2017年2月13日月曜日

触覚と聴覚(2002年3月LF紙)

ルアーフライニュースの第二回です。おそらく旅に出る前にまとめて書いて送ったようで、実際は4月ごろ掲載されているみたいです。これは短いからいいですが、この時一般紙面の連載数がゴースト含めて明らかに当時日本一多かったはずなので、月単位の長期の釣り旅の前後で苦労しています。なんかタウン誌系と車関係が、時事ネタを予測できない分、辛かったです。すぐになんでも書けるため、誰かが落とした原稿のピンチヒッターとしても重宝されていたため、タイかどこかの細い回線で原稿書いて送り、チャットで打ち合わせした記憶もあります。今何にも書いてない上に、イラスト描いて生計立ててるなんて、当時の自分には予想もできない未来に生きてます。


◇第二回・触覚&聴覚編
 前回、軽く紹介した魚の『感覚』。この部分について、今回と次回に分けて詳しく解説していきます。今回は魚がルアーを発見する上で、もっとも遠い距離から判別できる感覚についてのご紹介。その感覚とは耳です。魚にとっては触覚も聴覚も似た感覚であることは前回もお伝えしました。この感覚に付いての詳細、まずは触覚からいってみましょう。

★触覚編
 川でジーッとしている魚を手づかみにしようとした経験がありますか?この経験のある方は魚の触覚という感覚をすぐにご理解いただけると思います。不用意に手を近付けると必ず気付かれてしまいますよね。目が見える状態なら人間がうろうろしている時点で逃げているとおもうのですが、夜間の休息中の魚などは手が触れそうになる時点まで平然と休息(人間でいう睡眠)しています。しかし手が近づいたら触ってないのに逃げてしまう。このメカニズムが魚の触覚です。
 まず、水の中では波があります。もちろん流れや風によって生じる波もあるが、物体が動けばそのぶん押しのけられた水が動き、ゆるやかな波となります。じつはこれらの波を感じとることが、魚の世界では『触覚』に相当することになります。つまり、ある程度離れたものを感知することが、人間でいう「触った」感覚になる、ということがいえるのです。これがあるからこそ魚は、水の中で物にぶつからずに泳げ、外敵が目の死角から迫っても逃げることができる、というわけですね。ちなみにこの感覚のメインの受容器官は「側線」。スズキ、アジなどの一般的な魚の側面に必ず存在する、点線状に繋がれた、あの線であります。

★聴覚編
 つぎに聴覚。水の中では音も『波』になります。非常に周波の細かい『波』が音になるわけですね。このため魚は『触覚(波の感知)』に相当する部分を感じとる器官が、同時に『聴覚』の受容器官のはたらきをもつことになってきます。その器官が「側線」です。側線はあの点線の一つ一つが袋状になっていて、袋の底に細かい感覚毛が生えているます。この袋の中に入り込んできた波(音)が感覚毛をユラユラ揺らし、神経に伝えるのです。
 そしてもうひとつ、なぜかあまりルアー業界で語られることが少ないのですが、聴覚に重要な器官があります。それが『ウキブクロ(鰾)』です。これは通常水圧に応じて中の気体を調節して浮力(釣りでいうと「レンジ」「タナ」)を保つ器官ですが、じつは音を反響させて脳に伝えるアンプの役目を果たしています。これは当然大きい魚ほど大きくなるわけで、老化を抜いて考えれば音を捉えやすくなっていくはずです。個人的には大きい個体ほど低い音をよく捉えられるようになっていくのではないかと推測し、この考えを利用して55オーバーからのバスを選んで釣る釣り方に活用したこともあります。これには驚くほどの結果が何度も出たため確信はしているのですが、いまだウキブクロとの結びつきまでの確証に至っていません。気になる人は会ったときにでも個人的に聞いてください。
 魚がよく聞こえる角度は真横(側面)とされています。これは、与えた音源に対して常に真横の姿勢を取ろうとすることからも推測されますが、様々な魚で実験したところ、どうやら真横の音に脳波が一番よい反応を示すことから、側線部分に対して垂直方向に入射する音がよく聴こえているとされているようです。


  プロフィール
小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行、色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながらひっそり生かされている。SIN-ZOベイト他を開発。

2017年2月10日金曜日

連載の自己紹介と魚の感覚/(2002年3月LF紙)

この原稿はルアーフライニュースで2002年3月執筆、とありました。
1クール目が魚の感覚に近づくための講座として週刊で全5回。人気だったようで帰国後2クール目も二回分あり、計7回は連載内の自筆分となります。それ以外は実釣や商品紹介がメインなので省略しようと思います。御多分に洩れず、写真はフィルム時代のため省略です。



オガケンの不思議なルアーBOX

リード
 釣りをするうえで、どうしても気になってしまう魚の世界。ルアーは魚にどのように見えているのだろうか、なぜルアーで魚が釣れるのかをテーマに小川健太郎がお送りしていきます。

◇第一回・基本編
 はじめまして。SIN-ZOベイトの小川健太郎です。僕は現在カンボジアにいます。このあたりはルアーフィッシング未開の地でもあり、面白いゲームフィッシュがいないトコロかもしれません。僕がなぜこの地を選んだかというと、あたらしい魚との出会い、未知の水域へ竿を出すときのワクワク感を取り戻すためです。同時に、他人との競争場と化した日本の釣り場、釣り業界から、なにも魅力を感じなくなった自分を癒すためでもあります。僕個人の『釣り』という趣味は、『魚の感覚に近づく』ことを楽しむ遊び。魚はルアーをどう見ているのか、温度をどう感じているのか、おいしくゴハンを食べるのか、命の危険にどうおびえているのか。この魚の感覚が理解できる瞬間があるとするなら、それは釣りを通してしか味わうことができないと思うのです。無事帰国できれば、これから連載でこの『魚の感覚』に少しづつ迫ってみたいと考えていますのでヨロシクお願いします。

●バイオテレメトリー
 僕が魚の研究をするときに、バイオテレメトリーという言葉が出てきます。これは「生物遠隔測定」と言って、いわゆる発信機や測器を魚の体内や体外に取り付けて、心拍数や遊泳速度、水深、水温、加速度などいろんなことを測ってしまう手法です。テレビ番組ではよく、鯨やクマに取り付けて、衛星を使って追跡調査なんかしてますよね。僕らが行っているのはアレの一種で、ペンギンに取り付けるような小さいタイプの発信機(または測器)を使っているんです。
 近年、テクノロジーの発達でいろんなことがわかるようになってきました。この中にはもちろん釣りに使える情報満載です。例えばマダイの活動時間はこの時期何時ごろなのか、とか、スモールマウスバスは回遊しているのか(いづれお伝えします)、とか…。考えれば考えるほど楽しい話題が満載です。実験方法次第では、魚がルアーを追う時とエサを追う時の心拍数の違いなんかも、簡単にわかってしまいますよね(これがSIN-ZOベイトのコンセプトのひとつに)。
 このような実験を交えながらお伝えしていきたいと思っているので、この『バイオテレメトリー』という言葉、おぼえておいて下さいネ。

●五感
 今回は基本の部分ということで、人間と魚の違いについて述べてみたいと思います。魚は人間とどこまで違うのか、またどこを同じように考えることができるのか。これがわかれば、とりあえず魚の世界に一歩近づくことができるに違いないわけです。
 まず、人間との五感の違いを考えてみましょう。われわれ人間は触覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚という5つの感覚をもっています。釣りの時、この人間の感覚のまま魚に置き換えて推測するとやはり勝手が違ってきます。魚は「水の中にいるから」です。では、水という物質がこれらの感覚をどのように変えてしまうのでしょうか。
 例えばニオイと味は化学物質の伝達という点で共通しています。人間の場合、『空気を伝わる化学物質=ニオイ』、『唾液などの水分を介して伝わる化学物質=味』となってきます。しかしこれら化学物質は、水の中では同じように溶けてしまい、ニオイも味も、その違いはほとんどなくなってしまうと考えられます。これによって味覚と嗅覚はほぼ同じような器官で判別されてしまうことになるでしょう。
 また、触覚と聴覚にも同じような共通点が見出せます。それはどちらの感覚も水の中では『波』だということです。これによってこの『波』を感じる器官に関しては音も触る感覚も共通の器官で感じることができそうですね。そんな器官が「側線(魚の側面に付いている点線状の器官)」というわけです。この器官は一つ一つが小さな袋になっていて、その中に生えた毛で波を感じとることができます。

●ヒトの五感は魚の三感?
 これまで述べたことを考えてみると、魚は水の存在によって五感に相当するものが3つほどに少なくまとめられているように思えませんか。そのかわり水による音の伝達速度、ニオイの伝達能力などが高いため、人間の思うよりも高感度になっているようです。
 以下に3つの感覚を示しますので、人間の感覚と置き換えてイメージしていただきたい。
音、動き(聴覚・触覚)
形、色(視覚)
味、匂い(嗅覚・味覚)
 水の中というだけでヒトの五感は魚の三感。人間と魚はここまで大きく感覚が変わってしまうのです。




  プロフィール
小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行、色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながらひっそり生かされている。SIN-ZOベイト他を開発。

2017年2月8日水曜日

管理釣り場(2001年11月/新聞LF紙)

さて、バスワールド誌編が終わったので、別のを見てみます。契約形式上、転載できるのは書いたものすべて可能みたいですが、とりあえず休刊したものメインに進めてみます。
本当は同じエイ出版のトップ堂連載に行こうと思ってましたが、笑い要素が強いため、ルアー&フライニュース紙を。
 シーバスとバスがメインの新聞です。新聞なので、誌ではなく『紙』表記にしました。関東をメインにコンビニに販売網があり、ここに大きく紹介されることで売り上げが凄まじいことになったのを記憶しています。SIN-ZOベイトが初年度からとんでもないフィーバーを起こしたのも、その印税で会社を立ち上げられたのも、かなりこの紙面のおかげです。
以前も書きましたが、当時、管理釣り場のイメージが向上してきた過渡期でしたが、プロのトラウトアングラーは出入りしたがらず、なかなか目を引く記事がありませんでした。その頃管理釣り場のクランキングを紹介して好調だったワタクシに、執筆協力していたシーバス記事のついでに声がかかったみたいです。内容は大胆にしてフランク過ぎで、冗談と思って試した人たちが衝撃を受けまくったらしく、ある意味話題(笑)になりました。この時から管理釣り場でのルアーサイズのルールが厳しくなっていきます。また、ここから小さなコマ連載も始まりました。




管理釣り場で楽しもう
2001年11月記事

プロフィール:
小川健太郎
 SIN-ZOベイトのデザイン、365日連続釣行×2回(うちトラウトは100日)、池原のヤーガラ、バドなどでごく一部のマニアにだけ大いに知られる。大学では漁場学を専攻。通称オガケン。2月9日のバッシングバッシングショー東京で、SIN-ZOイベント予定。詳しくはhttp://●●●(当時のURL)にて。

リード
 冬至を迎え、日増しに気温が下がってくると管理釣り場の人気がヒートアップする。しかし、管理釣り場といっても河川型、ポンド(池)型など、さまざまな釣り場のタイプがあったり、魚種が多様化していたりと、ひとくちに攻略できないのが現状だ。そこで、今回は釣り場別、魚種別に管理釣り場の攻略法を紹介しよう。

◇管理釣り場のタイプ
 今回紹介するのは、トラウトの管理釣り場で2タイプ。一つは河川型で、流れのある川を利用したものだ。河川型の中にも渓流や本流、さらには細かく堰堤で区切ったものまであるが、基本的に流れがある釣り場は共通点が多いので一つにまとめてみる。もう一つは止水型で、池のような水の出入りが少ない釣り場である。このなかにはポンド(池)、レイクと呼ばれるものや、コンクリートで四方をかためたものなどがあるが、水が動かない釣り場としてひとくくりで考えてみよう。

●河川型の狙いメ
 流れのある釣り場は、慣れない方には取っ付きにくいかもしれないが、基本的にスレにくいので一日中楽しめる。はじめての人のためのコツは『深くなっているエリアをきっちりさぐる』ことである。速い流れの中や表層にも魚はいるが、これらは人間のほうが流れに慣れてから狙っても遅くない。流れが緩ければ3.5gまでの肉厚スプーン、流れが速くてスプーンが浮く場合、4cmクラスの『きっちり泳ぐ』ダイビングシャッドを用いる。いずれのルアーも、とりあえず底を狙う。朝、まだ暗いウチから釣りができる場合、白系の4〜5cmのミノーが有効だ。パニッシュ、チェイスミノー、ハンプバックミノーを使用しているが、リップが短いものなら、とりあえず深さがわからなくても根掛かりを恐れず投げられる。明るくなりはじめたら金色にルアーチェンジ、気温が上がりだしたらスプーンに切り替えていく。
・アタリ
 流れの中の魚は、わりとアタリがダイレクトに出るのでフックアップはしやすい。しっかりロッドでハリをかけて、巻きアワセで追いアワセするとよい。流れの速い場所では、流れに飲まれることを想定して、あらかじめ取込み位置を考えておいたほうが周りに迷惑をかけない。
・濁り
 濁りに関しては、工事などであまり強いニゴリがでると、pHが急変して魚が食わなくなり、お手上げになる。雨で濁った程度であればかなり期待したい。温度の急変さえなければ一日中釣れ続く可能性がある。

●止水型
 関東に多いのが、この止水型の釣り場である。基本的に、放流直後などは誰でも釣れるが、ピークを過ぎれば誰も釣れなくなってしまうという恐ろしいタイプの釣り場が多い。これは群れの習性がモロに出てしまうためで、好奇心旺盛なやつがハリに掛かってバレたりするだけでその場の他の魚に丸見えとなり、スレてしまうことが多いのだ。
 数を狙いたい人はプレッシャーが少ない放流直後の魚を、得意ルアーで乱獲してしまえばよいのだが、食わなくなったときが問題だ。通常こういった釣り場は水が動かないため、さまざまな温度が層をなしている。これによって一定のレンジを狙う重要性が出てくるのだ。持つべきルアーは表層、宙層、底層という、日や時間帯によって違うそれぞれの層を、『スローに、かつきっちり探ることのできるルアー』である。市販のルアーのほとんどが宙層、底層をキープできるので、このあたりはなんとでもなるが、表層をスローにキチンと狙えるものが以外と少ない。表層はミノーばかりで攻められ、すでにスレているので、こういうときには凧スプーン、ハスルアー1.8gなど、ヒラヒラさせられるルアーが効果的だ。
・アタリ
 渋くなると、アタリも取りづらくなる場合が多い。とにかくロッドを立て気味にしてラインを注意深く見ておくのがコツ。ラインが走ったらアワせてみたほうがよい。
・濁り
 雨の濁りなど、こういうエリアでの濁りは群れの魚が互いに見えなくなるため、プレッシャーが減り、釣れ続く要因になってくれる。ただ、温度の急変による濁りだけは水質も悪化している可能性があり、釣れない原因になるので注意。

◇魚種の釣り分け
 ニジマスがメインとなることが多い管理釣り場だが、最近は色々な魚種を放流する釣り場が増えてきた。これに伴い、魚の習性が違うため、釣り分けなどができるものがあるので紹介したいと思う。

●ブラウントラウト
 基本的に居着きタイプの魚で、魚の目線より上の白い色、目線より下の黒い色への偏食傾向が見られる。活動時間帯も暗いウチが活発で、日の出の時間にピークを迎える個体が多い。白くて丸いシャロークランクなどが効果的で、スーパーの袋などの切れ端でもよく釣れるくらい、とにかく白系が好きなように見える。

●イワナ
 日本で養殖されるものは数種類いるが、管理釣り場で放流されるイワナの品種は、高温でも多少耐久性があるようだ。特に温度の上昇時には一点でビシビシ高速トウィッチすると、耐え切れなくなって食ってくる。また、平らなクランクやウォブリング系のルアーなど、移動距離に対してよく腰を振るものを好む。習性が居着きであるために緑〜チャート、白のルアーを好む。

◇困ったときのウラワザ ベスト5
●釣れないときはデッドスロー
 どうしても釣れないときは、ミニミニクランクやブルブルとウォブリングするミノーを、いったん最大深度まで潜らせたあと、あえてブルブルするかしないかの限界の速度で巻いてみよう。もしくはスプーンを底にかするかかすらないかのスピードで、巻いてくる。どちらもアンテナのようにロッドを立てて巻くのがコツ。アタリはラインが走るので、ロッドが引き込まれる時にアワセて乗せるとよい。

●デカイのがイイ!
 20cm前後ばかりしか釣れなくて困ったときは、クランクベイトの出番だ。クランクは最近各社から出ているものでオッケイ。カラーがシビアに釣果に出るので色々用意すると楽しめると思う。押さえておきたいのは白、金、赤で、チャートや黒、マットグリーン、オレンジ、リアル系なども爆発する可能性がある。

●魚が見向きもしなくなったら
 朝10時を過ぎると、急に見向きもしなくなることがある。こういうときは7cm以上のクリアレッドの赤ミノーを試してもらいたい。大きいミノーに関しては、アクションの問題とカラーの問題が大きく出てくる。アクションは頭を支点にフラフラと泳ぐもの、カラーはゴーストレッドがスレたニジマスにはダントツである。この条件さえクリアすれば、なんと12.5cmのアイマコモモでも釣れる。オススメはチェックベイト7Sの赤。サンドペーパーを荒くかけるとホロが滲んで、水を吸ったアワビ貼りのように光る。注意したいのは、こういうルアーを投げると着水音が大きくなってしまうことである。他の人の視線もあるので、気になる人はコッソリ使ってみよう。(※現代では怒られる釣り場の方がほとんどです)

●エキスパートはゴマンといるが
 個人的な話だが、僕は『発見を楽しむ釣り』がメインなので、先述のような大型のルアーを投げることが多い。これではどうしても着水音が大きく、魚のサイズも大きくなってしまい、周囲に迷惑をかけてしまう。こういうときはシロウト丸出しのスタイルでもって堂々と投げるのがオススメ。基本は右投げ右巻き、竿尻を持ってリールを巻く場合もある。こういう方法だと多少騒々しくしてしまっても諦めてくれるし、親切に写真をとってくれたり、情報など教えてくれる場合まであるのでお得だ。さらに、常に身も心も初心者でいると、釣れた一匹の味わいもひとしお、なのである。

●根掛かりに困ったら
 管理釣り場は、水中にあるラインなどのゴミに引っかかることが多い。通常ルアーリトリーバーが活躍するが、届かない場合も多い。僕はショートジギングロッド、PE10号&メタルジグなどを利用して、根掛かった自分のルアー以外の見えているルアーも勝手に回収している。これは怒られる場所、時間帯などもあるので、とにかく慎重にやらなければならないが、ラインを回収して釣りをしやすくしたりできるうえに、拾ったルアーを使うので、無料で新しい発見ができたり、経済的にもおトクなウラワザなのである。

オガケン タックル
<河川型の釣り場>
ロッド:UFMウエダストリームトウィッチャーボロンTS-56UL
リール:リョービ ゼスターMX1000
ライン:クレハ リバージトラウト4Lb
ルアー:スカジットデザインズ ダイビングビートル
    スミス ピュア GOOカラー

<ポンド(池)型の釣り場>
ロッド:UFMウエダストリームスピンボロンSS-56EXL
リール:リョービ ゼスターMX1000
ライン:クレハ リバージエクスクール4Lb
ルアー:ラッキークラフト ベビークランク
    自作 SIN-ZOプラグ
    スカジットデザインズ 凧スプーン
    スミス ルナ

<7cm以上のミノー用>
ロッド:UFMウエダ スプリットショットスペシャルSSS-610S
リール:リョービ ゼスターMX2000
ライン:クレハ リバージソルト6Lb
ルアー:アイマ サスケ オヌマレッド
    スカジットデザインズ チェックベイト7S ゴーストレッド(サンドペーパー掛けバージョンとノーマルを必ず持っていく。)

※赤いルアーはフックは鉄製に換えて錆びさせてニオイをFe系にする。緑系のルアーはフックをブロンズ製にして研ぎなおし、錆を作ってニオイをCu系にする。スルメなどを同梱すると錆びが生じやすく、人間やタバコのニオイも隠せてお得。錆び始めが食いもよい。掛かりがわるい時だけ研ぐ。

2017年2月6日月曜日

五感→三感の話と総集編(2003年3月BW誌別冊バスギア2003)

バスワールドの連載終了時に同時進行で書いていたのがバスギア用の、少し踏み込んだ総合編です。一部連載と重複しますが、当時は一年以上前の、しかも月刊誌の原稿ですので、記憶に残る幅としては、ちょうどいいくらいだと思います。

以下原稿


バスギア2003
アカデミックレイク特別編集
魚に近づきたいだけのアングラー、小川健太郎が送る、バスの生態から考えるルアーフィッシング

◆バスの五感を知る
 ルアーフィッシングでバスや様々な魚を狙っていく上で、どうしても知りたい部分が生まれてくる。それは「魚は、このルアーをどう捉えているんだろう」という疑問である。魚の感覚と人間の感覚の違いはどういう部分にあるのだろうか。

●魚の五感?
 人間の五感というものがある。これは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という感覚で、この5つをそれぞれの器官で感知することによって身を守ったり、物を食べたり、と生活できるというわけだ。
 我々人間の五感は次の感覚から成り立っている。
・視覚:光を見る
・聴覚:音を聞く
・触覚:皮膚で触る
・味覚:味を味わう
・嗅覚:匂いを嗅ぐ
 この五感が魚だとどうであろうか。人間と同じように考えるわけにはいかないので、水の中での感覚を想像しながらこれら五感を魚に置き換えて考えていこう。
 魚は人間と違って水の中という、密度が833倍も高い空間の中にいる。この水という存在が感覚器官の大きな違いに関わっているのだ。おおまかにわければ、魚はこの『水』の存在のために、これらの感覚が3つに分けられる。というより、聴覚と触覚という『波(音から衝撃まで)の感知』、味覚と嗅覚という『化学物質の判別』をそれぞれ同じような器官で、あるいはそれぞれを同様の信号として感じ取っていると考えられるのだ。

●感覚器官
 それぞれの感覚受容器官だが、まず、視覚は目で捉える。様々な説はあるものの、バスの場合我々が識別している色の中でも、おおまかな色はだいたい見えていると考えられている。実験では、水槽の背景にカラーを配置して、どの色に依存するかを調べたりしている他、心拍数を測定する実験も行なわれており、特に赤には大きな反応を示すことが知られている。
 聴覚は側線といわれる器官やウキブクロで受容し、耳に相当する器官へと伝える。側線は魚の体の横に点線のように伸びているのを見ることができる、あの線のことである(図参照)。側線は一個一個を調べると袋状の穴になっており、袋の底に感覚毛が生えている。この穴の中に水の波が入ることによってこの毛が揺れ、水流や音を感知する。この他にも鼻の働きをするクボミや目の周りにも側線器官を持っている。また、水中を伝わる音はウキブクロ(鰾)の中で共振させ、内耳、そして脳へと伝えられる。こう行った仕組みを総合すると、バスは水平方向の真横からの音に対して特に敏感で、また、音源をハッキリつかみやすいのは前方である、と考えられる。つまりは人間と同じような感覚なのではないだろうか。これについての実験も行なわれており、バスは音源を理解できているのではないかと見られている。また、触覚は側線による波の察知の他、魚の種類によっては皮膚の神経で感知するものもいる。
 味覚と嗅覚だが、基本的には口回りで感知するものが一般的である。味覚も嗅覚も化学物質の判別なので、感覚に差異はないと思うが、口の上部に水を通す仕組みの鼻孔があり、遠くのニオイとなるわずかな化学物質を嗅ぎ分けているといわれる。もちろん口内の神経でも味もニオイも感じられる仕組みになっているので人間に近いのかもしれない。ただ、水という溶媒の中に生活しているため、判断スピードは人間の比ではないと思う。

●ルアーを発見する順番
 魚がルアーを発見する順番は、まず音、波(最近よく波動と呼ばれている水圧変化のこと)を感知することが第一となる。色、姿の識別、味/匂いの判別はその次、となる場合がほとんどと考えられる。しかし、捕食の瞬間においては視覚がもっとも重要であることが分かっているし、遠く離れたエサを匂いによって察知することもある。

●反射という言葉
 よく「反射食いってホントにあるの?」と聞かれることがある。私は「ほとんどが反射です」と答えている。その理由はこうだ。魚がルアーにバイトするまでの順番を考えてみよう。まずバスの場合、本来捕食には聴覚で発見→アプローチ→視覚で認識→嗅覚で確認→攻撃またはバイト→味覚で最終確認→飲み込む、という行程がとられるべきである。べき、という言葉を用いたのは、この行程が大いに省略されている場合がほとんどだからだ。たとえば発見→認知→攻撃など、ルアーによく見られるような『確認抜き』の動作である。これを反射と呼んでいる。われわれ人間が夏、暑さのあまり冷蔵庫を開けて麦茶をとりだして飲み込んだらソウメンの汁だった、というのと同じものだ。つまり、いちいち確認していたらエサが逃げてしまう状況のときや、怒ったときに相手を確認なんてしてられるか?ということなのだ。もちろんニオイによる発見→捕食という場合もあるので確認という作業は「すべての感覚で感知した上での捕食決定を下す動作」と考えていただきたい。

◎視覚
バスが見る色や形について、ルアーとの関係を探ってみよう。

●色の基礎知識
まず、簡単に釣りの「色」についての知識の説明をしよう

★バスに色は、見えている。
 我々が見ているとおりかどうかは別として、バスには色が見えているようだ。例えばバスを入れた水槽の背景を赤、緑、なにもしない、の3パターンに交換して、バイオテレメトリーの手法を用いて魚の心拍数を測定すると、なにもしない状態に対して、赤では急激に拍数が上昇し、緑の背景では拍数が落ち着く。こういった実験などから白黒のコントラストはもちろん色彩などもかなり細かく違いがわかることがいえる。

★色選びは目線から。
 店頭に並ぶルアーの色を見てそのまま、アピールカラー、こっちは地味、と決めつける最近の傾向は、あまりよくないと感じる。なぜなら底をズル引きする場合やルアーを泳層にあわせる場合を除いて、バスは下から食いあげる場合が多い。このとき見えている色というのは、我々の見る店頭での目線の色と大きく異なるものがほとんどだからだ。

●白はナチュラルでもある
 魚の色を考えてみよう。背中は暗色、お腹は白というのが一般的な魚だ。これは実は理想的な保護色である。なぜなら鳥から狙われる背中には水(または底)の色、フィッシュイータ−から狙われる腹側には水面に同化するべく白がほどこされているのだ。つまり、下からバスを食わせるルアーなら白はナチュラルカラーに相当する、ということがいえる。我々が派手だと感じるのは、人間が目線より下でルアーを判断するからなのである。

●ベイトフィッシュも透かして見よう
 マッチザベイトを考えるのであれば、やはりベイトを魚の視点から見てみることも重要である。機会があれば水中に潜って上を通過する魚を見てみよう。案外白が目立たないことや、赤という色が消失する水深が目線次第で変わっていることがわかる。これは人間の目線でしか見ていなかった方には大きな衝撃につながるかもしれない。

★4つの視覚軸を理解する。
 ルアーの色を考える場合、「屈折と反射/白と黒/赤と緑/金と銀」というこの4つの軸を頭に入れておくとよいと思う。

●屈折と反射
 屈折は透過という言葉に置き換えることもできるが、生命感を「光の屈折、反射」で演出するならその具合をみる、ということ。たとえば「モエビは透けて見えるのでクリアカラーをチョイス」といったようなことから、「真っ暗闇などではメッキカラーを使うと反射光が強すぎ、恐怖信号になる場合があり、ホログラムやパールなどに換える必要がある」といったような場合まで、その応用範囲は多岐に渡る。

●白と黒
 先ほど述べたように白と黒は目線によってアピール度がまったく変わってくる。「ソリッドブラックでヒット」などの情報があった場合、ルアーの種類やリグからそのルアーのレンジと魚のレンジを予測しておくとよい。例えばもしそれが、水面での黒で釣れていたなら、これはアピールカラー、つまり高活性であった場合が想定されるのだ。
 また、周囲の環境光の変化によってもアピールが変わってくる。魚の目が順応するのは人間より遅く、いつまでも明るさ、暗さに慣れないことが多い。こういうとき、夕方は白、朝方は黒系にアタリが集中する。人間の目でこれを例えるなら、『暗い部屋と明るい部屋に出入りする白と黒の蝶を追いかけてみた』と想定して考えてみるとよいだろう。

●赤と緑
 赤と緑による釣果の差は、じつは魚の習性に大きく関わっている。簡単にいうならば、「赤に食性を示すのは回遊型」、「緑は居着き型」である。例えば日本でフロリダバスが混在する湖では、フロリダバスが回遊、ノーザンが居着くことで棲み分けている場合がある。こういった条件では、メインディッシュとなるエサが回遊=脊椎動物食、居着き=無脊椎動物食となるため、それぞれの視覚的な嗜好色が偏ってくるのだ。これは魚の実験でもよく知られている。ウォーターメロンがノーザンに効くといわれている理由も案外こういうことかもしれない。また、濁りや塩分濃度の急激な変化などによって視覚に制限が起きた時、赤ヘの嗜好はピンクへ、緑への嗜好はチャートへと変化するという検証も数度行なっている。

●金と銀
 反射のクロムカラーなかでも特にルアーカラーによく用いられるのが金と銀だ。使い分けについてはいろいろ言われているが、日光の照射量との関係が大きい。朝晩など日光が横から射すときや曇りの時は金が自然に光る。また、晴天の直射日光が当たる条件下では銀が自然に光る。銀は鏡ではないので、これは光の性質であり、この照射量によって自然にアピールするカラーが変わるのだ。ちなみにわたしは淡水の釣り全般を通して朝晩は金、昼間は銀を多用する(外洋はすべて銀)。すっかり暗くなると、この反射は恐怖信号に変わる可能性があるので、キラキラ光るクロムカラー自体の使用をやめる。この時暗くなればなるほどホログラムからアワビ張りへとチョイスを変化させると効果的であることが多い。これは反射光を一様に滲ませる効果を持っているからだと考えられる。

◎聴覚
バスが捉える音について、ルアーとの関係を探ってみよう。

●『波』が細かくなると『音』になる
 『音=波』これを詳しく説明すると、よくルアーが「水を押す」といわれるようなウマイ表現があるが、この「水押し」は『波』である。この『波』を魚はかなり離れたところから感知することができる。また、手で魚をつかもうと近付けると、目隠しした魚でさえ簡単に逃げてしまう。これも『波』を側線といわれる器官で感知したものだ。人間でいえばどちらの場合も触覚に相当する感覚のはたらきだ。逆に『音』は人間でいう聴覚という感覚になるが、これも水中を伝わる『密度(周波数)の非常に高い波』であり、これを側線で感知したり、ウキブクロで集音して内耳へ伝達するのは先に述べたとおりである。
 
●バスに聞こえる音
 通常、バスフィッシングでは、音を人間の耳で判断する場合が多い。工場での製作の段階でも同じで、せいぜい水槽の中で魚が反応するかどうかの実験しか行えないのが実情で、店頭で一般の人が「これは何Hzくらいの音だ。もうちょっと低いのがいいなあ」などと言っているとハッキリいって周りに人がいなくなるくらいアブナイヤツ扱いされてしまう(実話)。しかしながら、魚は音と波でルアーを発見するのだ。最低限の知識くらいは、こだわらないわけにはいくまい。
 バスに聞こえやすい音というのは個体差があるものの、通常3〜400Hzあたりを中心に、50Hz〜1500Hzあたりまでの周波数帯である。人間が20kHzまで聴こえることを考えるとかなり狭い範囲ということになるが、空気中と違い、水中ではこのくらいの音を感知することで十分生活できるのであろう。これ以上や以下の周波数の音は感じ取ることはできるが、判別などは難しいようで、脳波や心拍数に明確な影響はあらわれない。そのうえ、高周波が連続して発されると不快感を感じる個体も多い。
 ルアーの発する音は先述の魚の可聴周波数帯よりやや高めに作られていることが多い。しかし、やや高いシャラシャラした音が、連続して発されるルアーでは、魚はスレやすい。これは、あまり食性と関係ない音、痛い目にあった記憶、または群れのウチの最初に釣られるリーダー的存在(チャレンジャー)が危険信号を発したことなどへ結び付けられ、『学習』されてしまうのだ。これに対して低いゴトゴト系の音のするルアーだと常に生活に必要な音であるため、痛い記憶と結び付けられにくい(もちろん結び付けて学習される可能性は餌よりも大きい)。だいたいゴトゴト系のルアーで200〜600Hz、シャラシャラしたものは800〜2kHzとなる。

●水中の音
 水中では音は非常に伝わりやすく、秒速約1500mと、なんと空気中(344m/s)の4.5倍の速さである。しかも、陸上では考えられないほど遠くまで伝わり、音も小さくなりにくい。このため、水中では流れ込みの音など、絶えず離れた場所の音が入り乱れていることになる。湖ならまだしも、川などは雑音のまっただ中となる。ただ、こういった石や水の音は低いのでだいたい100Hz以内におさまっている。この雑音を『環境雑音』と呼び、この雑音の中で同様の周波数の音を発しても魚にはマスクされていて聴き取れない。これを『マスキング』と呼んでいる。つまり川など環境雑音の多い場所での使用ルアーはある程度高い音のほうがアピールが強い、ということが言えるわけである。
 また、ブルーギルやニジマスなどの実験で、魚の大小に関わらず、遊泳時にだいたい25〜100Hz前後の周波数帯の音を発している。湖を回遊して小魚を探すタイプの魚はこういう音をたよりに餌を探すことも多いようだ。
 このほかには肉食の魚が水中で餌を吸い込むときには2〜4kHzの「ジッ」「チャッ」という音が見られる。これらの音は、魚にとっては判別はできない範疇だと考えられるが、非常に短いパルス音であるため不快感は与えられない。このためこういう音が信号になって捕食が始まる、ということも考えられる。非常に高いシャラシャラ系の音のするルアーを、ほんのチョコッと鋭くトウィッチさせるような音だ。

●でかいバスに効く音
 これまで自分なりに研究して苦労したことがある。それは個体差だ。人間にも当然見られるのだが、バスのような大型の肉食魚の場合は、大きくなればなるほど個体差が強く出てくるようで、一概にこの音がどう、という内容を断言できなくなってしまうのだ。自分が総合的に感じているのはその場で釣れているルアーより若干低い周波数をもつルアーが「そこにいる、でかいバスが食う音」を発しているように思える。このことについての詳しい話はまたの機会にしてみたい。とにかくバイブレーションやノイジーで中型が爆釣した時に、これらのサイズにかまうのが時間の無駄である、と感じられる方だけ試していただきたい。数はダントツ落ちるがバスのサイズがかなり上がるはずである。同じルアーで少し低い音のするルアーがあれば…。


★★★★キャプション★★★★
側線器官の略図。袋状になっていて、感覚毛が周波による水圧の変化を感知し、この信号が神経に伝達される。
★★★★★★★★★★★★★★

◆バスの習性を考える
◎群れの法則(バスワールド2002年4月号掲載分)

 スクールバス。われわれアングラーがよく耳にする言葉だが、これは群れているバスのことを指している。しかし、魚の群れをすべてスクールと言うわけではない。ましてやその群れの形成に関して、由来が全く異なるものであれば釣果に響くことにもなってしまう。
 前回まででもちょっと恐ろしい内容であったが、さして苦情が出なかったので、今回も挑戦。いままでタブーのように語られることのなかったバスの集団社会へのアプローチを試みた。『群れ』に関する基本的な知識や、群れを利用した釣法までを紹介していきたいと思う。


◇群れの形成

●群れの形態
 魚の群れはその密度、方向性から4段階に分けられる(C.M.Jr.Breder/1965)。
★solitary:単体でいる魚、佇む魚。
★aggregation:漠然とした魚群。
★school:整然とした魚群、同サイズによる一定間隔で形成、同方向を同速度で進行など、統一された指向性を持つ。
★pod:密集。体が触れるほどに近接したものを指す場合が多い。
 バスの場合、上記のタイプのなかでもpod以外のすべてがあり得る。スクールバスといえるのはほとんどの場合幼魚期〜若魚期の同サイズで群れている状態だ。

●群れの定義
 動物の群れとは生物学的に『社会性のある集まり』と定義されている。こんなことを書いても面白く読んではもらえないとわかってはいるが、あえて読んでいただきたい。実は釣り、ことルアーに関しては、この定義こそがとても重要な情報なのである。事実、これを知っている人にしか釣れない魚がいるのだ。
 バスの群れは様々な要因で形成される。ひとつは一生、あるいはある時期だけ集団で生活する習性や親が子を守る期間内の集団などの必然性に由来する魚群。もひとつは一定のエリアに産卵巣を形成するために集まる造巣性、水温やウイード、シェードなどの適合環境への誘引による集団、走流性などの性質による集団、小魚を捕食するための不連続に形成される集団などの偶発的要因による魚群。
 A.E.Parr(1927年)の古い文献によれば、前者のような生来の魚群を『恒常的魚群』と呼び、いかなる環境条件の中でも安定していると定義付けている。また後者の魚群を『偶発的魚群』とし、環境要因の変化によって集合、離散が容易に起きうるとしている。これはもちろん水質悪化や日照条件の変化などもふくまれるが、釣り人という存在に起因するストレスも考えられる。つまり後者の場合、ひょっとすればアングラーの腕次第で群れを離散させてしまうことも考えられるのだ。
 恐ろしいことに、これらの集団は魚のことを知らない人から見ればどれも同じような群れに見えるかもしれない。しかしながら群れの原因をひも解いてみれば釣れる魚、釣れない魚もあっさり判明し、群れの習性を利用すれば、釣れない魚を釣るというオイシイことも可能になってくると考えられる。

●社会の形成
 群れには社会性があると述べたが、この話をバスの集団索餌という行動に絞って考えてみよう。バスのような生きたエサを追う魚は、この「社会性」によって群れの存続を制御していると考えられる。例えば、エビというエサがメインだった群れが季節変化や水質変化、水温変化などにより激減したとすれば、おのずとその群れは絶滅の危機に瀕してしまう。エビを食う群れはエビ以外の餌に簡単にはシフトできないのである。なぜか。現代の日本人に『食用イモ虫を食え』と言っていることと同じなのだ。これこそが群れの社会性である。
 「食べて無害のイモ虫を人間という動物が食べる」この行為は非常に簡単なはずだ。しかし、その文化も過去の事例もなければ、このイモ虫に手出しをする人はごく少数に限られてしまう。この「手出しする人」を私は『チャレンジャー』という名称で呼んでいる。チャレンジャーは、死ぬかも知れないというリスクを負いつつも、初めに食する好奇心を持っているために常に他人の支持を得ることになる。いわゆる『ファッションリーダー』と呼ばれる存在だ。
 話をバスに戻すと、バスは新しいエサを食べてみなければ生きていけない。このために、群れの中には自然に『チャレンジャー』があらわれる。初めて食う餌を、メインのベイトに据えることができるのか、やはり大衆は引っ込み思案気味に付いていくことになる。こうして数カ月のあいだに、チャレンジャーは、自然と群れを率いるリーダー格という存在になっている。こうしてバスの社会が形成されていくのだ。

●チャレンジャーの引き起こす現象
 ルアーフィッシングにおいて、チャレンジャーがバスの群れに引き起こす現象を述べてみよう。
★リリースしたら釣れなくなった
 見えバスがたくさんいて、一匹釣るときは大勢が反応したのに、その魚をリリースしたら全員が消えた、もしくは釣れなくなることが多い。この場合釣った魚がチャレンジャーであった可能性が高い。人一倍(魚一倍!?)注目を浴びる魚なので、傷付いて帰ったり、遠くへ逃げたりしたことで、他の魚も警戒しはじめるのだ。また、傷付いた個体は群れへの信号として、警戒音や恐怖物質となるアミノ酸を出すことが非常に多い。これも群れの存続に関わる機能で、淡水魚の場合、傷付いた魚には近寄らなくなったりする。
★大きい魚から釣れる
 連発するときに、大きい魚から釣れてくることがある。これは好奇心の強い個体から順に釣れていることが考えられる。2尾めあたりから気付けば、ライブウェルなどを利用してリリースを止めることで連発を持続しやすくできる。
★釣った魚に付いてくる
 スモールマウスバスやフロリダバスなどの回遊色の強い魚に見られる現象だが、釣れている魚にべったりと付いてくる魚がいる。付いてくる個体が極端に大きい場合はエサとして見ているようだが、同サイズの場合はチャレンジャーに抜け駆けされた準チャレンジャーである場合(または逆)が多い。一般大衆はチャレンジャーがリリースで帰って来なければ次のキャストで釣れる。また、話は変わるがこれらの種類は「成群性が強い=回遊性が強い」という法則にあてはまっているのでこちらにも注目したい。



◇池原のフロリダバスの例
 じつは私がトップで釣っている秋の池原のフロリダバスというのも、この社会性を利用した釣り方が絡んでいる。過去にさんざん各誌に書いたことだが、今回こそ理解してもらえそうなので、少し紹介したい。

●集団回遊を行う
 フロリダバスは、これまでのテレメトリーによる追跡研究からノーザンラージマウスバスよりも一日当たりの移動距離が長いことがわかった。私は、この点に注目してフロリダバスが小魚をメインに追っているのではないかと推測した。胃内容物の調査から、小魚の割合がエビに勝るのはその年の9月末〜11月であることをつきとめ、心拍数が著しく上昇する時間が早朝であること、その索餌形態が『不連続な統制の緩い群れ』であることに注目した。
 この『群れ』は普段の昼間はさらに理解不能な回遊(あまり捕食なし)を見せるが、早朝だけは岸に沿って小ブナなどのコイ科の稚魚を捕食して水面直下を回遊していた。驚くことに、その群れを形成する個体のサイズがそろっていなかった。はじめに40cm程のバスの群れ、次に65〜70オーバーの群れ、続いて50cmクラス、ふたたび40cmクラス…ダラダラ続いて最後に20〜35cm程の小さいバスが岬、ワンドなどの要所要所に残って、食べたりないのか索餌を続ける、という形に見えた。1997〜1999年と観察を続けていたので、どうやらそれが群れの社会性というパターンなのではないかと仮説を立てた。

●わざと左に配置された後輩
 この不連続でダラダラと続く群れにもやはりチャレンジャーがいる。通常の考え方だと最も大きなサイズの70オーバーあたりのバスがチャレンジャーとなるが、この場合サイズがケタ違いに大きい。どうやら用心深いことは間違いなかったので、初めに来る40cmクラスに疑いを持った。1997〜98年と、このバスが先に食って来たため、他の魚が釣れなかったのだ。そこで、小型のライブウェルを持ち込み、最初の魚をキープしたり、初めにバスが回ってくる岸の左側に後輩を立たせ、先に40cmで遊んでもらうことにした。これらの努力(すべて他人の努力)の甲斐あって、数々のビッグバスを手にさせてもらったのだ。あのとき左側に立たされた覚えのある後輩様、ごめんなさい。私の道楽のための犠牲でした。

2017年2月3日金曜日

テクニック他(2003年3月BW誌)

この原稿でアカデミックレイクとしては終了の模様。ラストだけお堅いイメージ捨てて『ですます調』になってますね。微笑ましい。偶然にも実釣記事で結果が伴ってて人気出てきたらしくこのあとバスワールド誌には実釣記事メインになったりしました。

話が変わりますが、明日からフィッシングショー大阪ですね。TULALAは例年通りUOYAブース内に間借りさせていただいて出展予定です。横浜で人気爆発だったリスも再び登場予定。
※中の人は未成年じゃないです。そしてこちらの代打メンバーの提案を断られ、単独でリスに志願してきてますので、あくまで本人の意思です。こき使ってませんので誤解しないでください(笑)。









Academic LAKE Vol.13

◆最終回
 ついに当連載も最終回を迎えることになった。これまでの話なども含めて、一部バスギア2003に掲載されているので是非ご覧いただきたいと思う。今回は最後ということで、私が釣りに対する考察の中で『最も重要視していること』について書いていきたいと思う。これはテクニックでもなんでもなく、ただただ魚になって考えてみたかった、という私なりの努力の成果なのかもしれない。

◎普遍性と相違性
●共通したパターン、わずかな違い
 釣りに限らず、世の中の全てのものは『共通点』と『相違点』の連続で構成されている、と思う。例えば『昨日と今日、近所のある池にバス釣りに行ってテキサスリグで一尾づつ釣れた』とするならば、何がこの2日の釣果に共通しているのか、なにが違うのか。これを瞬時に見つけだして組み立てていくのが私のやり方である。この連載において、もっとも面白いと感じていただいた部分はそこにあるのではないだろうか。「こういうことって、あるある」とか「これは僕の体験とはちょっと違うかなあ」とか、様々な感想を持っていただいたが、やはりこの誌面で、これまでの雑誌記事では言葉にできなかったことを言葉にしたことによって、皆さんが経験した、莫大な数のデータとの照合が行なわれたのだと思う。このデータの照合作業こそが、知らず知らずのうちに「魚の視点で考える」の本質に近付くカギを握っているのだ。
 例えば先ほどの例でいうと、昨日釣れた一尾と今日釣れた一尾の共通点は、パッと見てもルアーが共通していることのほかに「一尾」であること、「バス」であることがわかる。その他にも季節、場所、口で食ってきたこと、アングラーが同一人物ということで共通していることも挙げられる。これだけでも相当なヒントとなりうるのだ。こうしてどんどん『共通点』を見つけると、たった2尾のバスからシーズナルパターンの片鱗やその釣り場の有効な釣り方が見えてきたりする。また、『相違点』はピンスポットから時間帯、フックの刺さる位置に至るまで、うなるほどある。微妙なものはおおまかな共通点の前では無力なので、より大きな違いが重要になってくる。
 例えば先ほどの例で、時間帯が前日と5分の違いであれば、これは「だいたいこの時間に食うのでは?」という共通点の中に含まれるようになるし、1時間違いであれば朝、昼というように時間帯の共通点でくくることができる。しかしこれが8時間も離れていればどうだろう。時間はパターンを組み立てる考え方から外すことができるきっかけになるのではないだろうか。こうなれば残りの「場所」の共通点や「天気」「サイズ」「ルアーの色」「リトリーブスピード」は?といったような共通しそうな部分を探すようになる。
 もちろんこれでルアーの色とサイズが共通したなら、それだけでも大きなヒントだ。二日間にわたって再現性のあるパターンが存在したかもしれない、というところまでわかってしまうのだから。
 これらの抽出をものすごいスピードで様々な視点から組み立てれば、釣り理論の材料などはたくさん用意できてしまう。これを最後に裏付けるために、最大の相違点である「他人」を利用するのだ。例えばその時期、エリアの特徴、時間帯、ルアーが決まっていて、自分以外の人が同じように投げても釣れたなら、そのパターンはより確実性が高くなる。私はこの最後の作業を、読者の皆さんにおまかせしていたという、とんでもない卑劣なヤツだったのだ(笑)。

◎魚に近づいて考える
 「魚になったつもりで考えよう」よく、バス釣りの教書にでている言葉だ。これこそ釣りの理想ではないだろうか。遊ぶ対象となるその生物になりきることによって、魚の置かれている環境に目を向けて自然を守ろう、と思うようになったり、どれほどの力で生命は壊れてしまうのか、というようなことがわかるようになってくる。
 魚の視点から見る、魚の感覚で音や温度、味を感じる。こういう様々なアプローチをするためには、魚と人間の間にどれほどの感覚の共通点や相違点が存在するか考えなくてはならない。まず重要な点は水の中と外の生物という違い。重力に従い、地面に這いつくばって生きる我々と体が浮いている魚との感覚の違いは一見して相違点だらけだ。ひとつひとつ立場を変えて魚の感覚に近づかなくてはならない。
 水の存在によって生じる違いはまず、視点だ。以前も書いたとおり、多くのフィッシュイーターは我々と違って目線より上のものを食べて生きている。しかも一日中その食べ物のことを考えて生きているのだ。これを一日一時間も魚のことを考えない我々が、いくら考えても魚のレベルに到達することは非常に難しいといえる。
 音に対しても水中というのはダイレクトだ。どれほどかといえば密度が833倍も高い空間の中にいるために、伝達速度が空気中(344m/s)の約4.5倍もあるのだ。当然この水の中で暮らしているのだから人間との感覚の違いは大きい。
 これら全ての相違性という困難を乗り越えて魚に近づいて物事を考えられるのだろうか。それがこの連載の課題であり、釣りのもう一つのオモシロさである「自然に近づくこと」なのだと思う。
 次に変温動物と恒温動物の違いという点。陸上の恒温動物である我々の考え方だと、急な温度変化もいつものことなので、たいしたダメージではない。しかし、変温動物は違う感覚で温度を捉えているに違いない。さらに水の中である。例えばお風呂の湯沸かしで4度も温度が違う水が出てきたら、すぐにその微妙な差異に気付くだろう。空気中で同じ温度差の温風が吹き出してきたならどうだろうか。温度に対して置かれている状況がまったく変わってくると思う。余談だが、これは釣った魚を手で触るということについても同じで、もしかすると我々が思う以上にダメージを負っているのかもしれない。もちろん変に暴れないことから、魚自体に手の温度が拷問のように熱いわけではないだろうが、その皮膚はかつてない高温を経験していることになる。これがヤケドとなり感染症につながっていくことも考えられるのだ。

◎唯一のテクニック!?
 私は釣り自体まったく上手くないのでテクニックについて触れることなど滅多にない。ただ、私ができるワザの中でただ一つだけ他人に隠していたテクニックがある。ヘタクソな私が、ヘタクソなクセに魚を釣り続けられるのは、要所要所でこの部分に注意しているからに違いないと思っている。今回は最後ということで、これを書いてみたい。
 そのテクニックとは、「糸抜き」である。激しいトウィッチでもジャークでも、おとなしいシェイクやただ巻きでも、私は水中でラインが振れる幅をとらないようにしている。常にロッドティップのしなりを利用して水中から糸を抜くようにしてルアーをアクションさせる。こうすることによってラインは動かない物体という理想の存在に近づき、運動しているルアーという存在だけが、より浮き出ると思うのだ。糸は抜かれて縦に動いてもそのシルエットは変わらないが、ルアーは抜かれた分移動したことになる。さらにルアーのアクションも目立っている、という仕組みだ。ただただ竿を立ててルアーとラインの角度を一定にしながらラインと竿先でアタリを見るのがコツだ。
 このテクニックの詳細は、誰かがどこかの誌面で知らず知らずのうちにやっているだろうし、勿体つけたり、練習が要るほどのたいした技でもなんでもない。ただ、それが言葉にできるかどうかであって、竿の角度さえ気をつければ誰でもいきなり実践できる簡単なテクニックだ。というか私はピンスポットへのキャストも、アタリに対する鋭敏なアワセもできないダメ釣り師で、これしかできない。だからこそ、このテクニックをこの連載の最後に送りたいと思う。これが私の、いや僕の読者の皆さんへの感謝の気持ちです。長い間ありがとうございました。



小川健太郎/26才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。ホームページはhttp://ogaken.org

2017年2月1日水曜日

ルアーチョイス2(2003年2月BW誌)

ルアーチョイス1は見れません。この原稿の前の月である1月、なぜか書いた元原稿を無事出稿後、飛ばしてしまいました。理由は全くわかりませんが、いくつかの原稿がバックアップできておらずに消えています。なのでルアーチョイス1は2003年1月号、2月号、3月号のどれかに掲載されていて、どれかがカラーページの実釣出演記事(web転載不可記事)になるはずです。


Academic LAKE Vol.12

◎小川流(?)、釣れるルアーチョイスその2
 前回述べた『コンスタントに釣れるルアー』には、ある程度の法則があると思う。そこで、今回はその釣れるルアーについての法則性を示していきたい。

◆釣れているルアーの法則
 簡単にこんなことを言い切りのカタチで書くと絶対に怒られるのはわかっているので、「あくまで僕の目から見た釣れるルアーの共通点なので非常に偏っているかもしれない」ということをつけ加えておきたいと思う。

●違いがあるのでは?
 まず大切なのは『釣れやすいルアー』と『釣れ続くルアー』の違いを見抜くということ。『釣れやすいルアー』はスレやすいことが多い、という欠点を持っているが、集魚効果においては絶大な威力を持つ。『釣れ続くルアー』はスレにくいが、遠くの魚を寄せてくる効果が少ないものが多い。これはルアーのアクションによって単純に分けたりもできるし、その日その場の状況に応じて変化する場合もある。ルアーカラーの法則にしてもそうだ。ちなみにおおまかにミノープラグなどの動きを分けたときにはウォブリング寄りのアクションを見せるルアーが『釣れやすいルアー』であることが多く、ローリング寄りのアクションをするルアーが『釣れ続くルアー』であることが多い。もう一つわけるなら、泳ぐルアーは頭と尻を振っているのだが、この支点となる位置が前寄りのルアーのほうがスレにくい気がする。これは頭を振っている幅が原因なのではなく、おそらく尻側の水を押す力が大きくなるためだと思う。モチロン魚とルアーのレンジの差、ベイトフィッシュのアクションの違いで起きる例外もあるが、私の場合ほとんどそういうイメージで捉えている。
 『釣れ続くルアー』は魚がいるエリアのわかる人には非常に効果的なウェポンとなる。私個人はとても釣りの技術が下手なのもあってピンスポットへのキャストなどに微塵の魅力も感じない。適当に投げたなら、そこに魚のほうから飛びついてくれば、そっちのほうがオモシロイと感じているのだ。このため一尾で非常に満足することになり、釣れ続く必要もないので集魚効果のほうに重点をおいた『釣れやすいルアー』のほうを作ることになる。その分信じられないほど魚が寄りやすいルアーを作らなければならないのだが、こういう視点からキャスティークやSIN-ZOベイトが生まれたように、これにもいくつかの法則性があると考える。

●釣れやすいルアー
 ミノーで最も代表的なのはやはりラパラ・CD5だろう。誰が使っても大差なく安定した釣果を供給できるのはおそらくしっかりしたウォブリングのアクションがキーとなっていると思う。またクランクベイトにもこのタイプの名作が多く、私はビルノーマン・DD-22とダイワ・ピーナッツを特に愛用している。またここ数年で最も驚いた、このジャンルのルアーはプラドコ・スウィミンイメージというショートビルクランク(シャッド?)だ。このルアーは春先に恐ろしい釣果を誰でも出せるパワーを持っている。余談だが、クランクは潜らせてレンジに到達したら、スピードを落とし、一定のスローな速度で巻いてくるような使い方が多い。多くのクランクベイトはロッドをかなり立てて使用しているが、スウィミンイメージ使用時はショートビルのためレンジの都合もあって竿を寝かせている。ロッドの角度が釣果や釣れる魚の種類を変えてしまうこともあるので何かのご参考に。
 キャスティーク・トラウトベイトもこのジャンルに入れることができる。こんな大きいルアーに魚が寄ってくることで驚いたものだが、ルアー本体の弾力で自発的に左右に波を起こす仕組みになっているので、考えようによっては生物のような動きである。集魚効果があるのは当然なのかもしれない。

●自発的な波動
 じつは、私の思う集魚効果のひとつに、この『側方(斜め後方)への自発的(に見える)波動』というものがある。ミノーなどのプラグは、水中で曳くとリップで受けた抵抗を利用して体を左右に振りながら泳いでいるように見せる。しかし、きれいに泳いでいる一般のミノープラグはほとんど後方の水を掻き回しているだけに過ぎず、側方へはそれほど振動を伝えない。これでは水を掻き回すただの物体で、水を掻き分ける部分をリップ任せにしてしまっているので、水を押すわけではない。したがって視覚的な効果以外は望めないのだと思う。キャストが魚のいるところに正確にできる人間ならこれでも十分かもしれないが、はじめてのエリアで見当もつかないや、私のようにモノグサな人間の場合は、魚に出会うまで相当な苦労を強いられてしまうだろう。
 そこで、魚の方から寄ってくるプラグを探す(または作る)必要があるのだ。魚がついてくるルアーを総合して考えてみると、ニオイや色、反射など、他のルアーにはないなんらかの信号を発しているものだが、ミノープラグの『泳ぎ』という部分は、見えないこともあってなかなかその信号について触れられなかったのだと思う。しかし、泳ぐ魚は左右に水を掻くようにキックしている。これはただ動かされている棒と大きく異なる点だと思う。これを曲がらないミノーで再現するには無理があるというものだ。動きが多少変になるか、ラパラのように振り幅の中心軸をリア側に持っていかなくてはならないだろう。そこで懸命に私がない頭を絞って考えたルアーがザ・ナイフ7cmカウントダウンというルアーだ。このルアーはボディ形状が偏平になっているのだが、ウェイトの位置が変わっている。振り幅の中心軸はそれほど後ろではない状態で、リア下部にウェイトを配置しているのだ。これによってウォブリングで動いたテール側が、ボディが扁平なため下部がスライドするようなカタチで倒れ、慣性でボディが余分にブレたカタチで水を押してしまう…という大変わかりにくい構造を考えだしたことによって、ただ投げて巻くだけで集魚効果のある波をつくり出すことができた。この効果があったのか、公開テスト初っ端初キャストから大勢の見ている前で64cmのバスを釣ってしまったのだ。自分では予想もしていなかった結果で、しかも本当に出来過ぎた話になったので、これはマグレだと見て全然いいと思う。しかしSIN-ZOベイトも水面ジャンプテスト中に60アップに恵まれたので、何かの縁を感じずにはいられない。とりあえずその後の釣果も最初ほどのインパクトはない(笑)ものの絶好調で、魚のほうから襲ってくるため、この波動に関する読みはほぼ間違いないと考えている。

●釣れ続くルアー
 ミノーの世界ではローリング主体のものがそれに相当するのだが、リップがあるとどうしても頭と尻の振り幅の支点となる中心軸が後側へ行ってしまいがちになるので、できる限りリップレスのミノーを使い慣れたほうがスレにくく、有利であると考えている。シーバスルアーになってしまうが、アイマコモモSF125、K-TENリップレスのようなリップレスタイプのミノーは頭を支点にしているので魚の遊泳時の中心軸に近くなる。この2つのルアーに限ればラインアイも水受け面の前方へ来ているため中心軸がより前方へと来ることになる。このためスレに強く、釣れ続くことが多いルアーなのだ。バスが釣りやすいルアーにもかかわらず、『ソルト用』と書いてあるだけでシーバスにしか使わないのはもったいなさ過ぎるのではないだろうか。
 ちなみにSIN-ZOベイトの心臓リグは水面直下をスローのただ巻きで使うとこのタイプの釣れ続くルアーに早変わりする。この場合、不意なダートなどもさせてはならず、丁寧に一定層を巻くと、よい結果が出ている。




小川健太郎/25才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。ホームページはhttp://ogaken.org

2017年1月30日月曜日

釣り場の見分け方2(2002年10月BW誌)


(写真はデジカメ時代に入ってからのものです。テラピアの養殖餌袋製バッグ。)
この原稿の少し前に編集部と話し合って、ページ数を減らしてもらったと思います。今考えてみれば普通の内容ですが、この頃はおそらくこんな初歩的なことも紙面では伝わってなかった時代だったのでしょう。なんか他の原稿見ても懸命に各紙で啓蒙してます(笑)。本当に伝えたかったことはこんなことじゃないのに、前提が違うと話が伝わらない、ということで。

話は変わりますが、今週から大阪ショー週間が始まりますね。問屋さんの売り出しと同時進行でショーの設営、ショーの業者日、と釣り業界が一番忙しくなる一週間です。この原稿を書いていた頃のショーはシーバスバブル期で、ソルトで無意味に活躍していたワタクシには、体力的に非常にツラい期間のはずでした。ところが、引退して仕事量が1/100にもなったであろう今の方がツライ。これが若さの違いなのですね…。



Academic LAKE Vol.10

◎釣れる釣り場の見分け方・その2(流れ/波立ち編)
 自分をはじめ、陸っぱりでバス釣りを楽しんでいる読者の皆様のために、『釣り場でどこを選ぶのか』の切り口を、前回からいくつか紹介している。これらの切り口はどれもが互いに相関関係を持っていることもあり、一つイイ条件を見つければ、あとの条件が附随してくることもよくある。ウイードのように好環境を見つける指標となる要素もあるので、どの要素を探して行けば魚が釣りやすくなるのかを考えてみたいと思う。


◆流れ
 水の流れは魚を探す上で重要なキーになる。流れを読み取る方法としては、地形や環境からの判断、水の色、波立ちなどさまざまな方法が存在するが、やはり危険のない範囲で泳いでみる、またはウェーディングなど、自分の身体で確かめることも重要であろう。基本的に川の流れのように一本の真直ぐな流れでも、底層、宙層、表層という順番で速くなっていくように思う。これらが水中の石などのストラクチャーや地形、高低差などによりねじ曲げられて、巻き、ヨレ、タルミなど複雑な流れを形成するのだ。流れの中でベイトを捕食する際、フィッシュイーターはこれらの流れより生まれた溝のような流れの緩むゾーンに潜むことが多い。通常岩陰などがこのゾーンに相当することが多いが、中には何の変哲もない宙層で常に変動するゾーンであることもある。こういった場合は波立ち方を注意しながら見て探すほかはなく、トラウトの本流釣りや川のシーバス釣りなど多くの経験が必要になる。この手の波の水面への変化の出方はまた機会があれば説明したい。
 流れのある釣り場では、魚が流れのどの位置についているかが重要になることが多い。流心を中心にその脇の流れの中、淵などの深場、流れのないわんどと、様々な場所に着く可能性がある。一般的には温度が高い夏の昼は流心、寒い冬は深場が狙い目で、春秋はベイトの条件がエビなのか小魚なのかで変わってくるようだ。ちなみに小魚がベイトの時は流心の脇の流れに着いていることが多く、ミノーやノーシンカーワームなどを横切らせて釣ることになる。このとき、流れに対してどう投げるか、どう横切らせるかで釣れる魚のサイズが変わってくる。キーは糸のタルミかただと考えているのだが、これは長くなりそうなので先ほどの波の変化とあわせてまた今度ご紹介したいと思う。

◆波立ち
 波の立ち方は流れや底質の変化の他に、水質や水温の変化、風を乱すような障害物によっても大きな変化が現れやすい。障害物は風が当たらない部分を作るので、水面にはポッカリと波立ちのない部分が形成される。ラインを風に乱されないようにしたい場合や、水面をすすむラインであたりをとる際に利用しやすい。水質や水温で起きる波立ちの変化は釣れるというより釣れにくくなる可能性をもっている。
 例えばターンオーバーが起きはじめたとき、起きていないエリアと起きているエリアで波の立ち方に違いが生じたら、起きていないエリアへと移動して難を逃れることができる。また、風が岸から吹くことによって水面の水が沖へ押し出され(吹送流)、押し出された分の補流として岸側の低層の水が湧昇してくる現象のときも釣れにくいことが多い。このように通常底から来た水は低温なので急にこれが起きるとそのエリアは活性が下がる可能性が高いのだ。この場合は、風が吹いているのも関わらず、岸側の水面の一部がぺったりとしていたりするので見つけやすい。陸っぱりなら風上側になるときに生じることが多いので要注意。
 この他、河口域での塩分濃度の違いから起きるものや、流れ込みの温度変化などから起きるものもあり、場合によってはこの境目に沿って魚が回遊することも考えられる。スモールマウスバスやフロリダバス(秋のバックウォーターなど)では、こういう波の差異が起きる境目を、小魚を意識したルアーで通してくるパターンも存在し、どう猛なバスの姿を見ることが多い。

◆方角
 海の場合大きなキーとなりうる「方角」だが、淡水ではあまり気にされることが少ない。季節が冬から春の季節であれば、暖かい南風の影響によって、方角の要素は格段に影響が大きくなる。(←秘密にしていたことがあり、掲載時に省略)日本という国での太陽は南側中心に出ているので北の方角に向かって『温度』と『シェード』ができやすい。夏と冬はときどきこのようにして方角を考えることがある。また、バスプロの方には風向きと方角による釣果への影響に詳しい人が多いようなので、ガイドサービスなどを受ける際に学ぶことで、現場と直結して考えることができると思う。

◆植物、植生
 植物は水上水中に関わらず、魚やエサの着く場所である以外に、生えている植物によってそのエリアの水温傾向を教えてくれたり、水質の安定を約束してくれたりとメリットが大きい。また、植物は、生えているということだけでそのエリアが好条件を満たしている可能性を示唆しており、植物を知れば釣りには大きく役立つことは間違いない。しかし、以前の連載でご紹介した通り水中の植物となるウィードの資料が少ないため、プロの釣り人でもこのジャンルに詳しい人は少ない(機会があればまた紹介したいと思うので編集部までリクエストして下さい)。


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小川健太郎/25才。住所不定の車上生活者。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られる。SIN-ZOベイトなどを開発。ホームページはhttp://ogaken.org