2017年2月13日月曜日

触覚と聴覚(2002年3月LF紙)

ルアーフライニュースの第二回です。おそらく旅に出る前にまとめて書いて送ったようで、実際は4月ごろ掲載されているみたいです。これは短いからいいですが、この時一般紙面の連載数がゴースト含めて明らかに当時日本一多かったはずなので、月単位の長期の釣り旅の前後で苦労しています。なんかタウン誌系と車関係が、時事ネタを予測できない分、辛かったです。すぐになんでも書けるため、誰かが落とした原稿のピンチヒッターとしても重宝されていたため、タイかどこかの細い回線で原稿書いて送り、チャットで打ち合わせした記憶もあります。今何にも書いてない上に、イラスト描いて生計立ててるなんて、当時の自分には予想もできない未来に生きてます。


◇第二回・触覚&聴覚編
 前回、軽く紹介した魚の『感覚』。この部分について、今回と次回に分けて詳しく解説していきます。今回は魚がルアーを発見する上で、もっとも遠い距離から判別できる感覚についてのご紹介。その感覚とは耳です。魚にとっては触覚も聴覚も似た感覚であることは前回もお伝えしました。この感覚に付いての詳細、まずは触覚からいってみましょう。

★触覚編
 川でジーッとしている魚を手づかみにしようとした経験がありますか?この経験のある方は魚の触覚という感覚をすぐにご理解いただけると思います。不用意に手を近付けると必ず気付かれてしまいますよね。目が見える状態なら人間がうろうろしている時点で逃げているとおもうのですが、夜間の休息中の魚などは手が触れそうになる時点まで平然と休息(人間でいう睡眠)しています。しかし手が近づいたら触ってないのに逃げてしまう。このメカニズムが魚の触覚です。
 まず、水の中では波があります。もちろん流れや風によって生じる波もあるが、物体が動けばそのぶん押しのけられた水が動き、ゆるやかな波となります。じつはこれらの波を感じとることが、魚の世界では『触覚』に相当することになります。つまり、ある程度離れたものを感知することが、人間でいう「触った」感覚になる、ということがいえるのです。これがあるからこそ魚は、水の中で物にぶつからずに泳げ、外敵が目の死角から迫っても逃げることができる、というわけですね。ちなみにこの感覚のメインの受容器官は「側線」。スズキ、アジなどの一般的な魚の側面に必ず存在する、点線状に繋がれた、あの線であります。

★聴覚編
 つぎに聴覚。水の中では音も『波』になります。非常に周波の細かい『波』が音になるわけですね。このため魚は『触覚(波の感知)』に相当する部分を感じとる器官が、同時に『聴覚』の受容器官のはたらきをもつことになってきます。その器官が「側線」です。側線はあの点線の一つ一つが袋状になっていて、袋の底に細かい感覚毛が生えているます。この袋の中に入り込んできた波(音)が感覚毛をユラユラ揺らし、神経に伝えるのです。
 そしてもうひとつ、なぜかあまりルアー業界で語られることが少ないのですが、聴覚に重要な器官があります。それが『ウキブクロ(鰾)』です。これは通常水圧に応じて中の気体を調節して浮力(釣りでいうと「レンジ」「タナ」)を保つ器官ですが、じつは音を反響させて脳に伝えるアンプの役目を果たしています。これは当然大きい魚ほど大きくなるわけで、老化を抜いて考えれば音を捉えやすくなっていくはずです。個人的には大きい個体ほど低い音をよく捉えられるようになっていくのではないかと推測し、この考えを利用して55オーバーからのバスを選んで釣る釣り方に活用したこともあります。これには驚くほどの結果が何度も出たため確信はしているのですが、いまだウキブクロとの結びつきまでの確証に至っていません。気になる人は会ったときにでも個人的に聞いてください。
 魚がよく聞こえる角度は真横(側面)とされています。これは、与えた音源に対して常に真横の姿勢を取ろうとすることからも推測されますが、様々な魚で実験したところ、どうやら真横の音に脳波が一番よい反応を示すことから、側線部分に対して垂直方向に入射する音がよく聴こえているとされているようです。


  プロフィール
小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行、色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながらひっそり生かされている。SIN-ZOベイト他を開発。