この波を魚はかなり離れたところから感知することができる。また、手で魚をつかもうと近付けると、目隠しした魚でさえ簡単に逃げてしまう。これも波を側線といわれる器官で感知したものだ。人間でいえばどちらの場合も触覚に相当する感覚のはたらきだ。逆に「音」は人間でいう聴覚という感覚になるが、これも水中を伝わる『密度(周波数)の非常に高い波』であり、これを側線で感知するのはご存じのとおりだと思う。今回はこの、『音』について考えてみたい。水押しや波動の話はまたいずれ機会があれば。

音を聴くメカニズム
 側線は魚の体の横に点線のように伸びているのを見ることができる、あの、線のことである(図参照)。側線は一個一個を調べると袋状の穴になっており、袋の底に感覚毛が生えている。この穴の中に水の波が入ることによってこの毛が揺れ、水流や音を感知する。この他にも鼻のようなクボミや目の周りにも側線器官を持っている。また、水中を伝わる音はウキブクロ(鰾)の中で共振させ、内耳、そして脳へと伝えられる。こう行った仕組みを総合すると、バスは水平方向の真横からの音に対して特に敏感で、また、音源をハッキリつかみやすいのは前方である、と考えられる。つまりは人間と同じような感覚なのではないだろうか。

バスに聞こえる音
 通常、バスフィッシングでは、音を人間の耳で判断する場合が多い。工場での製作の段階でも同じで、せいぜい水槽の中で魚が反応するかどうかの実験しか行えないのが実情で、店頭で一般の人が「これは何Hzくらいの音だ。もうちょっと低いのがいいなあ」などと言っているとハッキリいって周りに人がいなくなるくらいアブナイヤツ扱いされてしまう(実話)。しかしながら、魚は音と波でルアーを発見するのだ。最低限の知識くらいは、こだわらないわけにはいくまい。
 バスに聞こえやすい音というのは個体差があるものの、通常3400Hzあたりを中心に、50Hz1500Hzあたりまでの周波数帯である。人間が20kHzまで聴こえることを考えるとかなり狭い範囲ということになるが、空気中と違い、水中ではこのくらいの音を感知することで十分生活できるのであろう。これ以上や以下の周波数の音は感じ取ることはできるが、判別などは難しいようで、脳波や心拍数に明確な影響はあらわれない。そのうえ、高周波が連続して発されると不快感を感じる個体も多い。
 ルアーの発する音は先述の魚の可聴周波数帯よりやや高めに作られていることが多い。しかし、やや高いシャラシャラした音が、連続して発されるルアーでは、魚はスレやすい。これは、あまり食性と関係ない音、痛い目にあった記憶、または群れのウチの最初に釣られるリーダー的存在(チャレンジャー)が危険信号を発したことなどへ結び付けられ、『学習』されてしまうのだ。これに対して低いゴトゴト系の音のするルアーだと常に生活に必要な音であるため、痛い記憶と結び付けられにくい(もちろん結び付けて学習される可能性は餌よりも大きい)。だいたいゴトゴト系のルアーで200600Hz、シャラシャラしたものは8002kHzとなる。

水中の音
 水中では音は非常に伝わりやすく、秒速約1500mと、なんと空気中(344m/s)の4.5倍の速さである。しかも、陸上では考えられないほど遠くまで伝わり、音も小さくなりにくい。このため、水中では流れ込みの音など、絶えず離れた場所の音が入り乱れていることになる。湖ならまだしも、川などは雑音のまっただ中となる。ただ、こういった石や水の音は低いのでだいたい100Hz以内におさまっている。この雑音を『環境雑音』と呼び、この雑音の中で同様の周波数の音を発しても魚にはマスクされていて聴き取れない。これを『マスキング』と呼んでいる。つまり川など環境雑音の多い場所での使用ルアーはある程度高い音のほうがアピールが強い、ということが言えるわけである。
 また、ブルーギルやニジマスなどの実験で、魚の大小に関わらず、遊泳時にだいたい25100Hz前後の周波数帯の音を発している。湖を回遊して小魚を探すタイプの魚はこういう音をたよりに餌を探すことも多いようだ。
 このほかには肉食の魚が水中で餌を吸い込むときには24kHzの「ジッ」「チャッ」という音が見られる。これらの音は、魚にとっては判別はできない範疇だと考えられるが、非常に短いパルス音であるため不快感は与えられない。このためこういう音が信号になって捕食が始まる、ということも考えられる。非常に高いシャラシャラ系の音のするルアーを、ほんのチョコッと鋭くトウィッチさせるような音だ。

でかいバスに効く音
 これまで自分なりに研究して苦労したことがある。それは個体差だ。人間にも当然見られるのだが、バスのような大型の肉食魚の場合は、大きくなればなるほど個体差が強く出てくるようで、一概にこの音がどう、という内容を断言できなくなってしまうのだ。自分が総合的に感じているのはその場で釣れているルアーより若干低い周波数をもつルアーが「そこにいる、でかいバスが食う音」を発しているように思える。このことについての詳しい話はまたの機会にしてみたい。とにかくバイブレーションやノイジーで中型が爆釣した時に、これらのサイズにかまうのが時間の無駄である、と感じられる方だけ試していただきたい。数はダントツ落ちるがバスのサイズがかなり上がるはずである。同じルアーで少し低い音のするルアーがあれば


小川健太郎/24才。大阪府在住、水産学科で漁場学を学ぶ。株式会社フィッシュマン所属。365日連続釣行を2クール、色理論、池原ダムでのヤーガラ、バドなど、ごく一部のマニアの間だけでひっそりと知られる。SIN-ZOベイトを開発。

キャプション

実験用のバス。バイオテレメトリーの手法を用いて、心拍数などを遠隔で測定できる小型発信機をつけている。

側線器官の略図。袋状になっていて、感覚毛が周波による水圧の変化を感知し、この信号が神経に伝達される。

2017年1月9日月曜日

ウィードの話(2001年10月BW誌)

 2001年の原稿です。最初は琵琶湖ウィード図鑑としての原稿でしたが、なぜか連載テイストになっていて、アカデミックレイクというタイトル付けられてました。当時は水草の情報が少なくて、大学に戻って資料を寄せることができる人に頼るしかなかったのです。
 海外に行った際もウィードの特性を利用してその場所の水流や水温を割り出すのに、当時の知識は活かされています。なぜなら、誰かが逃した魚や水のせいか、世界中の温帯の水中の植生は結構同じような構成だからです。


バスワールド12月号原稿 小川健太郎

琵琶湖とウィード(アカデミックレイク 1)

プロフィール
小川健太郎:水産学科で漁場学を学ぶ。株式会社フィッシュマン所属。365日連続釣行を2クール、色理論、池原ダムでのトップで60〜70アップを狙って釣る男として、ごく一部のマニアの間だけでひっそりと知られる。SIN-ZOベイトを開発。通称オガケン。

 ウイードの役割を簡単に説明するなら、魚にとってウイードは酸素の提供、水質、温度変化の緩衝をしてくれる存在である。小さな魚やエビは産卵から成長までこれら植物を利用し、バスなどの肉食魚もウイードに依存することによって棲みやすい環境を得ることができる。今回は琵琶湖に生えるウイードを中心にその狙い方のコツを考えてみよう。

◇ウイードが魚を教えてくれる
 ウイード。我々釣り人は漠然と水の中の水草をこう呼んでいる。そして、これらの中にはいくつもの種類があるにもかかわらず、その生態の違いに目を向ける人は少ない。「●●のウイードエリアで釣れた」という情報が漠然と入っても、何という種類の水草が生えているかまで気にする人はほとんどイナイ。しかし、実はウイードにはその種類に応じた育成環境というものがある。さらに、根を張る植物には移動手段がないために、そこから逃げない。ということは、「ココはいつも冷たい水が湧いている」などのように、じつは普遍的なピンスポット情報をそこに提示してくれている、というありがたい存在なのだ。これはもったいないことではないだろうか。あなたのルアーが拾ってきたその水草には、実は釣りに役立つ情報が詰まっているのかもしれない。

◎柔らかいウイード、硬いウイード
 以前、ウイードを調べていて、琵琶湖のプロガイドをされている藤木プロに話を聞いたことがある。話の内容は、「度重なる浚渫の濁りの影響で、pHが急変したり、日光が遮断されて、釣りやすい硬いウイード(カナダモ、エビモなど)が生長する前に、伸長効率が早い柔らかいウイード(フサモ、カボンバなど)が伸長してしまう。柔らかいやつは硬いウイードに被さってしまって、ラインやルアーに絡みやすい。このため例年釣れてた釣り場が釣りにくくなる。特にpHの急変や濁りに対してよく生えてくるのがトロロといわれるアオミドロで、これがあると特に魚がつきにくく、ルアーに絡むので釣りにならない。」といった内容であった。このとき釣れるエリアは浚渫の濁りを受けにくいエリアとなった。釣りをしながらウイードを見ているとこういう浚渫などのおよぼす自然の変化が見えてくるのだ。
◎小さな違いで釣果が変わる
 ウイードは、その種類の特徴を知っていることでその場の細かい情況を把握することができる。たとえば、硬くて釣りやすいカナダモの仲間で、よく見られるクロモ、コカナダモ、オオカナダモという種類があるが、一見見た目が同じこの3種の違いがわかってしまうと冬や夏、重要な手がかりをつかめることがある。例えばコカナダモは低水温に適しているため、夏でも低い温度のエリアによく生えている。つまりその付近に湧水や伏流水の可能性などを見い出すことができるのだ。そしてオオカナダモとコカナダモは常緑。つまりこれらのウイードを夏に見つけたエリアでは冬もウイードとして魚をストックしている可能性がある、という読みができてしまうのだ。
◎ウイードの密生を見つける
 単純に釣れたウイードを見てその種類がわかったところで、適水温などを決めつけるのは大変危険である。たまたま掛かったコカナダモを見て「ココは湧水が…」と粘っても、実際水の底にはほんの少しパラパラと生えているだけで湧水などなかったりするのだ。ある程度ビッシリ生えていないようではそこの環境を推測することはできない。どのようなことを手がかりに密生具合を突き止めればよいのだろう。茎のあるウイードならだいたいの想像ができるのでぜひ頭に入れておくとよいと思う。まず、ルアーがただ拾った浮遊ウイードは考えないほうがよい。根掛かりから上がってきたときに付いているものが信用できるウイードとなる。つぎに、このウイードの茎を見る。茎につく葉のパターンや茎の太さで密生しているのかどうかがわかる。日光や土地の環境もわかる場合があるので覚えておくと便利かもしれない。
●葉の輪生するタームが長い(葉があまりついていない):葉が少なく貧弱に見えるのはやはり密生の可能性が少ない。しかし根のほうが葉が少なく、先端にいくに従ってびっしり生えているものは、背の高い競争群生の場合があり、さらに茎が太い場合はこの可能性が高く、魚が付いていることが期待できる。
●葉の輪生するタームが短い(葉が多くついている):これは一見して元気なウイードだとわかる。葉が多いのは日光を受ける競争をしている証拠。密生している可能性が比較的高く釣果も期待できる。
●茎が太い:土地が豊かな場合と、水の流れの強い場合がある。流れがない場所では湧水の可能性も考えられる。要チェック。
●茎が細い:折れそうな柔らかいものはかなり期待できない。硬いものなら葉の多さを見よう。

◇ウイードは資料が少ない
 さて、役にたつなら水草のミニ図鑑でも買いに行こう、なんて街の書店に出てみると、まず図鑑がないことに気付く。さらに大学の図書館などの大きな書庫にも、資料がほとんどない。これはどうしたものか。じつは水中の植物というのは野山の草木と違って、見る楽しみというレジャーになり得ないうえに学術的にも評価が小さいのだ。これは地球の環境にとってどのくらい恐ろしいことか、釣り人ならわかるだろう。いや、釣り人にしかわからないことかもしれないが、政府としては水鳥のすみかとなるアシを守ることに条約は設けても、魚のすみかとなる水草には一文たりとお金もかけられない、ということなのだ(言い過ぎ?)。
 現実の話、世界中の水面下の植生はどこに行ってもほぼ同じ様相を呈している。異常事態ということが分かっていただけるだろうか。大げさに例えるなら、どこの国へいっても森には松と杉しか生えてない、というような話である。これはさまざまな原因で、環境変化に強い様々な植物が持ち込まれ、帰化していったためだ。カナダモのように外国から持ち込まれた種類もいれば、日本やユーラシアから持ち出された植物もいる。そして環境の変化に適応する能力のあるものや、早く大きく育ってしまい、他の植物に被いかぶさって日光を遮断するような強い植物が、ほんの2年ほどのタームでより優位な地位を築いていくのである。そこに生えているはずの、学者の目にすら見えない植物。ルアーに引っかかってくるという簡単な事象だけで、『釣り人はこういうものに目を向けることができる唯一の存在である』ということに、より多くの人に気付いてもらいたい。

◇今後の琵琶湖の水草
 私の読みでは浚渫による水質変化、濁りによる日光の遮断、水位の増減、温暖化と、今後の琵琶湖は大きく変化していくと考える。これに伴い、葉が柔らかく、常緑なうえに環境の変化に強いフサモの仲間がどんどん繁茂していくと思われる。このウイードの特徴は根の方にいくに従って葉が少なくなり、ここがスカスカのシェードになって魚の入りやすい隠れ場となる。また、伏流水や湧水は温度を一定に保つ力があり、夏に低水温となる場所ではヒロハノエビモやコカナダモの丈夫なものが、冬に高水温の場所ではオオカナダモがそれぞれ繁茂しやすい。今後有力なエリアとして、個人的に注目している。また、マツモという根を持たない浮遊型の植物は水質変化に強いのだが、拍出酸素量が特に多い。サイズや硬さなどが生育環境によって著しく変化するので、今のうちにこの変化と釣果の関係を覚えれば、将来の富栄養貧酸素化した琵琶湖で大きく釣果に貢献するのではないかと考えている。



クロモ、コカナダモ、オオカナダモの見分け方
一見似ているようでじつは違う生態、という覚えて便利なこの三兄弟、簡単な見分け方がある。まずコカナダモ。こちらは3輪生と言って、茎から3枚づつの葉が出ている。葉は反り返る場合が多い。低水温や湧水へ直結していることが多いから見逃せない。次にクロモ。これは葉の端が大きくギザギザしている。夏場は普通に見られるウイードだ。これらの条件に当てはまらなければオオカナダモだ。これが生えている場所は冬の水温も一定の場合が多い。



今回登場のウイード(写真はフィルムカメラにより撮影していたため割愛/種類気になる人は画像検索してください)
クロモ<Hydrilla verticillata>トチカガミ科
コカナダモ<Elodea nuttallii>トチカガミ科
オオカナダモ<Egeria densa>トチカガミ科
ホザキノフサモ<Myriophyllum spicatum>アリノトウグサ科
マツモ<Ceratophyllum demersum>マツモ科
ヒロハノエビモ<potamogeton perfoliatus>ヒルムシロ科

2017年1月6日金曜日

BW誌・連載前(2001年8月)原稿

 2014年3月26日発売号(2014年5月号・通巻214号)をもって休刊した、バスワールド誌(えい出版)での連載。
 ここでの連載は何種類かありましたが、最初の連載は2001年8月に執筆した(2001年10月号)、アカデミックレイク。最初は連載ではなかったのですが、シーバスや釣り新聞などでの露出で業界全体的に人気がうっすら上昇し、急遽連載に。


 連載開始当時まだSFNews誌のFISHMAN社に記者として所属して居ながら、ロドリ、ルアマガ、シーバスマガジンなど他誌にも出演、執筆等を許された、極めてイカレた存在だったと思います。この頃が独立の準備をしていた時期ですね。
 ちなみにめっちゃ大事な話ですが、この独立前にSIN-ZOベイトが発売され、ロイヤリティの半分をFISHMAN社の後継育成に充ててもらい、残りの半分で会社が設立された形になります。起業は当時の有限会社ですから、それを設立するくらいの同額のお金を古巣に御礼として置いて行ったことになります。金額を置いていく必要はないけれど、今自身が存在できる業界で育ててもらった、ということはそれ相応の恩返しも必要だと思います。起業前後はかなりの貧しい生活になりましたが、その金額に関しては今でも全く苦にはしてません。周りに迷惑をかけましたが、その恩はまたTULALA以降、少しずつ返していってるという現在。まあつまり、一業界の狭い中で立ち回る基準点はそこ、古巣への恩返しをしているかどうかにある、と常日頃思っています。

バスワールド原稿

 所属して居たSFN萱間編集長の「バンバン書いて暴れてこい!」というお言葉をいただき、また、他誌編集部からの「是非書いて欲しい」という謎のご要望。プロフ欄に所属はあくまでFishmanにある、と書く条件。さらには掟破りのまさかの連載から、独立して文筆だけで当時はどう贔屓目に見ても日本一の月刊誌面連載数保持者へ無意味に上り詰める…という、不思議な暗躍を果たしておりました。
 今はもう書くような仕事はしていないですが、当時興した会社で今もなんやらかんやら作っています。萱間スピリッツです。感謝。


アカデミックレイク 連載前原稿
小川健太郎流・夏の終わり〜秋にかけての戦略
「ビッグバスと初秋の出会い 特集号」

early autumn color pattern
色で食欲の秋を刺激する。

リード:
バスがもっとも食欲に直結した行動をとる季節、初秋。ルアーに体して口を使いやすくなる、盆明けからターンオーバーの始まるまでのこの期間、色による食性を利用したちょっと変わったバスの狙い方を紹介したい。池原編ではフロリダラージマウスバス(以下フロリダバス)、池・川編ではノーザンラージマウスバス(以下、ノーザン)へのアプローチをそれぞれ公開する。

小川健太郎(おがわ・けんたろう)
株式会社FISHMAN所属。ヤーガラポップ、ビッグバド、アイマ、SIN-ZOベイト…。これらのルアーを駆使し「思い付きイッパツ」でビッグバスを釣る男。純粋にデカバスを狙ってはいるのだが、教科書どおりに釣ること以外での、<毎日が非日常的な釣り>しか考えたくない、という独自の脳ミソを持つ。ほとんど初秋というこの季節にしかバスフィッシングをしない。大学で水産漁場学を専攻したが、現在は進路を大幅に変更して勉強中。興味のある奇特な方は『http://ogaken.org』までアクセス。

◆色についての基本的なおはなし
 小川式カラー学講座基礎編
まず、簡単に釣りの「色」についての知識の説明をしよう

A.色はあくまで二番目
 バスにルアーを気付かせるために必要な順番を作るとするなら、振動/音という波を感知する感覚である触覚/聴覚による「認知」。これがあくまでも一番重要だ。色やシルエットによる視覚のアピールは通常、二番目の「確認」動作にすぎない。また、匂い、味などの化学物質の判別という感覚である、嗅覚/味覚はその内容物に応じて一番にも逃げられる対象にもなりうる。どんなにイイカラーのルアーであっても、動きそのものがよくなかったり、おかしなニオイがあれば「釣れない」ということにつながってしまう。ルアーチョイス時にはまず見た目より動き/音を優先させて欲しい。

B.バスに色は、見えている。
 我々が見ているとおりかどうかは別として、バスには色が見えている。例えばバスを入れた水槽の背景を赤、緑、なにもしない、の3パターンに交換して、バイオテレメトリーの手法を用いて魚の心拍数を測定すると、なにもしない状態に対して、赤では急激に拍数が上昇し、緑の背景では拍数が落ち着く。こういった実験などから白黒のコントラストはもちろん色彩などもかなり細かく違いがわかることがいえる。

C.色選びは目線から。
 店頭に並ぶルアーの色を見てそのまま、アピールカラー、こっちは地味、と決めつける最近の傾向は、あまりよくないと感じる。なぜなら底をズル引きする場合やルアーを泳層にあわせる場合を除いて、バスは下から食いあげる場合が多い。このとき見えている色というのは、我々の見る店頭での目線の色と大きく異なるものがほとんどだからだ。

●白はナチュラルでもある
 魚の色を考えてみよう。背中は暗色、お腹は白というのが一般的な魚だ。これは実は理想的な保護色である。なぜなら鳥から狙われる背中には水(または底)の色、フィッシュイータ−から狙われる腹側には水面に同化するべく白がほどこされているのだ。つまり、下からバスを食わせるルアーなら白はナチュラルカラーに相当する、ということがいえる。我々が派手だと感じるのは、人間が目線より下でルアーを判断するからなのである。

●ベイトフィッシュも透かして見よう
 マッチザベイトを考えるのであれば、やはりベイトを魚の視点から見てみることも重要である。機会があれば水中に潜って上を通過する魚を見てみよう。案外白が目立たないことや、赤という色が消失する水深が目線次第で変わっていることがわかる。これは人間の目線でしか見ていなかった方には大きな衝撃につながるかもしれない。

D.4つの視覚軸を理解する。
 ルアーの色を考える場合、「屈折と反射/白と黒/赤と緑/金と銀」というこの4つの軸を頭に入れておくとよいと思う。

●屈折と反射
 屈折は透過という言葉に置き換えることもできるが、生命感を「光の屈折、反射」で演出するならその具合をみる、ということ。たとえば「モエビは透けて見えるのでクリアカラーをチョイス」といったようなことから、「真っ暗闇などではメッキカラーを使うと反射光が強すぎ、恐怖信号になる場合があり、ホログラムやパールなどに換える必要がある」といったような場合まで、その応用範囲は多岐に渡る。

●白と黒
 先ほど述べたように白と黒は目線によってアピール度がまったく変わってくる。「ソリッドブラックでヒット」などの情報があった場合、ルアーの種類やリグからそのルアーのレンジと魚のレンジを予測しておくとよい。例えばもしそれが、水面での黒で釣れていたなら、これはアピールカラー、つまり高活性であった場合が想定されるのだ。

●赤と緑
 赤と緑による釣果の差は、じつは魚の習性に大きく関わっている。簡単にいうならば、「赤に食性を示すのは回遊型」「緑は居着き型」である。例えば日本でフロリダバスが混在する湖では、フロリダバスが回遊、ノーザンが居着くことで棲み分けている場合がある。こういった条件では、メインディッシュとなるエサが回遊=脊椎動物食、居着き=無脊椎動物食となるため、それぞれの視覚的な嗜好色が偏ってくるのだ。これは魚の実験でもよく知られている。ウォーターメロンがノーザンに効くといわれている理由も案外こういうことかもしれない。

●金と銀
 反射のクロムカラーなかでも特にルアーカラーによく用いられるのが金と銀だ。使い分けについてはいろいろ言われているが、日光の照射量との関係が大きい。日光が横から射すときや曇りの時は金が強く光る。また、晴天の直射日光が当たる条件下では銀が強く光る。これは光の性質であり、この照射量によってアピールするカラーが変わる。ちなみにわたしは淡水の釣り全般を通して朝晩は金、昼間は銀を多用する(外洋はすべて銀)。すっかり暗くなると、この反射は恐怖信号に変わる可能性があるのでクロムカラー自体の使用をやめる。


〜〜〜〜〜〜〜〜本編〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆その1池原編
タイトル:池原の朝は「赤」が一番エキサイティングなゲームを約束する



●フロリダバスという魚
 池原ダムというと現在ノーシンカー・スティックベイトの水平フォール、ダウンショット、またはビッグスイムベイトが定番で、プラグにはあまり焦点があたらない。トップウォーターに関してはなおさら情報が少ない。私の場合、あまりソフトベイトが得意ではないので、こういった繊細な釣りにはなかなか精神が保てない。そこで「プラグをドカーンと放り投げて適当に動かすだけでビッグバスを釣る方法」を探るべく、ターゲットをフロリダバスに絞って、アメリカの論文や実験などからさまざまな情報を集めた。
 その結果、当時自分のやっていた実験である、心拍数、遊泳速度などの情報を遠隔測定するバイオテレメトリーという手法を用いた実験から「フロリダバスは遊泳性が強く、朝に捕食活動を集中して行う」という重要なヒントを得た。当時池原ダムのフロリダバスは従来の日本のノーザンの釣りをそのまま当てはめていることが多く、この時期日中に捕食のピークの来るノーザンを狙う釣りかたでは狙いきれていないフロリダバスがいるのだ。「朝の回遊の群れ」である。夜があける前から観察すると、この群れは暗いうちから群れを形成して回遊している。群れの形態としては非常に結びつきが弱く、ただ捕食という目的が一致して成立した群れであるため、大きさが均一に揃っておらず、わりとだらだらと小魚を追い回している。ただし群れというかたまりには必ず社会性が存在しており、大きさの段階によって小魚を追う順番が出てくる。自分が見た群れはだいたい、まず先頭には40cmクラスのレギュラーサイズ、その次に70cmクラスが2、3尾、そのうしろに60cm、50cm、再び40cm、30cmと20cmの混合といった具合に続く。この先頭のバスは好奇心が強いので群れのファッションリーダー的、毒味役的な存在、すなわちスイッチを支配するチャレンジャーとなり、その直後に続く大型バス達に常に見られているということになる。

●朝の回遊バスを狙う「赤」
 2年前の初秋、これらのことを念頭に入れ、「朝だから見やすい」という理由で取りあえずオレンジに近い赤(ホットレッド)のヤーガラポップを岸から放っていた。小魚が跳ね、群れが来たかと思うと突如「ゴボゥッ」と直径1mほどの波紋が起き、シイラ用のロッドが引き込まれた。下へ下へと締め込む引きだ。上がってきたのは見たこともないサイズのバスであった。当然片手では簡単に上がらないのでぐっと引きずって、メジャー代わりに竿を当てる。突然暴れ、押さえ切れなくなって逃がしたのだが、竿で測っていたものを戻ってメジャーで見ると74cmを簡単に超えている。その後、もちろんハマって通い、結局11月までに68cm、71cm、ほか多数の50cm台と同じような釣り方で釣り上げたのだが、ほとんどの魚に赤が絡んだ。赤以外で釣れたのは心臓リグで釣ったものだけ、という結果だった。
 回遊する魚には赤が効く、という説がある。これは基本的に回遊時のエサが脊椎動物であるため、形成成分である血液のヘモグロビンの色に嗜好を示す、というものである。この当時よく不透過の赤を投げていたのは、実は朝日という横から射すの光の反射効率と、距離感をつかませてフッキング率を向上させることを考えてのものであったが、こういった説を考えると、フロリダバスの習性となんらかの関連性をもっているということが考えられる。また、日本のルアーシーンに赤があまり登場しなかったことでプレッシャーも低かったのかもしれないが、いずれにせよいまだ赤いルアーで簡単に釣れるところを見ると、習性にかかわる部分が大きいようだ。

●日が昇ってからの「赤」
 日が昇ってからの赤は、日光が上から照射されるため、クリアーのレッドを使用する。もしくは反射カラーとして、ホイルベースののクロムレッドを使いたいが、この色のルアーを現在店頭で見ることはほとんどない。このためキャスティークのメーカーであるフィッシュアローから発売予定のジョイントスイムベイト、モンスタージャックのカラーにこのクロムレッドという色をなかば無理矢理お願いしてみたのでぜひとも一度見ていただきたい。
 シチュエーションとしては流れ込みがメインであるが、ときには水位次第でバックウォーターに入って使用する。いずれもキーとなるファクターは日光の照射、2m以浅の浅場、そして低水温(溶存酸素量)である。他の場所ではバスが深場についてしまうので釣りにくくなる。



欄外:(写真+キャプション)
●レッドには実は2種類ある!!
 店頭で見かけるソリッドレッドといわれるカラー、じつは全然違う色で2種類あるのだ。一つは透かして見てもまさに赤いレッドだが、もう一つは透かすと紫っぽく青みを帯びるマジェンタ(magenta)という色。マジェンタは赤としての効果(距離感によるフッキング率の向上)は少し薄れるが、濁りの中や深場でも効果がある。

●早朝のバックウォーター
 早朝のバックウォーターでは流れに対して逆引きでシイラ用などの大型のポッパーやノイジーが楽しめる。夏の終わりはノイジーを多用し、秋が深まるにつれポッパー〜ペンシルに変遷してゆく。スーパーシャッドラップもこの使い方でよく釣れる。モーグルペンシルは押さえとして多用しているのだが、フロリダバスに効く。

●昼のバックウォーター
 昼は淵をうろうろしているバスが多い。サイズは小さいものの、小魚はもちろん、虫なども補食しているため、様々なルアーで管理釣り場のような釣りが楽しめる。取材時は小魚を追っていたため、ソリッドレッドへの反応がよかった。オキテ破りのSIN-ZOベイトのワッキーリグ。超浅場でトウィッチ。横にスライドさせて食わせた。

●岩場の陸っぱりはフローティングベストで
 写真のような岩場で陸っぱりするときはフローティングベストで身軽に釣りをしたい。足場が崩れたり、落石があった場合、迷わず沖へ飛び込むためだ。へたに踏ん張ると大怪我をしかねないので、最初から泳ぐ気で釣りしておこう。

●岩場のタックル
 ほとんどの池原の岸釣りは岩&立ち木のある地帯が多い。パワーファイトになることを考えて、小回りの効くタックルを組むほうがよい。
使用タックル
ロッド:ufmウエダ ドルフィントウィッチャー・ボロン PPS-60ML-T
リール:ケンクラフト ゼスターMX3000
ライン:クレハ リバージトラウト16lb(リーダーは状況に応じて6号〜8号のフロロ使用)

●遠投のタックル
 バックウォーターからダムへ向かってのキャストや写真のようなスロープなどからのボイル撃ち等、ロングキャストには躊躇なくロングロッドを使用。バスロッドの規格はボートのトーナメントに合わせたものなので、こういう釣りには使い慣れたシーバスロッドを使うのも一つの考え方だと思う。
使用タックル
ロッド:ufmウエダ ソルティープラッガーTi SPS-862-Ti
リール:ケンクラフト ゼスターMX2000
ライン:クレハ リバージバス 8lb(リーダーは状況に応じて4号〜6号のフロロ使用)

●移動の方法
 通常、ロープで降りたり、自動車&折り畳み自転車を用いておかっぱりポイントを回る。今回は池原ランカーハンターのなかでもっとも私が信頼を寄せている、呉行修さんと一緒にボートでいつも岸釣りするエリアを回った。
 レンタルボートはY企画(★★★★電話番号★★★★)を利用。昇降場以外にレンタルもやっており、荷物の上げ下ろしは専用の機械、そしてトイレ等の設備も一新し、使いやすくなった。


◆その2池・川編
ルアーのカラーは「白」を使いこなす。

●デカバスと白の関係
 結論を言うと「なぜかよくわからない」のだが、池や川など、よくあるような釣り場において、夏の終わりから秋にかけて白いワームで大型のバスがよく釣れる。私の中での50オーバーのデカバスに関しての実績は一番大きい。どれも2m以浅(池だと水面から50cmほど)で下から食ってくることから、どうやら白というカラーがアピールしているということではなさそうだ。白という色は下から見るとナチュラルでぼんやりとシルエットが膨張し、やや大きく見える傾向がある。また、釣れるワームタイプもちょっと太めのグラブ、4インチのリングワームなどがダントツであったことを考えても、食欲に伴う「ボリューム」がある程度のキーになっていると思われる。もうひとつ、下から食ってくるという部分でノーザンという「居着き」の魚の習性というものが考えられる。たとえば、イワナ、ブラウントラウトのような岩影に身を潜めるようなタイプは異常に白に反応を示す。同様に緑にも強く反応はするのだが、大きい個体ほど白への反応は強くなる。鮭やマスも同様の興奮を赤、オレンジ、ピンクで反応することから「身の色」に対する興奮ではないかと感じているのだが、実は研究室で個人的にこれについて何度か実験を試みたものの、たいした考察が得られなかった。今後もこの考察は続けていきたい。

●白のカラーの使い分け
 夏の終わりから秋にかけて効く、と書いたが、白のカラーには効く色というものが存在する。まず一つは「赤パール」といわれている赤〜ピンクに光るパールが入っている白で、これが夏の終わりから9月中旬までにとにかく強い。9月に入ってからは「とにかく真っ白」な白、もしくは「ホワイトパール」といわれるような白く光るパールが入る程度の純白が安定しており、10月に入る頃から「アイボリー(象牙色)」といわれる、ちょっと焼けたような白がフィーバーしてくれる。ちなみにこのアイボリーは見た目が悪いからか、通常のホワイトではラインナップされていないので、ルートビア−やパンプキン系のカラーのワームが入っていた袋などに白ワームを漬けて作ったりしていた。ちなみに、ブルーパールを用いた白は綺麗でよく売られているが、コンスタントにでかいバスが釣れるわけではないので、春など、別の季節に用いるようにしている。

●白が効くシチュエーション
 まず先述したとおり、食ってくるラインはほとんど浅い。水深があるところでもゴミの下、ストラクチャ−など、バスが水面下すぐのラインについているものを狙うとよい。時間帯は朝夕のマズメ時が多いのだが、とくに9月後半から10月は夕方によく釣れる傾向がみられる。これはバスという魚の生態上の捕食時間の移行というものが作用しているが、これについての詳細はまたどこかで。ちなみに8月の末から9月中旬は朝によく釣れている。この場合、主に水性植物から落ちてくる格好で使用するとよいようだ。


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●必殺エビ! スライディングシュリンプ
このワームは顔側にフックをセットするという変わったルアーだ。ノーシンカーで投げると着水点よりお尻側にスライドフォールを始める。しゃくってまた落とすとまた向こうに行く、というヨーヨーフォールのような動きが得意だ。アシ際にこの白をよく使う。ボディのボリュームも満点だ。