2017年1月25日水曜日

質問3バド、アプローチ等(2002年4月BW誌)

9月号ですが、原稿は4月作成になってました。色々修正されたりしたような記憶がうっすらありますが、元の原稿はこんな感じだったようです。


Academic LAKE Vol.8




質問コーナー(第三回)
 今回の質問はなぜかイキナリ個人的な質問…。なんとスカジットデザインズの皆川さんからも戴きました。

Q:どうしてあのヘンな帽子をかぶっているの?(東京都・皆川哲さん)

A:アレがないと人としゃべれないからです(笑)。じつはあの帽子以外にも十数着といろいろなタイプを持っています。しかしながら、自分に似合うように頼んだ特注品ということでこのプロフィール写真の白いやつが一番好きなのです。ちなみにイタリアからの輸入モノでじつは2代目。僕しか持っていないはずです。現在は毛皮の輸入規制により、入手不能になりました。これがあれば寒い日の釣りも平気です。っていうか、釣りに全然関係ない内容ですね。スミマセン。



Q:小川的解釈では、なぜビッグバドで釣れるのか。(奈良県・秘密ばかりのアッコちゃんさん)

A:ペンネームに異次元の香りがします(笑)。バドについては、以前トップ堂誌面でも述べたのですが、やはりボディ、リップ、そしてフラップと呼ばれるブレードの関係が絶妙だからではないでしょうか。僕個人のバドについての感想を簡単にまとめると、以下のようになります。

●ボディ:浮力と抵抗の大きい形状で水を掻く。太鼓の胴のようにサウンドを響かせる。
●リップ:移動距離あたりの首を振る回数が多い。
●サウンド:『キンよりカン、カンよりコンという低音』と『規則的な中に混じる、突然の不規則な音』という条件で、大型(55アップ)の選択的釣獲が可能になる。

 次に、僕らの仲間内でのサイズ選択で使われる音の例を紹介します。これは「このサイズにはこの音がよく釣れる」といった主観的な目安で選ばれており、絶対ではありません。サンプルも千尾を超えているわけではないので、参考程度に流し読みして下さい。
●関東差し(よくあるヒートンを中心より上に打つチューン):35cm〜50cmクラスの数釣り
●ボーンバド(改造なし):40cm〜55cmクラスの数釣り
●関西差し(ヒートンを中心より下に打つ):55cm〜65cmクラスの一発狙い
●旧型バド(ヒートン2回転半緩め):45cm〜60cmクラス
キモはブレードの水没部分になりますが、そのへんは確証が得られればまたご報告します。この内容は国内で釣れるサイズの平均的な傾向を述べています。写真にある、旧型バドでの62cmのように、実際の釣果がこの範囲内のサイズを超えることはよくありますが、それらのデータは再現性に乏しいため、ここでは省略しました。
 おそらく雑誌などで近年流行ったように関東差しがトーナメントに向いているのは数が釣りやすくなるからだと考えられます。しかしながら、55cm以上の大型個体を狙いたい人間にとっては時間をとられたり、場が荒れたりとロクなことがありません。このため、こういう人たちは関西差しや旧型バドを使用する傾向が強くなっています。というより仲間内を見ていると、隣でデカイのばかり釣られてしまうので自然とこれらのバドへ移行するようです。何度も述べますがこれらの内容、データは揃っていますが、確証はないので、皆さんの腕でぜひ試してみて体験して下さい!!



Q:釣り場で、魚に気付かれないようなアプローチはありますか?(山梨県:ゴーリキーさん)
A:魚に気付かれる瞬間、というのは結構こちらもわかっちゃうもんで、なんだか悲しくなりますよね。基本的に魚に気付かれないようにするには、釣り場に立たなければいい(笑)のです。つまり究極自分の存在を釣り場から消すということです。そこにいることに気付かれなければ魚は警戒心を緩めます。次のようなことを心がけるとよいかもしれません。

◇姿を消すための3箇条
1.自分の姿を点、または鉛直方向の線にする。
2.つま先歩きで足音を消す
3.横に動かない

 1はアプローチの上での基本です。魚から見える角度での面積を広げると、どんどん不利になります。魚は動かないものは視界には飛び込んでこないようにできていますが、動くものは必ず見えてしまいます。岩や木になったつもりで縦の線になったり、ほふく前進で顔だけ出して釣りするほうが魚は警戒しません。ただし、住宅地などでのこのような行動は、人間に警戒されてしまう可能性があるので、釣果と社会的立場を天秤にかけた上で実践して下さい。
 2は振動です。足音や石の動く音は話し声と違って水中へ伝わってしまいます。ハッキリ言って、かかとで歩く現代人は狩猟全般に向いていないと思います(笑)。水際の魚が突然こちらに対して横(側面)を向けるようになったらもう警戒されています。この行動は側線に対して垂直に入ってくる振動を100%感知しようとしている音源定位的な行動です。
 3はスミス社の平本さんという方から教えていただいたのですが、魚は陸上の生物の縦方向の動きより水平方向の動きに鋭敏に反応するようです。水際を歩いたりする時や、竿を横に構えたりする時は気にしたほうがよいかも知れません。
 これらのことを踏まえると、「水際から離れて動き、ピンスポットで水際へゆっくり近づくのが理想的なアプローチ」ということになるのではないでしょうか。


Q:魚にやさしいリリースってできますか?(大阪市:北部さん)

A:う、難しい話ですね。基本的にフックに因る傷は、目などにかからない限り気にしなくてイイと思います。そんなことよりも重要なのは『魚に触らないこと』。魚の身体、とくにエラまわりなどに触るのは避けたほうがいいですよ。魚は温度変化や粘膜を傷つけられることに非常に弱いので、例えば乾いた手で触ることや、乾いたコンクリートに置いたりすることによってヤケドのような症状をおこします。エラのように生命維持に関わる器官はとくに弱く、すこし触れただけでも生命の危機に関わることになりかねません。これはフックを飲まれた時も同じことで、むりやりベタベタ触って外すよりもワームを外してラインの結び目で切って放流(もしくはプラグならフックを折ったり外して放流)したほうが、なんと生存率がゼンゼン高いのです。自力でフックが取れる個体もいますし、フックがぶら下がったままなほうが天寿をまっとうできる可能性が高いなんて、考えてもおかしい話ですよね。しかし、これが水の中の生物と陸上生物の違いなのかもしれません。
 以上のことをふまえて考えると、やさしいリリースについては極論「魚に触れないように、ルアーの結び目付近を持ってペンチでフックをつかんで水の中に静かに振り落とす」ということになります。これが魚に一番ダメージがなく、現実的ではないでしょうか。バスはまだ触っても丈夫なほうですが、渓流魚のように冷水の魚に関してはもはや「手で触った時点でアウト」の可能性が本当に高くなります。写真撮影など、こういった魚を手に持ちたい場合はしっかり水で濡らして冷えきった状態で、水中で持った形で撮るのが理想的です。
 また、話が大きく逸れますが、フックの傷を負った魚がかわいそうなので釣りをやめよう、という方もいらっしゃいます。しかし、子供たちが生物の本物の命で遊び、傷つけ、時には殺すことではじめて命が理解できるのではないでしょうか。だから、僕は魚を触ってしまって、結果弱らせてしまっても、人間としてなにかを得ることができるのではないかと思うのです。自然というものが失われるなか、例え管理釣り場であっても、命をリアルなものとして感じとらなければ、他人を守ろう、自然を守ろうという気になるわけもありません。事実僕はブラウン管の向こうの自然を守る気にはなりません。カメラはゴミを除けた姿しか写さないのです。こんな現状現場を把握もできずに、何を守ろう、倫理とはなにか、といったすべての事象が「大人の人間」として理解できるとは思えません(僕はまだ子供ですが…笑)。サーファーは波を守るために地形を守り、林業は水を守り、本当の漁師は魚を守ることを考えます。釣りという遊びを通してこういった環境を知ることができる我々釣り人は、テレビ画面でしか魚を見たことがない人よりも魚のことを知って、守る手段を身につけることができる、幸せな存在だと思います。バスは害魚だという論争も、魚のことを知ることができた人間がはじめてわかる話で、その先の判断はそれぞれ考えることです。われわれバスアングラーは、魚を触ったこともない人間に、バスが害魚だと決めつけられる今の社会に疑問を持つべきではないでしょうか。話が脱線してスイマセン…。バス問題については僕の企画した、『バス問題を考える(萱間修 著)株式会社フィッシュマン刊』を是非ご一読下さい。以上、暴走・終わり(笑)。



まだまだものたりないぜ!(笑 嘘です)
ひきつづき読者の皆様の質問お待ちしております!!
住所、氏名、年令、電話番号、ペンネームを明記の上バスワールド編集部アカデミックレイク係または●●@●●●.jpまでお願いします。採用者には小川氏オリジナルルアーや、場合によっては質問解答の内容に準じた商品セットなどをお送りします。


小川健太郎/25才。住所不定・自由職(無職)の車上生活者。この号が出る頃にはラオスにいるかもしれない。水産学科で魚類のバイオテレメトリー(遠隔測定)を専攻したが社会の役には立っていない。365日連続釣行2クールを含む、総計3200日の釣行を就職までの11年でこなした「釣り場型ひきこもり」。シーバス色理論、池原ダムでのヤーガラ、ビッグバドなど、ごく一部のマニアの間だけで知られながら、各社のお情けでひっそり生かされている。SIN-ZOベイトなどを開発。