2017年1月20日金曜日

質問1色の話&余談(2002年3月BW誌)

小難しい話を封じられ、とりあえず質問コーナーに逃げることにした我々(担当+執筆者)。意外にこの回が好評というか、質問が読者ハガキやらホームページやらにホントに殺到して、しばらくこれ捌きましょう、ってことに落ち着きました。折しも帰路を決めない海外遠征(20万円使い切るまで滞在予定で、帰国後に起業、まで)を控えていたため、他の連載含めて先に全部書き溜めが必要で、ちょうど助かりました。質問者には以前のSFNEWSの読者さんやソルトの知り合い、大学の後輩なんかの名前がチラホラしてて、すごい胸が熱くなった記憶があります。
今はやりたくないけど、質問コーナーとかをやったら…多分内容は濃いけど人数はショボいでしょうね。やっぱり当時はバスバブル、シーバスバブルだったのでしょう。

(以下↓原文/アドレス等は伏字)

Academic LAKE Vol.6

質問コーナー(色編)

 当連載のプロフィールにホームページURLを掲載してから、面白い質問がメールで私小川宛に寄せられるようになった。メールの返信では、一人だけが読むことを前提に何千字と書くことになり、これも適当に読まれては残念だ(というよりメールの返信が苦手というウワサも)。しかもありがたいことに質問が多すぎて真面目に返していては仕事すらできない。そんなわけで今回から、ちょっと趣向を変えて、これらの質問にマジメに誌面で答えてみたいと思う。

※今回は質問者の了承を得ていないので匿名にさせていただきましたが、次回からはペンネーム以外にも住所氏名なんかもしっかり記入して送ってみてね。採用分に個人的にオリジナルルアーのプレゼントを差し上げたいと思います。とりあえずバスワールド編集部「アカデミックレイク」係、もしくはメール●●@●●●マデ(メールのレス強要だけはご容赦下さい)。

◎色の質問
 シーバス方面でも、カラーについての活動をしているため、色についての質問がやはり圧倒的に多い。どの色が釣れるかという質問は何をどう答えていいのかわからないので、質問が多かった色(黒、赤、アワビ)についての私の考えで答えてみたい。

Q:黒はどうして釣れると思いますか?(兵庫県 A.Tさん 他5名様)

A:質問の内容には様々な条件が書かれてありましたが、その条件に自分が身をおいていないので確実な答えはできません。しかし、おおまかな答えはどこでも共通していると思うので、その部分について考えてみたいと思います。
 みなさんが黒いルアーでイイ思いをされたのは、基本的に夜、濁りなど視覚的にはかなり悪条件の元、というのがひとつ。そして水質がクリアならトップウォーターなど、魚の目線より極端に上でのルアーへのバイト、というシチュエーションが多いと聞きます。一部日中のクリアウォーターという条件の人もいます。はたして魚には、黒ルアーがどう見えているのでしょうか。
 黒は釣り具店でも目立たないので、ナチュラルなカラーと捉える方が非常に多いカラーです。人間は下を見ているからです。しかし目線より上では、夜といえどシルエットがくっきりし、アピールの強いカラーとなります。このため多くの魚に発見されることとなり、しっかりしたフッキングへと持ち込みやすくなると思います。
 次にほとんどの魚の背中がなぜ暗色なのかということも重要になってきます。これは、ボトムの色との保護色である、ということなのです。したがって上から見おろした黒系の色は見えにくい色となり、積極的に動かさなくてはうまく発見できない魚もいます。このため、もし黒で爆釣するならば、目線より上でのアピール条件が必然的に多くなってきます。
 また、逆にスレた条件下では「見つけにくい」色のほうが有効となります。つまり目線より下の黒です。バスはシルエットがはっきりした物の場合、色や不自然さよりも、形や動きに目を奪われやすくなる習性を持っており、静・動のアクションのうまい人ほど、黒のラバージグで良型のサイズを釣っているように思えます。

まとめ
☆黒は魚の目線より上でアピール → 爆発力アリ!
☆黒は魚の目線より下で保護色  → スレ知らず

 じつはあまり言いたくないのですが、これに加えてもうひとつ黒にオイシイ条件があります。それは周囲の光量の変化です。特に朝のように暗い条件から明るくなるにつれ、魚の目は「明順応」という、いわゆる明るさに目を慣らす過程が生じます。ネコの黒目が細くなったりするアレですが、魚の目はネコや人間よりもはるかに時間がかかる仕組みになっています。このとき、じつは一番よく見えているのが黒なのです。逆に暗くなるときは白がよく見えるので、このことを軽く憶えておいてほしいと思います。いつか役に立つかもしれません。



Q:赤いルアーは釣れるのですか?(京都府 ジンジャーさん)

A:釣れたことがない、とのことで信じられないそうです。こういう苦手色は皆さんお持ちと思いますが、赤についてはいろいろな信号を含んでいるので非常に釣りやすいカラーとなります。特にSIN-ZO表層直下リトリーブやアイマコモモなどの赤ルアーに、絡みつくように襲い掛かるバスを狙うシャローの釣りはスリリングで、かなりハマると思います。以下に赤についての要点をあげ、説明してみます。

☆赤は明るい条件に強い
 赤は暗くなると見えにくいので、明るい場所やシャローで使用するのがベストです。2m以浅に特に強いカラーです。

☆赤は脊椎動物の信号
 脊椎動物の血液の色は赤です。これはヘモグロビン、すなわち鉄分の色で、色そのものが「脊椎動物にとって脊椎動物をあらわす色」となるのです。つまり小魚を追っているバスなどに効きやすいカラーとなるわけです。

☆赤は興奮を誘う
 赤の場合、魚は一度反応してしまうと執拗に追い回すことが多くなります。脊椎動物である自分自身を示す色でもあるため、興奮の効果が強くあらわれます。また、ほとんどの脊椎動物は色を見分ける細胞(Corn)の中でも重要な部位で赤を見ているようです。

☆赤は距離感をつかむ
 我々が射撃の的や車のテールランプ、停止信号などに赤を使用しているように、距離感をつかみやすくさせる効果があります。この効果は相当強いようで、個人の実験でも明らかにショートバイトが減少しています。おそらくこの効果から、アメリカのオールドトップウォータープラグにレッドヘッドが定着したのではないかと思います。

☆マゼンタとレッドはビミョーに違うときがある
 マゼンタというのは正確にみると赤紫で、世の中のルアーに「レッド」と銘打たれたルアーには結構存在します。じつはSIN-ZOベイトも「ソリッドレッド」はマゼンタ、「カシスレッド」はレッドです。透過光に対して青みがかかるものがマゼンタですが、これは塗料、染料などの時点でこれをレッドとして扱われているので仕方ないことかもしれません。このマゼンタカラーは、深場で紫が強くなるため実際のレッドより釣る幅が広く、安心して使えるカラーですが、先述の劇的な効果についてはあまり強く出ないことがあります。なお、マゼンタはクリアイエローを重ねることでレッドに近づけることができます。



Q:アワビ貼りで釣果の差は出るの?(神奈川県 K.Yさん)

A:アワビの本当のチカラは『粘膜』というところにあります。つまり、長時間水を吸ってはじめて本体の光がでるので、『コーティングしてはいけない』というのが鉄則です。市販のアワビシートでもかまわないので、貼って継ぎ目だけ補修しておくのが、一番釣れる使い方です。漁師の漁具もバケツにはった水に漬けっぱなしでなければいけないらしく、出して置いておくと怒られることもあるくらい、水分が重要なようです。コーティングしたものもキレイに光るのですが、アワビ本来の効果は減少するので個人的にはおすすめできません。ただ、数投でチェンジする場合など、ローテーションに短時間に組み込む程度の使い方の場合はコーティングしたものの方が、してないものより光が強く出ている場合があるので、水につける時間によって使い分けることも可能です。

☆アワビにはすべての色の効果がある
 昔から言われるのがこの効果。個人的には重視してはいませんが、漁師はこれを重視しているようです。確かに様々な色に光りますが、オールラウンドに対応する、という部分からこの考えが生まれたのではないか、と考えることもできます。

☆光を滲ませるため、暗い条件でも一番強い
 深場や真っ暗な中で釣獲数が多いのはやはり貝貼りです。光をそのまま返すのではなく、全体に滲ませて発光するように柔らかく反射することで常に自然なアピールができていると考えられます。

☆追い食いが多いのでテールフックに注意を払う
 エサに見えるアヤシイものは後方から尻ビレを攻撃して確認する、というクセがある魚が多いので、テールフックにかかる魚が増えてきます。このときテールフックだけでもケプラーのシングルフックなどうまく利用すれば、掛かりやすくなってくるルアーも多いのでぜひ試してみて下さい。


◎余談編
 どうしても気にされている方が多いらしい、ワタシ個人の活動についての質問。心配かけてすいません。

Q:車で生活しているってホントですか?(東京都・M.Oさん)

A:家庭の事情(?)で悲しいことに、かなりの時間を車中で過ごしています。普段は釣りをしています。もちろん実家にも帰りますが、この2月は東京から帰るお金がなくなり、しばらくバスワールドの編集部よりいただいたカップ麺でしのいだりしていました。でも家を借りるより安いのでこれでいいです。4月からはカンボジアでもっと安く切り抜ける予定です。



Q:バイオテレメトリーって何ですか?(フィッシングショーで多かった質問)

A:生物遠隔測定という幅広い分野を指しますが、僕がやっていたのは魚にピンガー、データロガーという乾電池ほどの機械を魚に取り付け、心拍数、遊泳速度、加速度、水圧、水温などを測定して魚の行動性を調べる、という研究でした。もちろん研究より釣りの方が大事なのでそれなりのことしかしていません。他にも回流水槽などいろいろな研究設備があって、全部夜中は僕の遊び道具…いや、研究しやすい環境です。



Q:バスでよく使うプラグはどれですか?(フィッシングショーで多かった質問)

A:ビッグバド、ヤーガラポップ、SIN-ZOベイト以外では?とよく聞かれるので、最近の異常にお気に入りルアーをひとつ。それはアイマサスケSF。理由はなぜかバスばかり釣れるから。シーバスルアーですが、なぜかシーバスのテストでも40upのバス連発で、テストになりませんでした。それを逆手にとってバス釣りの方でパイロットルアー的に、どこでもこのミノーを持っていって投げまくってます。バス雑誌にはあまり見られないと思うのでシークレットウエポンにどうぞ。(シンキングも出ますがこちらは無事シーバスがよく釣れました。)


小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。もうすぐ春かもしれないが、まだまだ寒さの犠牲になるかも知れないので要注目。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり街路樹のように生かされている。SIN-ZOベイト、TAN-NORジグ他を開発。