2017年1月23日月曜日

質問2ラインの色、リリースの影響(2002年4月BW誌)

引き続き質問コーナーです。かなり真面目に答えてます。この原稿が掲載されたかどうか、ちょっと覚えていないのですが、これと次の原稿(内容一部重複)の間が海外で二ヶ月お休みしてました。ひょっとしたら旅に出るネタの話にすげ替えたのかもしれません。※この時の旅の内容はロッド&リール誌に掲載されてました。
当時はこの時期まで海外に行く釣り人も、ホームページもなくて、情報はありませんでした。なので、全く結果が気にもならないで旅を楽しめる、いい時代でしたね。そしてそもそも調べようともしなかったのですが、そのあてのない旅一つひとつがTULALAの原点になってます。地図もコンパスもない『釣り旅』の源流です。当時の海外記事を読んでいた方が、今でもその頃の私の記事に影響を受けてくださってたりして、非常に嬉しい限りです。


(以下↓原文、一部アドレス伏字等補正)

Academic LAKE Vol.7

質問コーナー(第二回)

 個人的な事情で、前回からはじめてみた質問コーナー。さっそくイイ感じの質問が舞い込んできたのでご紹介したい。今回はライン、そしてリトリーブと活性についての質問だ。

※小川健太郎に解いてもらいたい謎、疑問などを送って下さい。採用分に個人的にオリジナルルアーのプレゼントを差し上げたいと思います。住所氏名年令、ペンネームバス歴などを明記の上、バスワールド編集部「アカデミックレイク」係、もしくはメールhowl@fish.co.jpマデ(メールのレス強要はご容赦下さい)。



Q:ラインの色は魚には見えているの?(東京都 見えネコさん 他)

A:以前お伝えしたことがあるかもしれませんが、魚をはじめ、動物には盲点があります。これは、もちろん人間にもいえることなのですが、透明なものは動いている間は見えにくくなり、不透明なものは(どらえもんでいう「石コロ帽」の原理で)動いていない時に見えにくいのです。逆に動いていない透明なもの、そして動いている不透明なものは視界に飛び込んでくるように、魚の眼ができているのです。具体的に考えてみましょう。
 ガラスのようなものを通すと向こうの世界が屈折して、多かれ少なかれ歪む。ガラス体が曲面で形成されているならなおさらだ。これは眼鏡のレンズやコップなどを想像してもらうとわかると思います。これらを例えば頭上でパパッと動かすと、ガラスと自分の距離はつかみにくくなります。逆に黒いものや不透明なものを同じスピードで動かすとハッキリ眼で追えます。しかしこれら不透明なものは位置を固定してしまうと、「見えていても見えていない」状況になります。これが盲点です。
 他の例でいえば、例えば道で寝ていたり、ジーッとしている人間は、動き出すまでその存在に気付かないこともありますよね。しかしながらジーッとしていても、眼の玉のような光るもの、屈折のあるものにはこちらも気付きやすく、眼が大きく開いている人間や透明なものを持った人間にはすぐに気がつきます。
 光の屈折、反射は水の中では特に目立つもので、こちらが少しでも動けば向こうの光も動きます。逆にマットなものは動くまで全く気付かれません。日本の釣りではイカ釣りのエギの布巻きという部分にこの原理が応用されていました(今は忘れられてますが)。エギは静と動の緩急で食わせるルアーなのですが、この布がマットであることを利用して、動の部分で見せて寄せ、急激な静の部分でイカの盲点に消えてしまいます。イカはこのあとのスローなカーブフォールなどわずかなきっかけを意地で見つけだし、ハリがあるとも知らず抱きにかかるのですが、こういった戦略が可能になるほど盲点がはっきりした生き物なのです。
 魚の場合もうすこし眼が発達していて、動かないマットなものも見えることは見えます(人間に近いです)し、探しているものと同じ形状のものを選択できる能力も持っています。しかし極端にいえばイカのように見える見えないがはっきりしてしまうときもあります。それが「ものが小さい、または細いとき」なのです。
 糸の話だけに前フリが長〜く(笑)なりましたが、ラインは不透明なPEと透明なナイロンが代表的です。これらのラインが魚に見える瞬間、見えない瞬間はつまり、「運動しているかしていないか」にかかっているのです。不透明なラインは横方向など、下手に動かすと見え、純粋な縦方向の運動や、まったく動かさないときは視界から消えます。透明なラインは動かさない間は見えてしまい、動くとほとんど見えなくなります。
 市販ラインについた色を気にするのもいいですが、この盲点という切り口もラインを選ぶ上で参考にしていただいたらよいのではないかと思います。




Q:以前ホームページで小川さんが、「フックが魚に飲まれ、手こずるくらいなら、糸だけきれいに切って、フックのついたままリリースしたほうがまだマシ」と書いていましたが、生存率は本当に高いのでしょうか。(三重県 鵜野さん他)

A:今、手元に資料がないうえにウロ覚えなのでデータが出せません(スミマセン)が、いくつかの機関で行われた実験で、フック(当然シングル)を飲んだ場合は、『素手で触りまくるくらいなら』ラインを切ってそのままリリースするほうが生存率が異常に高い、という話ですね。これらの実験で重要な部分は『魚体に素手で触る』ということの魚体への影響のわるさで、「フック外し」という行為に固執して、エラを触ったりするだけで致死率がグングン上がってしまうという部分です。研究機関によってフックのサイズや実験に使用した魚種、サイズも違うため結果もバラつきがありますが、どの実験でも致死率の順位は同じような結果でした。魚体に触れていない魚の中には、自力でフックを外す個体も信じられないくらいの数いたのを記憶しています。
 リリース目的なら、釣りは遊びになってしまうので、フックは可能な限り除去するのが当然です。しかし、喉の奥など、取りにくくなってしまった場合は、実験結果を見ていくと、ラインを切ったほうがよいようですよ。私は飲まれるようなルアーをあまり使わないので最近活躍してないですが、ロングノーズペンチなど、ロングタイプのものを持って行くと魚体に触れずにリリースできます。
 毎日思う存分釣りする人であれば、欲もなくなるので、究極は『いつもサイズの魚は全部足下でバレてくれると最高!』になります。(食べない魚は)手に持つほどに、毎日の、そして未来の釣果が減少していくのですね。←触るなというわけではありません(笑)。
 触ったり、いい写真を撮ることで、確かに生命は脅かしますが、きっとその生命は何か環境を守る術を我々に伝えてくれると思います。どの道も、選ぶのは今は人間一人ひとり、なのです。



Q:よく、遅く巻けといわれるわりに、テレビやビデオのプロは結構速く巻いて釣ってたりするのですが、釣れるリトリーブスピードってありますか?活性の問題だけですか?(大阪府・Sさん)

A:質問いただいたのは4月からの海外生活に同行するたった一人の人間なので、帰国の頃には来月号。終盤で一人危険地帯に行くらしいので、この号を見ることがないまま一生を終えるかもしれませんが、質問内容が面白いので掲載してみました。
 答えからいうと、プロがそのスピードで巻くのは「活性よりもルアーのオイシイスピード」がまずあるのだと思います。プロでも誰でも、基本軸は速い釣り、遅い釣りというテンポの問題を考えますが、ルアーひとつひとつの動きが違うのに、すべて一様に巻いてよいわけではない、ということです。
 例えば同じレンジ(水深の層)を潜る3m仕様のクランクベイトが2種類あったとします。この日水深2mのラインが大当たりのレンジで、どちらのクランクでも釣果があったとしましょう。しかし、この2種類のルアーは2mというレンジに到達する速さのスピードも違えばレンジ内をキープできるスピードも変わってきます。この違う種類のルアーを使うだけでも、レンジ内をキープできるリーリングスピードは見た目からも違ってきますよね。
 これは微妙な問題にしか見えないかも知れませんが、ルアーのアクションにとっては大きな問題です。以前も本連載『リトリーブの法則』でお伝えしたとおり、ルアーの魅力がMAXになるのは「レギュラーからイレギュラーに変わった瞬間」で、最もバイトが多いのです。ただただルアーがよく泳ぐスピードだけを繰り替えしていたのでは小さい魚しか釣れなくなってしまいます。よく泳ぐスピードで釣るなら潮目や障害物へのコンタクト、トウィッチ、ポーズなど、変化を付けてやることや、それ以外のスピードとしては「泳ぎが崩れるギリギリ遅い、または速いスピード」をダラダラと繰り返してやることが大型魚への近道だと思います。
 先月釣れるとお伝えした、アイマというルアーが他の同タイプのミノーより釣れるのも、最大の理由はよく泳ぐ位置よりラインアイが下方向に付いていることで、タダ巻き中でもバランスを崩しやすくなっているからに他なりません。このため、このルアーは速く巻くのには適していませんが、スロー気味に流れの中を通すと、わずかな水流の違いを捉えて動きが変わり、食うきっかけが自動的に生まれるというわけです。同じようなルアーにチェックベイト7S(99年末以降のロット)、ターゲットミノー68F(ただし、超ウルトラデッドスローもしくはファスト&トウィッチのどちらかしかできない)なども挙げられます。これらはバス、トラウト、シーバスにかかわらず、リトリーブスピードを知っている人間には絶大な人気があります。
 このようにルアーひとつひとつでオイシイスピードが変わってきますからスピードにあったルアー、ルアーにあったスピードを把握しておくのが最善の方法だと思います。テレビのプロの方は、皆さんこういう部分に長けていますので映像のスピードもルアーと合わせて参考にするとよいかもしれません。(ただし、シーバスの有名人はギア比を改造して、微妙な部分を誰にも真似させないようにしている人がいるのでルアー以外は参考にしないほうがいいでしょう。リトリーブスピードに異常にシビアな世界なのでここだけは知られたくない人が多いようです。)



ひきつづき読者の皆様の質問お待ちしております!!
住所、氏名、年令、電話番号、ペンネームを明記の上バスワールド編集部アカデミックレイク係または●●@●●●までお願いします。採用者には小川氏オリジナルルアーや、場合によっては質問解答の内容に準じた商品セットなどをお送りします。


小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。お金がないのでこの号が出る頃には海外で「地雷か雷魚」というダブルカミナリと普通に闘う毎日。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり生かされている。SIN-ZOベイト、TAN-NORジグ他を開発。